会社法改正のポイント

第2回 ガバナンスの向上と親子会社に関するルールの整備

2012年12月17日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年10月10日号

「会社法改正のポイント」と題し、中央大学法科大学院 教授 大杉謙一氏がポイントを絞って分かりやすく解説します。(全3回)

 今般の会社法見直しの大きなテーマは社外取締役の義務付けや監査・監督委員会などのコーポレートガバナンスと、多重代表訴訟や親会社の責任などの親子会社の問題であった。これらのテーマについて順番に解説する。
 ガバナンス関連の改正事項は、主として上場会社が対象であり、中小企業にはほとんど影響はない。監査・監督委員会とは、現在の監査役制度に代えて、新しいガバナンスの仕組みを企業が任意に採用できるようにするものである。
 また、公開会社(定款に株式の譲渡制限を置いていない企業)が第三者割当増資を行う際、従来は発行価格が著しく低い場合(有利発行)にだけ株主総会決議が必要であったが、見直しにより規制が強化される。具体的には、第三者割当を引き受ける者の議決権が50%超える場合で、10%以上の株主から会社に反対の通知があれば、総会決議が必要となる。
 中堅企業等で監査役会を設置している企業にとって注意が必要な事項もある。今回の見直しでは、社外取締役と合わせて社外監査役の要件も厳格化されたため、親会社等の関係者や、自社の取締役等の親族は社外監査役に就任できなくなる(社外でない通常の監査役には就任可能)。なお、おそらく法律の施行後に一定期間の経過措置が設けられるものと予想されるが、現時点では明確になっていない。
 親子会社に関する改正事項では、親会社が重要な子会社の株式を譲渡する場合には、一定の条件が満たされれば、親会社の株主総会の承認を受けることが義務付けられた。ここではルールの詳細には触れないが、子会社を他に売却するような場合には専門家に相談されることをお勧めしたい。
 また、親会社が子会社との取引で不当な利益を得た場合には、親会社が子会社に対して損害賠償責任を負うという「親会社責任」のルールが議論されてきたが、この提案は中小企業の経営にも影響が及ぶなど経済界の反対が強く、要綱には織り込まれなかった。もっとも、現在も親会社が子会社に不当な圧力をかけて子会社に不利な契約を強制した場合には、民法の一般原則により損害賠償責任を負う可能性が高い。なお、取引の対価が世間の相場からかけ離れている場合には、移転価格について税が課されるケースもあるので、企業としては価格の透明性には注意が必要である。


著者略歴
大杉謙一(おおすぎ けんいち) 中央大学法科大学院 教授
 東京大学法学部卒業、東京都立大学法学部助教授を経て現職に至る。コーポレート・ガバナンスやベンチャー企業法、事業再生等が主な研究・活動分野である。経済産業省 企業統治研究会、内閣府経済社会総合研究所M&A研究会等の委員も務める。著書には「M&A攻防の最前線―敵対的買収防衛指針(金融財政事情研究会 2005)」、「ケースブック 会社法(共著 弘文堂 2006)」がある。

掲載:東商新聞 2012年10月10日号

以上