シェアリング・エコノミー

第4回 Uber化する社会~持たない者の強さ~

2017年8月22日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2017年4月20日号

 シェアリング・エコノミーとは、個人が所有する資産のうち、使っていない部分や時間を、インターネットを介して貸し借りするサービスです。スマートフォンの普及により、シリコンバレーを起点に世界中に爆発的に広がりました。その仕組みや、社会に与える影響、可能性について解説します。

広がる“ウーバライゼーション”


 これまで、アメリカを中心にどのようなシェアリング・エコノミーサービスが生まれ、広がりつつあるかをご紹介してきました。今回からは、シェアリング・エコノミーが社会にどう影響を与えていくかについて説明していきたいと思います。そのうえで、あらゆる可能性を見せてくれるのが、「Uber(一般ドライバーが自家用車で客を送迎するサービス)」です。
 Uberのお膝元であるサンフランシスコでは、同社が驚異的な速さでタクシー業界を席巻した結果、2016年にサンフランシスコの大手タクシー会社YellowCab社が、会社更生法を申請する事態に陥りました。アメリカでは、シェアリング・エコノミーが台頭し、あらゆる既存サービスや人々の生活に変化を与えるさまを「ウーバライゼーション」という新しい造語で呼んでいます。
 Uberがこれほどまでに拡大している理由を見てみましょう。従来のタクシー会社とUberでは、事業を地域展開する際にかかるコストに、大きな差があります。例えばタクシー会社の場合は、運転手の教育機関、支社、車庫を作ったりと、費用も人件費もかかります。ところがUberは駐車場代も人件費もかからず、決算などもスマホで管理できてしまう。もちろん面接などをするための雇用機関はあるものの、ほとんど費用がかからないため、圧倒的な速さで各国に展開していきます。さらに、コストが下がる分、より安価にサービスを提供できる。よって利用するユーザーも瞬く間に増えていくのです。


次はどの業界で起きる?


 こういったケースは、今後銀行でも起きてくる可能性があります。セブンイレブンにATMがあるように、必ずしも銀行がなくても、口座からお金を引き出すことは既に可能です。つまり、スタッフが常駐している店舗で、ATMのシステムさえあれば、同じことができるかもしれないのです。
 近年、多くの店舗では、ネットワークで管理できるレジシステムである「POS(販売時点情報管理)」を導入しています。最近はタブレットだけで動作するPOSレジが普及したことから、大手スーパーなどだけでなく、小売店や飲食店などでも導入するようになりました。今後POSに銀行システムが導入されれば、これらをATM代わりにして、現金を引き出したいときはそのPOSにあるキャッシュを引き出すようなことも起こりえるでしょう。
 このように、ウーバライゼーションは、既にある資産を活用し、ネットワークにつなげるだけで、あっという間にあらゆるサービスを各地へ展開させていきます。Uberが示す“タクシー”は、支社も車庫も必要としません。そうして“持たない者”にとって都合が良くなっていく一方で、各地に支店を持つ企業や、投資した設備を“持つ者”たちが苦境に立たされていく。しかしこれを言い換えれば、既存の業界が、いかに自分たちが持っている資産でこのビジネスシステムに参入していくかを考えるチャンスでもあるのです。


“持たない者”の強みをさらに活かす


 サンフランシスコでUber専業のドライバーの年収は、約600万円程度と言われています。それでも客単価は既存タクシー会社の半分から3分の1です。なぜそれほど稼げるのでしょうか。現地のUberでは相乗りがデフォルトになっています。そこで、お客さんの乗車と降車を繰り返す最中に、Uberの人工知能が常に3人分の席を埋めるべく「この道を通ると相乗りしたい人が現れる」と通知してくれます。このように、Uberの特筆すべきは、コストを下げ効率化するだけでなく“持たない者”の強みをいかに最適化するかをベースに考えている点にあるとも言えるでしょう。
 次回は、Uberなどのシェアリング・エコノミーが発展してきた大きな理由である“信用”と“評価システム”について話します。



執筆者:尾原 和啓
著作家・IT評論家。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーも務める。

掲載:東商新聞 2017年4月20日号

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