シェアリング・エコノミー

第2回 遊休資産が生み出す富

2017年8月8日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2017年3月20日号

 シェアリング・エコノミーとは、個人が所有する資産のうち、使っていない部分や時間を、インターネットを介して貸し借りするサービスです。スマートフォンの普及により、シリコンバレーを起点に世界中に爆発的に広がりました。その仕組みや、社会に与える影響、可能性について解説します。

遊休資産とは?


シェアリング・エコノミーとは…
個人が所有する家や車などの資産のうち、使っていない部分や時間(遊休資産)を、インターネットを介して貸し借りするサービスのこと。
 今回は、シェアリング・エコノミーの資源となる「遊休資産」に焦点を当て、これらが生み出す富と可能性について説明します。
 日本でもすでに有名な民泊仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」を例に紹介しましょう。例えば、30年ローンで購入したマイホームで、子ども部屋が使われるのは大学に進学するまでの12年ほど。人は案外、生涯を通して家という資産をフルに使い切れていません。しかしこの空き部屋をAirbnbで貸し出すことで、収入を生み出すことができます。これが“遊休資産で富を生む”ということです。
 私が住んでいるインドネシアのバリ島には、インターネットを使って遠隔で仕事をする「リゾートワーカー」が数多く住んでいて、彼らもAirbnbをうまく利用しています。ある友人はバリ島とベルリンにそれぞれ家を持っていて、バリ島にいる時はベルリンの、ベルリンにいる時はバリ島の家をそれぞれAirbnbで貸し出しています。すると、1カ月にかかる家賃が、一軒分で済むようになる。さらに、家族でシンガポールへ旅行に行っている間は二軒分の収入を得るので、旅先のホテル代を賄うこともできる。つまり世界のどこにいても家賃が一軒分なのです。


効率化と交流


 空き部屋であれば、貸し出すのにほとんど追加コストがかからないので通常は安く提供されるようになります。すると借りる側にとっても、ホテルよりずっと安く泊まれる。このようにシェアリング・エコノミーには、双方に効率の良さを促す側面があるのです。さらに、最近はドアに暗証番号キーを設置するオーナーも多く、借りる側はメールで届いた暗証番号だけを入力すれば泊まれるケースも増えています。直接顔を合わさずにやりとりできるので、ビジネス出張などで疲れている時も、気軽に使えるのが便利ですね。
 逆に、「せっかく部屋を貸し出すなら、旅行客と交流しよう」というオーナーもいます。Airbnbの利用者は海外旅行客が多いので、例えば募集案内の欄に“Japanese mother is here”と銘打ち、旅行客とはGoogle翻訳でやりとりしながら、「これが日本の朝ご飯よ!」とみそ汁や干物を朝食サービスとして提供したりする。日本の日常文化を知りたい旅行客に非常に喜ばれ、双方の思い出作りにもなります。
 つまりシェアリング・エコノミーには、単に“余っているものを使い切る”だけの効率化ネットワークではなく、人と人の心のつながりを作り出すネットワークとしての側面があるとも言えるでしょう。


効率化が“余剰”を生む


 シェアリング・エコノミーが効率化を促すことで、今度は余剰が生まれます。この“余剰”を楽しむのも、シェアリング・エコノミーが作り出した文化です。自家用車を利用したタクシーサービス「Uber(ウーバー)」を例に見てみましょう。Uberによって、ユーザーは車に乗るコストが下がる(効率化)。ならば、余ったお金(余剰)で特別な体験をしたい欲求が生まれる。そこでUberは、フェラーリやランボルギーニなどのスーパーカー限定の配車サービスを実施しました(現在はサービス終了)。スーパーカーを運転し自慢したいドライバーと、一度は乗りたい利用者のニーズをマッチングさせた遊び心のあるサービスです。
 このように、遊休資産はお金だけではなく、特別な体験をも生み出します。次回は、BtoB向けサービスや、個人の時間などの遊休資産を使った様々な例を紹介します。



執筆者:尾原 和啓
著作家・IT評論家。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザーも務める。

掲載:東商新聞 2017年3月20日号

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