変わるメンタルヘルス対策

第3回 急がれる体制づくり

2013年3月18日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年9月10日号

臨床心理士の松本桂樹氏が、中小企業におけるメンタルヘルス対策についてを解説します。(全3回)

 中小・零細企業では、産業保健スタッフの常駐など充実した体制を持つ会社はまれで、人員的・金銭的にも十分な対策を取ることは現実的に困難です。法的に義務づけられて選任されている産業医も、「非常勤で月に1回社内で健康相談を行っている程度」であることも多く、タイムリーなニーズへ対応できないなど、十分に機能していない場合も多いのではないでしょうか。
 厚生労働省は中小規模事業場におけるメンタルヘルス対策の促進に、事業場外の専門機関を積極活用するよう、メンタルヘルス指針などを通じて「事業場外資源」活用の有用性を謳っており、特に「産業保健推進センター」や「メンタルヘルス対策支援センター」のような無料で利用できる公的機関に、その役割が期待されています。
 また昨今は、民間のEAP(従業員支援プログラム)機関を「事業場外資源」として活用する傾向も高まっています。EAP機関は企業等と有料で法人契約を行い、従業員・管理職だけでなく、その家族の相談も受け付けるほか、研修やストレス診断、復職支援などを行なう専門機関です。各企業のニーズや予算に応じ、ある程度サービス内容のアレンジが可能であることが公的機関との違いと言えるでしょう。EAP機関との契約は、社内で常勤の専門スタッフを雇うよりも安価で、利用者が問題に応じて複数人のカウンセラーから選べることや、家族も含めて利用できることもメリットと言えます。各地域の相談機関・医療機関との連携により、広域をカバーすることも可能です。
 しかし、こうした事業場外資源の活用では、「丸投げ」をせず、事業者が主体性を失わないよう留意することが大切です。
 メンタルヘルスケアに関する専門的な知識、情報などが必要な場合は、事業場内の産業保健スタッフや人事担当者が窓口となり、信頼できる事業場外資源から必要な情報提供や助言を受けるなど、円滑な連携を図るよう努めることが必要です。ただ、中小企業の場合、人事担当者は特に「何でも屋さん」になりがちで、メンタルヘルス・マネジメントの知識やスキルを学ぼうとしても、十分な時間を取ることができなかったり、効果的に学べる手段が見つけられないケースも多くあります。そういう中、厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」でも紹介されている「メンタルヘルス・マネジメント検定試験」の活用は、理想的な学習手段としてお勧めできます。


著者略歴
松本桂樹(まつもと けいき)[臨床心理士] 株式会社ジャパンEAPシステムズ 副社長
東京学芸大学大学院修了後、精神科医療機関である高田馬場クリニックに入職。しばらくして法人契約により社員と家族に対してサービス提供を行なう部門(EAP)を立ち上げ、クリニックと兼務。兼務のまま精神科に6年勤務の後、株式会社ジャパンEAPシステムズへ転籍。

掲載:東商新聞 2012年9月10日号

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