覚えずに覚える記憶術

最終回 「教えるだけ」で楽に覚える

2017年6月20日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2017年2月10日号

 今回で最終回となりますので、最も効果的な記憶術をお伝えしたいと思います。
 カフェに行くと、高校生がよく自習をしています。一人で黙々と勉強している学生もいますが、友達同士で勉強を教え合っている学生もいます。このお互いに勉強を教えあうのが、良いのか、悪いのか? 結論から言うと「教える」「教え合う」というのが、勉強法そして記憶術としても、最高、最強と言っていいほど絶大な効果があるのです。

■「教える」は「暗記」であり「チェック」


 他の人に「言葉でわかりやすく説明できる」ということは、頭の中でその内容が十分に理解され、ストーリー化されていることを意味します。ストーリー化された記憶は、忘れづらく、いつまでもしっかりとした記憶として定着するのです。
 人に教えていると、「うまく説明できないな」「十分に理解できていないな」と気付きます。「教える」ことは、記憶の強化だけではなく、記憶しているかどうかのチェックにもなるのです。


■記憶の4ステップを網羅する記憶術


 記憶には、4つのステップがあります。「理解」「整理」「暗記」「反復」の4つです。
 暗記の前にすべきことは、「理解」と「整理」です。この「人に教える」ことをするだけで、「理解」「整理」が同時に終了します。また、人に説明することは、自分の知識の「復習」と「反復」にもなります。つまり、「人に教える」ことは、記憶の4つのステップの全てを含んでいます。


■「人に教える」緊張感が重要


 ワシントン大学で行われた、興味深い研究があります。被験者を2つのグループに分け、片方のグループには覚えた情報をテストすると告げ、もう片方には覚えた情報を別の人に教えなければならないと伝えました。実際には、どちらのグループも、覚えた情報のテストだけをして、別の人に教えることはしませんでした。それでも、「別の人に教える」と思っていた被験者の方が、テストで良い結果を出したのです。
 実際に人に教えなくても、「人に教える」ということを前提にすると、その緊張感だけで、学習効率は大きくアップするのです。
 「教える」と言うと敷居が高いように思えますが、同僚や後輩に読んだ本の内容を紹介することも、立派に「教える」ことです。せっかく学んだ知識は、「教える」ことで、他の人と共有する。結果、それが自分のためにもなるのです。


執筆者:精神科医、作家 樺沢紫苑

掲載:東商新聞 2017年2月10日号

以上