シェアリング・エコノミー

第3回 遊休資産の広がる対象「BtoB」「個人の時間」も

2017年8月15日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2017年4月10日号

 シェアリング・エコノミーとは、個人が所有する資産のうち、使っていない部分や時間を、インターネットを介して貸し借りするサービスです。スマートフォンの普及により、シリコンバレーを起点に世界中に爆発的に広がりました。その仕組みや、社会に与える影響、可能性について解説します。

 シェアリング・エコノミーの資源となる「遊休資産」。これらが扱う対象は、「Uber」における車や「Airbnb」の家だけではありません。主にアメリカでは、アウトドアギアを貸し借りする「ギアコモンズ」や、駐車場をシェアする「ラックス」など、その対象はどんどん広がっています。今回は、その中でも象徴的な2つの具体例をご紹介しましょう。


BtoBのシェアリング・エコノミー


 シェアリング・エコノミーは、個人同士だけでなく業務間も結びつけています。その代表例が、印刷サービス「ラクスル」です。ラクスルは国内の印刷会社をオンライン上でネットワーク化し、各社の非稼働時間を活用したシェアリング・エコノミー型の印刷サービスです。例えばあるクライアントが、100万部の印刷をラクスルに発注したとします。すると発注内容がラクスルを通して各印刷会社へ表示され、印刷会社は印刷機の稼働が空いている時だけ受注することができるという仕組みです。
 そもそも印刷業は、印刷機本体や維持費用などの固定費が高い一方、印刷紙やトナーなどの変動費が安い。そのため、なるべく24時間稼働させたほうが利益を生みます。そこで、ラクスルを通じて各社に注文状況が伝えられることにより、印刷会社は効率よく注文を受託できるため、低価格で印刷物を提供できるようになりました。さらに、大量の注文でも各社が小分けして受託してくれるので、1社に注文するより効率よく、短時間で仕上げられるメリットもあります。


個人の時間とスキルを提供


 オンライン上でユーザーとクライアントの仕事をマッチングするサービスを「クラウドソーシング」といい、国内では「ランサーズ」や「クラウドワークス」などが有名です。クラウドソーシングを使えば、翻訳やライティングなど、全国のどこにいても仕事を受注し、土日や平日の夜などの空いた時間を使って作業できます。例えば、都内で働いてきたシステムエンジニアが、親の介護のため地方で暮らすことになった場合。これまでなら地元の会社に再就職するか、アルバイトをするかしか選択肢がありませんでしたが、クラウドソーシングを通せば、居場所に縛られず、好きな時間にスキルを活かした仕事ができるようになるのです。
 クラウドソーシングには、ベテラン向けの依頼から未経験でもできるものまで、細かな需要が集まります。例えば「同時通訳を多少経験がなくてもいいので安くやってほしい」というニーズは、「同時通訳の経験を増やして、スキルアップにつなげたい」というユーザーの意欲と結びつきます。このように、必ずしも組織に所属せずとも、個人の働き方やスキルアップの可能性を広げてくれるのが、クラウドソーシングの持つ可能性といえるでしょう。
 シェアリング・エコノミーの成長とともに「遊休資産」はあらゆるものを対象に広がり、オンライン上で効率的にやりとりされることによって、私たちの仕事や生活そのものに影響を与え始めています。次回からは、シェアリング・エコノミーがどう社会を変えていくかについて、ご紹介していきます。

 

 


執筆者:尾原 和啓
著作家・IT評論家。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーも務める。

掲載:東商新聞 2017年4月10日号

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