覚えずに覚える記憶術

第3回 睡眠は最高の記憶術

2017年5月30日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2016年11月10日号

 「学生時代、徹夜で勉強した」ということはありませんか?実は脳科学的にみて「徹夜で勉強」は、最悪の勉強法といえます。逆に、きちんと睡眠をとることが、最高の記憶術なのです。

■記憶には6時間以上の睡眠が必須


 ハーバード大学のスティックゴールド博士は、コンピューター画面に図形を次々に表示し、その向きを瞬時に答えさせるテストを、学生たちにさせました。そして、その後の睡眠のとり方で、学習結果に差が出るかどうかを調べました。
 まず、学習後に徹夜させた学生たちに、3日後に同じテストを受けさせたところ、以前に比べて結果が全く伸びませんでした。ところが、6時間睡眠をとったグループでは、かなりの成績の伸びを示しました。さらに8時間睡眠をとったグループは、最大の効果が認められたのです。
 スティックゴールド博士は、「何か新しい知識や技法を身に付けるためには、覚えたその日に6時間以上眠ることが欠かせない」と結論付けています。


■夢が記憶を整理する


 私たちは夢を見ますが、夢は何のために見るのでしょう?それは、前日の出来事や情報を整理して、記憶の保存のための準備をしているという説が有力です。つまり、睡眠をきちんととらないと、夢を見る時間が削られ、インプットした情報が脳の中で整理されず、記憶として定着もしないのです。


■記憶のゴールデンタイム


 何かを記憶したり暗記したりする場合、最も効果的な時間帯があります。同じ勉強時間でも圧倒的に記憶に残りやすい記憶のゴールデンタイム。それは「寝る前15分」です。
 脳に情報をインプットしてすぐに眠る。そうすると、余計な情報が脳に入らず、「記憶の衝突」が起こらない。覚えたい情報が、別の情報に邪魔されることなく、効率的に記憶されるのです。
 多くの人は、寝る前にテレビやスマホを見ているかもしれません。寝る前に種々雑多の情報を脳に入れてしまうと、情報同士がぶつかりあって脳が混乱します。子供のオモチャ箱のように、脳がグチャグチャな状態になってしまう。最低の寝る前の過ごし方です。
 寝る前15分に重要な書類に目を通したり、記憶、暗記の時間に充てる。そして、そのまま6時間以上睡眠する。たったこれだけのことで、記憶力は最大化します。睡眠は最高の記憶術といえるのです。


執筆者:精神科医、作家 樺沢紫苑

掲載:東商新聞 2016年11月10日号

以上