ソーシャル時代を生きる

第2回 企業の哲学が問われる時代、透明性の時代の新しいリーダーシップ・スタイル

2013年3月29日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年5月20日号

ループス・コミュニケーションズ 代表取締役 斉藤 徹氏が、ソーシャルメディアによって変わる社会と、企業活動について解説します。(全6回)

 ソーシャルメディアの普及によって、新しい時代が到来した。企業にとって都合の良い情報を発信し、権限管理と情報統制によって顧客や社員をコントロールする…長く続いた統制志向のスタイルは、顧客や社員が力を持たないことを前提とした時代のものであり、もはや通用しなくなりつつある。だからこそ重要なことは、商いの原点に帰ること。社員・顧客・株主・地域の方々・生活者、そして世界にいかに貢献すべきか。自社の存在意義を見つめ直すことから始めるべきだろう。
 ブランドの哲学を構造化すると、「ミッション」「ビジョン」そして「コアバリュー」で構成される。「ミッション」とはそのブランドが何のために存在するのか、「そのブランドの存在意義」であり、企業の持続可能性を決定づけるものだ。それに対して「ビジョン」とは未来を創り出すもので、「企業にとって望ましい未来像」を描き出したものである。そしてもう一つ、「コアバリュー」とは企業にとっての核心的な価値、「その企業は何を大切にしているか」を表すもので、社員にとっては行動規範に通ずるものだ。これらを順守することは、事業計画や予算よりも優先度が高く位置づけられなくてはならない。不祥事企業も「敬意」と「誠実」をコアバリューに掲げているが、お題目に過ぎないコアバリューでは意味が無い。
 また、企業哲学は社員の幸せに色濃く結びつく。マッキンゼーの調査(1997年)によると、企業エグゼクティブの58%が社員の最大の動機づけ要因を「ブランドの価値と文化」とみなし、「昇進や成長」「報酬の差別化」を大きく上回った。世界が金融危機を経験した今、この意識がさらに強まっていることは間違いない。企業理念、ブランドの約束、コアバリューを真摯に共有することこそが、優秀な社員に恵まれ、生活者の共感を得るための強力無比な差別化要因となってきたのだ。
 これまでは、大きな組織の変革において、経営トップの卓越したリーダーシップが不可欠だったが、昔と比べて社員がパワーを得た今、ボトムアップでも大企業を変革できる時代が来たと言えるだろう。もちろんそのためには、組織内の目に見えない情報の壁を崩すことが求められる。ソーシャルメディア時代では、大きな力を与えられ臨機応変に行動できる社員(HERO=High Empowered and Resourceful Operative)が主役。バックアップするのは、彼らと信頼で結ばれたオープンリーダーだ。


著者略歴
斉藤 徹(さいとう とおる) 株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役

掲載:東商新聞 2012年5月20日号

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