「『生命』と真摯に向き合うことで企業価値を高める」

サイショウ・エクスプレス株式会社(東京都江東区)
サイショウ・エクスプレス株式会社(東京都江東区)
1955年に創業し、65年の歴史を持つ運送会社。物流業界の新3K「きれい」「健康」「かっこいい」を掲げ、従業員満足度(ES)の向上を常に考え、従業員が気持ちよく働ける環境づくりを目指している。
  • 齋藤 敦士 専務取締役

齋藤 敦士 専務取締役
齋藤 敦士 専務取締役

企業インタビュー

明るく風通しのよい社内 明るく風通しのよい社内

 サイショウ・エクスプレスは江東区辰巳に本社を構える運送会社です。主に、催事・イベント関連の機器や建築関連の資材の運送を行っています。運送会社にとって安全は命題。そして、安全運転とドライバーの健康は切っても切れない関係にあり、私たちは常に健康を意識しながら業務を行っています。ところが、健康に対して積極的な取り組みはできていませんでした。そんな状況の中で、2つの出来事が起こり取り組みを強化することになりました。
 1つ目は、従業員の大病です。毎年のように誰かが大病を患っていました。現場への復帰に1年近くかかることもあります。欠員による対応や補完となる採用も上手くいかないことがあり、健康に対する意識の甘さと健康の重要性を認識させられました。
 2つ目は、身内の不幸が立て続けに起きたことです。私の母と義母(妻の母)が近い時期に亡くなりました。健康に向き合わざるを得ない状況になったとともに、生前私の母は当社でドライバーの健康管理を担当しており、その業務を私が引き受けることになり、立場的にも健康について積極的に考えるようになりました。

SAISHO健康プロジェクトが始動

和やかに楽しみながら行うウォーキング 和やかに楽しみながら行うウォーキング

 健康経営という言葉は新聞で知りました。ぜひ取り組んでみたいと思い、Webサイトで調べたり、東京商工会議所の健康経営エキスパートアドバイザーにご指導いただいたり、セミナーに参加するなどして、知見を深めていきました。そして2017年1月に「SAISHO健康プロジェクト」として健康経営を導入しました。具体的には、社内ウォーキングイベント、健康法などを紹介する健康社内報発行、そして自動販売機の商品の健康志向対応などを行いました。
 しかし、当初は私一人で社内への導入を図っており、知識的にも物理的にも限界が生じてきたため、外部の専門家を招いてプロジェクトチームを作ることにしました。メンバーは私がリーダーとなり、健康管理士、管理栄養士、産業医の3名を加えた4名になります。それぞれの役目ですが、健康管理士は社員の健康を統括的に見て方向性の示唆やアドバイスを行います。管理栄養士は食事や運動に関する詳細な健康アドバイスを各個人にしていきます。産業医は同業4社で選任し、専門的立場から指導や助言を行います。

インストラクターを招いて行ったヨガ教室 インストラクターを招いて行ったヨガ教室



この新しい体制になってからは、医療の面から社員をトータルにサポートできるようになりました。主な取り組みとしては、①定期健康診断事後処置 ②健康面談 ③合同安全衛生委員会 の3つになります。

①定期健康診断事後処置
 健診結果を基に全従業員の健康状態を把握し、再検査が必要な社員には再受診を促し、再受診報告書などを提出してもらい、状況を確認しています。健診受診率はもちろん100%ですが、再検査受診率も80%にまで上りました。
②健康面談
 健診結果を基に健康管理士が社員ごとに「ヘルスケア通信(身体の成績表)」を作成。健康管理士と管理栄養士との健康面談を行い、各人の健康状態や注意事項などを説明していきます。
③合同安全衛生委員会
 産業医を共有している同業4社で、月に1度合同安全衛生委員会を実施しています。役員がこの委員会に参加し、各種健康情報を入手し、それを社内にフィードバックします。  その他にも倉庫の空きスペースを活用して、ヨガインストラクターを招いてヨガ教室を実施するなど、仕事の中に上手く健康を組み込むことで、効率的にしかも楽しく健康になれる環境づくりを実践しています。

社内が明るくなり、業務のクオリティが向上

 健康経営の取り組みを始めて、社員の健康診断の結果は明らかに良くなっています。健康になると社内も明るくなり、仕事のクオリティも向上しています。何より病気を未然に防げるようになったこと、そして健康になったことで事故防止にもつながっていることが、健康経営導入の最大のメリットだと思います。また、求人に関しても、健康経営に魅力を感じて応募してくる方が多く、企業ブランド価値の向上にも貢献しています。

 健康を突き詰めて考えていくと根本には「生命」があります。そして、私たちの運送という仕事は常に「生命」と真剣に向き合う必要があります。「生命」を大切にするという考えは、環境問題のことや世間を騒がせている煽り運転のことなど、倫理観をいかに高めるかということにもつながります。今後は、経営と倫理観を上手くリンクさせて、社員一人ひとりの価値、企業の価値の向上を実現する試みに挑戦していきたいです。

隔月で発行している健康社内報

隔月で発行している健康社内報

社内に浸透している健康意識

社内に浸透している健康意識