「トップが率先して動き、効率的な社内への浸透を実現」

金井大道具株式会社(東京都中央区)
金井大道具株式会社(東京都中央区)
劇場・テレビ番組・イベント・ファッションショーの舞台装置及び大道具の製作・施工管理を行っている。美術製作において、まさに日本における黎明期から現在に至るまで、常に時代を先駆けてきた。
  • 金井 勇一郎 代表取締役社長

金井 勇一郎 代表取締役社長
金井 勇一郎 代表取締役社長

企業インタビュー

 金井大道具は、明治19年(1886年)劇場付きの大道具会社として創業。歌舞伎を中心に国内の主要な劇場で舞台大道具を手掛けてきました。従業員は211名(2019年3月現在)。本社以外に、TBSや国立劇場や新橋演舞場などに事業場を持っています。
 徹夜の作業など長時間労働が多く、またイベントは土日に行われるため休日出勤も頻繁に発生するような業界であるので、過重労働などが原因で体調を崩すなど、社員の健康状態の悪化が経営的な問題となっていました。
 健康診断に関しても、悪い数値が目立ったり、再検査の受診率が低かったりといった、状態になっていました。社内には「この業界だからしかたない」という雰囲気もあり、なんとかしないといけないという経営的な危機感が募りました。
 社員が健康でないといい仕事はできません。「売上第一主義」からの脱却を図り、社員が健康でやりがいを持って働いていける環境を作るため、会社の利益を「人」に投資していこうと考え、健康経営に取り組むことにしました。

自ら勉強を始め、その必要性を再確認

社内に掲載されている安全衛生基本方針 社内に掲載されている安全衛生基本方針

 企業のトップである経営者の私自身が率先して取り組まないと社内には波及しないと考え、メンタルヘルスマネジメントの勉強を始め、Ⅰ種の検定試験に合格しました。勉強すればするほど自分の無知さに気づき、健康管理の必要性を実感しました。そして、社内への導入に際して、まず体制を整えました。産業医、臨床心理士、保健師の3者からなる産業保健スタッフを編成しました。産業医は会社全体の健康管理や健康指導をメインに行います。臨床心理士はメンタル的なサポートを行います。年1回のストレスチェックに対してのサポートをはじめ、メンタル面での相談窓口としても機能しています。保健師は健康診断の結果を受けて具体的な生活習慣に関する指導などを行います。
 そして、その産業保健スタッフの監修のもと安全衛生基本方針を定め、全事業場に掲示し展開しています。「目指すこと」「行うこと」「スローガン」など具体的で明確な指針を打ち出すことで、実質的な効果を得られる内容となっています。




 具体的には「からだ」と「こころ」の2つの側面から取り組んでいます。いくつか代表的な取り組みについてご紹介しましょう。

全社員の健康診断の数値をデータ化し推移をチェック 全社員の健康診断の数値をデータ化し推移をチェック

<「からだ」の健康管理>
■節目人間ドック
 40歳、45歳、50歳、55歳と、節目となる年齢を迎えた社員を対象に会社負担で人間ドックを受けてもらっています。また、血液検査は会社負担で全社員に実施しています。
■有所見者への対応
 当社では、全社員の健康診断の数値をデータ化し、推移をチェックできるようにしました。その内容を踏まえ、健康診断による有所見者には、産業医、保健師との個別面談を実施しています。健康診断を受診したきりにしないで、継続的で意味あるものへとしました。
■健康意識の向上
 2019年より半年に1度、「健康だより」を発行。生活習慣を改善したことにより、健康診断の数値がよくなった社員のインタビューや、その時期の健康情報など、健康への意識づけとなる情報を掲載しています。
■働き方改革への対応
 「月7日の公休」でしたが、「土日休み」に改定しました。当たり前のことと思われるかもしれませんが、土日にイベントが多いこの業界では画期的なことで、同業者からはよく驚かれます。また、新入社員でも有給休暇を取得できるよう年次有給休暇の付与日を、入社6ヶ月以降から入社日へと改訂しました。

明るく健康的な雰囲気の社内 明るく健康的な雰囲気の社内

<「こころ」の健康管理>
■メンタルヘルス
 ストレスチェックを行い、結果を集団分析し、役員や管理職にフィードバックしています。上長が社員をケアすることで、深刻な事態になる前に対処できる環境を整えました。また、ストレスを感じている社員は希望すれば臨床心理士との面談ができるようになっています。


会社が明るくなって、生産性が向上した

 健康経営の実施により、長時間労働者が少なくなり、離職率も減少しました。また、健康経営に取り組んでいること自体が当社の企業価値向上に貢献し、採用に際しても当社の魅力としてアピールできています。そして、何より社員が明るくなって、元気になりました。売上も大切ですが、社員のからだとこころの健康を大切にすることが、生産性向上と利益確保につながります。一朝一夕にできるものではないので、継続していくことが重要です。トップ自らが動けば、社員も必ずついてきてくれます。

社内に常設されている血圧計と体重計

社内に常設されている血圧計と体重計

数々の認定証や検定の合格証が並ぶ

数々の認定証や検定の合格証が並ぶ

半年に1度発行している健康社内報「健康だより」

半年に1度発行している健康社内報「健康だより」