シェアリング・エコノミー

第5回 信用が新たな経済となる

2017年8月29日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2017年5月10日号

 シェアリング・エコノミーとは、個人が所有する資産のうち、使っていない部分や時間を、インターネットを介して貸し借りするサービスです。スマートフォンの普及により、シリコンバレーを起点に世界中に爆発的に広がりました。その仕組みや、社会に与える影響、可能性について解説します。

 シェアリング・エコノミーは、基本的に全く知らない者同士でモノを貸し借りしたり、提供したりするCtoCサービスです。よって、いかに信用が可視化されるかが重要となります。そこで今回は、シェアリング・エコノミーを語る上で欠かせない“信用”と、“評価システム”について話していきます。


ソーシャルメディアから始まった仕組み


 例えば、サービス開始当初から「Airbnb(空き部屋を宿泊施設として貸し借りできるサービス)」は、Facebookと連携していました。Facebookは実名での利用を推奨しているので、お互いに実名制を担保することが、利用時の安心につながったのです。つまり、ソーシャルメディアの仕組みをベースとして、その上でシェアリング・エコノミーが広がったとも言えるわけです。
 現在、これらの信用性はAirbnbのアプリ内にあるレビューを中心に担保されています。貸す側だけでなく借りる側も評価されるので、レビューの評価が悪い人には、部屋を貸さないこともできます。逆に好評価がたまると信用性も高まるので、好評価の人のみにしか貸し出されない良質な部屋に泊まれたり、「あなたは信頼できそうだから、部屋の鍵はそこにおいてくれればいいよ」などと、よりスムーズなやりとりができるようになります。つまり、信用がコストを下げ、より自由を生むようになるのです。
 仮にクレーマーによって低評価がなされた場合でも、きちんと対応したり、改善したりするところを見せれば、かえって高評価につながっていきます。
 また、特別な教育機関や上司の指導がなくても、レビューによって常に評価システムにさらされることで、自然とサービスが向上されていくのも利点です。


評価システムが生む副次効果


 さらにAirbnbで非常に高い評価が集まっている部屋の貸し主は、“ホスピタリティに溢れ部屋のメンテナンスもしっかり行う人”という評価につながります。よって、部屋やマンションを購入するとき、販売業者がAirbnbのレビューを評価基準にして、安くしてくれたり、積極的に売ってくれたりするケースが欧米圏で生まれています。
 一般ドライバーが自家用車で送迎できる「Uber」でも、似たようなケースがあります。Uberドライバーの多くは移民で、彼らの多くはローンを組むことができません。しかし、6年前にUberのサービスが開始された当初からのドライバーで、毎日20人も30人もお客さんを送迎し、丁寧な運転と接客で星5つの評価をコツコツと獲得した人が、Uberでの評価を担保にして、車のローンを組めるようになった例もあります。彼は中古車のカローラでドライバーを始めて、ローンを組んでレクサスに乗り換えました。Uberは高級車だと利用単価が1.5倍になるので、さらに稼げるようにもなったのです。
 残念なことに、これまで社会で人の信頼を担保するものは、出身や学歴、勤務先の名前でした。しかし、例えローンを借りられない移民の人でも、Uberでコツコツと働き、評価をためてきた人は、そこでのレビュー評価が、“私は真面目で信頼できる人間だ”という証明になります。同様にAirbnbであらゆる国の人からレビューを集めた人は、“温かなホスピタリティ精神に溢れた人間だ”という証明になります。このように、真面目な人が評価されるのが、シェアリング・エコノミーの評価システムの良い側面だと思います。そしてシェアリング・エコノミーは世界中に広がっているので、どの国でもUberでの仕事を通じて“この人は大丈夫”という信頼を得られます。
 これらの評価システムや信用が生む経済は、世界をどう変えていくのでしょうか。最終回では、Uberドライバーのケースを例にとり、「国からも自由になり得る未来」について話したいと思います。



執筆者:尾原 和啓
著作家・IT評論家。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーも務める。

掲載:東商新聞 2017年5月10日号

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