ソーシャル時代を生きる

第3回 米国先進企業に学ぶ、透明性の時代におけるオープン・コミュニケーション

2013年4月8日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年6月10日号

ループス・コミュニケーションズ 代表取締役 斉藤 徹氏が、ソーシャルメディアによって変わる社会と、企業活動について解説します。(全6回)

 透明性の時代、企業はどのように生活者とコミュニケーションしていけば良いのだろうか?まずドミノピザのトラブル対応の事例から、そのポイントを考察する。
 事の発端は2009年4月、オーストラリアのドミノピザ店舗内で業務中に悪ふざけしていた男性社員が、チーズやサラミなどのピザの材料を不衛生に扱い、それを動画として撮影し、動画サイト「ユーチューブ」に投稿した。この動画はソーシャルメディアを通して一気に広まり、ニュース・メディアにも飛び火し、結果としてキーワード“Dominos”でグーグル検索結果の1ページ目に登場することになる。多くの人々がこのイタズラを直接体験することになった。何の前触れもなく突如、深刻なブランド崩壊の危機が訪れたのだ。
 この危機を乗り越えるため、ドミノピザはトップ自らが動画でメッセージを伝えるとともに、ツイッターアカウントを事件直後に開設、利用者と対話を始めた。また事件から8ヶ月後には、創業から50年守り続けてきたレシピをソースや生地から作り変えるという大胆なキャンペーンを打ち出した。いかにドミノピザが顧客からの批判的な意見も傾聴し、新しく生まれ変わったピザを作り出したかを伝えることに専念したのである。結果として「顧客に正直なキャンペーン」として全米中を駆け巡り、誠実でフレンドリーなブランドとして、そのイメージを改善することに成功した。
 また、靴のオンライン通販企業ザッポスは、ソーシャルメディアの時代を象徴する企業の代表格である。様々なソーシャルメディアを通じて、コンテンツを惜しげもなく配信しているにもかかわらず、ザッポスのサイトにはソーシャルメディアポリシーが存在しない。顧客とのオープンなコミュニケーションを前提として、新入社員に徹底した文化浸透を行い、先輩社員の行動自体をガイドラインとして体得させていくのだ。しかも、ザッポスはただ単にオープンなだけではない。「人を信じる」「人に任せる」ことが徹底されている。同社のCEOは社員と同じデスクに座り、いつでも友人のように話せるが、パフォーマンスは各部門のマネージャー、カルチャーの浸透は人事部門の責任事項としている。ザッポスの給与水準は決して高くないが、フォーチュン誌の「最も働きたい会社ベスト100」で上位にランクインするほどになった。
 ソーシャルメディアの普及によって、リーダーも顧客や社員と日常的につながり、親密な関係を築けるようになった。求められるのは、従来のような統制の関係性ではなく、信頼を基礎とした人間的な関係性なのである。


著者略歴
斉藤 徹(さいとう とおる) 株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役

掲載:東商新聞 2012年6月10日号

以上