ソーシャル時代を生きる

第1回 透明性の時代。企業と生活者、新しいコミュニケーションのカタチ

平成25年3月29日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年5月10日号

ループス・コミュニケーションズ 代表取締役 斉藤 徹氏が、ソーシャルメディアによって変わる社会と、企業活動について解説します。(全6回)

 生活者は変わった―。
 今、人々が望んでいるのは、騒がしい説得広告ではなく、控えめで共感を呼ぶメッセージ。代わり映えのしない商品ではなく、細部まで心配りされた逸品。画一的なサービスではなく、心のこもったおもてなし。独りよがりの広報ではなく、誠実で真摯な対話姿勢だ。顧客の体験が、共感と感動の連鎖を呼び、フェイスブック等のソーシャルメディア上を、ポジティブな評判が波紋のように広がっていく。顧客接点の最前線で顧客に貢献しようと必死に努力を続けている現場社員らをバックアップする管理職、そして力強くリーダーシップの変革をはかる経営者。この三位一体の仕組みができない企業は、今の時代に生き残るのは困難だろう。
 今の時代に、これまでのような情報統制の技術を持ち込むと、とどまることのない炎上を引き起こすことになる。これは企業がソーシャルメディアを活用しているか否かには関係ない。むしろソーシャルメディアに窓口を持ち、誠実な対応をすることで、被害を最小限に食い止めることも可能なことを認識すべきだろう。
 今、世界はソーシャルメディアによってつながっている。そして、人々は絶え間なく情報を交換し、企業やブランドの言動を審判している。細かなウソも通用しない、まさに「透明性の時代」が到来したのだ。会社を導く立場にある経営者は、そのことを強く意識しなくてはいけない。今までの統制的な手法で顧客や社員をコントロールすることは不可能であり、逆に格好の炎上材料と化してしまう。透明性の時代にいかに企業を正しい方向に変えてゆくべきか。経営者はそれを第一に考えなくてはいけない。
 透明性の時代において、企業が対峙している最も重要な審判者は、行政機関や報道機関ではなく、はるかに強力なパワーを持つ「力を持った生活者の共同体」である。彼らが常に求めるのは、素晴らしい商品やサービスであり、真摯で誠実な態度であり、迅速な応対であり、生活者と同じ目線で言動すること。こういった生活者の対話は、企業にとって「傾聴」すべき対象となった。監視的、分析的に取り組むのではなく、一件一件に目を通し、そこに含まれるエッセンスを経営に生かす。そんな時代が訪れた。それは顧客や社員などあらゆる生活者との接点で起きはじめた突然で不連続的なパラダイムシフトなのだ。


著者略歴
斉藤 徹(さいとう とおる) 株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役

掲載:東商新聞 2012年5月10日号

以上