中小企業診断士が徹底解説!中小企業の海外展開戦略

第3回 取引先の事前のリスク調査・分析を!

2020年9月25日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2020年9月20日号

本連載では、中小企業が海外展開をする際に押さえておくべきポイントなどを中小企業診断士が6回シリーズで分かりやすく解説します。今回は、海外企業との取引の際に必要な事前対策などについて、想定事例を交えて紹介します。

〈事例〉
中堅の検査機器メーカーの営業部長である古賀は、部下から以下の相談を受けました。
「会社の代表メールアドレスにこんなメールが届いていたのですが…」
内容を見ると、英語で書かれていたものの、タイの製造業者から当社へ検査機器の引き合いのようです。
どうやら取引先の現地日系企業から当社の検査機器の評判を聞きつけ、「ぜひ1台購入したい」とのこと。
同社は、当社から購入した検査機器をタイまで持ち込んだようです。
古賀は、笑みがこぼれるのを隠せませんでした。なぜなら、先週の社長との打ち合わせで、海外市場への輸出が話題に上ったからです。
当社は、国内市場で一定のシェアと評価を得ているものの、海外市場については、マンパワーなどの問題もあり、まだ手付かずでした。
古賀としても、取り組むべき課題と十分認識していましたが、限られた人員の中、国内市場に集中せざるを得ない状況でした。それが、何の苦労もせずに顧客から引き合いが舞い込んだのです。
古賀は、このチャンスを逃すことはできない、と先方へ早速メールを返信。10日後にタイへ出張する予定となりました。
同社は、既に現地の日系企業から当社の検査機器の特長や使用方法を聞いており、製品の詳細は説明不要でした。
「当社の輸出成約第1号は決まりだな。何より、当社の製品を既に知ってくれているのは有難い。特段の事前準備は必要なさそうだ。
成約すれば、役員昇進への道も開けるかな?」
古賀の空想は膨らむばかりでした…
上記の対応には誤りがあります。それは、海外企業との取引の前に大変重要な「事前準備」を怠っている点です。

<信用力の事前調査が大切>
まず、取引相手はどのような会社なのでしょうか。取引相手に直接会う前に、日本に居ながら調査できることがあります。それは、東商でも提供している「海外企業信用調査」です。特に輸出の場合、海外取引相手から確実に代金を回収するために、信用力を事前に把握しておきましょう。

<決済方法や契約書の整備>
国内では、掛け売り(後払い)が大半だと思いますが、海外企業に対してはリスクが高すぎます。LC(信用状)や前払いなど、代金回収を担保できる決済方法の検討をお勧めします。
契約書がきちんと整備されているか否かも確認点です。初めての輸出であれば、自社にリスクが残らないよう、国際弁護士と打ち合わせをしながら契約書の準備を進める必要があります。さらに仕様書や規格書もしっかり定めましょう。拙速な契約は品質クレームなどのトラブルにつながりかねません。

<為替リスク>
為替リスクも重要です。US$10,000で成約の場合、US$=\100であれば100万円ですが、US$=\90と円高になれば90万円に、US$=\110と円安になれば110万円に増減します。確実に利益を確保したいのであれば、事前に為替予約を行い、売上を円貨で固定しましょう。理想は、交渉段階に円貨で価格決定することです。その場合、為替リスクは発生しません。

<しっかりとした事前準備を>
上記以外にも、修理などのアフターサービスをはじめ様々なリスクが存在します。また、新型コロナウイルスによるリスクも無視できません。しかし、リスクを恐れては、伸び行く海外市場を取り逃してしまいます。東商に相談しながら、海外進出への事前準備を進めてみてはいかがでしょうか。


東京商工会議所 海外展開支援コーディネーター:坂口 到

掲載:東商新聞 2020年9月20日号

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