ソーシャル時代を生きる

第4回 国内の最先端企業に学ぶ、生活者が参加するコラボレイティブ・バリューチェーン

2013年4月8日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年6月20日号

ループス・コミュニケーションズ 代表取締役 斉藤 徹氏が、ソーシャルメディアによって変わる社会と、企業活動について解説します。(全6回)

 ソーシャルメディアをプラットフォームとする新しいマーケティングでは、企業のバリューチェーンに生活者が積極的に関与するようになってきた。生活者が商品開発のアイディアを提供する、良い商品だと友人に推薦してくれる、商品に習熟した生活者が使い方がわからない初心者を支援する。ブランドを愛するがために自らの意思で協力してくれるケースが増えてきた。元来「バリューチェーン」は、マイケル・E・ポーターが著書『競争の戦略』の中で提唱した、企業の内部環境を分析するフレームワークで、「価値連鎖」と邦訳されるものだ。ポーターがこれを執筆した1980年当時は、バリューチェーンは企業内および企業パートナーが各活動を行う想定だった。しかしながら現在では、企業のバリューチェーンに生活者が積極的に関与するようになってきたのである。
 ソーシャルメディア時代の企業生産活動を大別すると、「ブランディング」「商品開発」「商品販売」「顧客サポート」の4つに分けられる。ブランドの支持者を増やす「ブランディング」の事例としては、Facebookページで「ハム係長」というキャラクターが話題になっている伊藤ハムが有名だろう。伊藤ハムは80年以上の歴史ある老舗メーカー。堅い印象がある企業ほど、人間性を出すとそのギャップから好感度を得るケースが多い。しかし、ただのゆるキャラなだけではない。ほぼすべての書き込みに対して、極めてクイックでフレンドリーなレスポンスをするなど、とても丁寧で心配りされた対話姿勢が好感度を上げるポイントになっている。また専門的な質問にはきちんとプロとして返答するなど、ゆるキャラを超えたしっかりとした応対が印象的だ。伊藤ハムでは利用者との交流を通じて、単なる情報配信にとどまらず、それに基づく企業と生活者、そして生活者間の交流を促進するためにFacebookを活用している。
 他にも、「ヒントマーケティング」で徹底した顧客サービスを提供する東急ハンズや、新卒社員がソーシャルメディア推進をリードするオウケイウェイヴ、ソーシャルメディアでサイト流入と店舗集客を実現しているローソン、あらゆる顧客接点でブランド体験を提供する無印良品など、企業姿勢やブランドに共感した生活者が多数いる事例も多い。各プロセスにおいて、彼らの生の声を傾聴し、対話交流を通じて、彼らの支援を最大限に活かす仕組みを構築することによって、生活者が積極的に関与してくれる確固たるブランドを築いているのである。


著者略歴
斉藤 徹(さいとう とおる) 株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役

掲載:東商新聞 2012年6月20日号

以上