覚えずに覚える記憶術

第1回 大学生に負けない記憶力の作り方

平成29年5月16日

 最近、記憶力の衰えを感じていませんか?40歳を超える方は、「人の名前が出てこない」「電話の要件が思い出せない」など、「物忘れ」や「ど忘れ」が気になるはず。そして、それが毎年増えてくると、将来認知症になるのではと、心配になります。できれば、60代、70代になってもシャキッとした脳の状態を保ちたい。いつまでも、頭の回転は速く、バリバリと働きたいと、ほとんどの人が思っているはずです。それは、可能です。

■2割の70代は大学生に負けない


 「歳をとれば記憶力が衰えるのは仕方がない」と多くの人が思っているでしょうが、それは脳科学的には間違いです。中高年を勇気づける、非常に興味深い実験結果があります。
 大学生と70代の高齢者に単語リストを記憶してもらい、テストを行いました。結果は、80%の高齢者は大学生に記憶力で負けましたが、20%の高齢者は大学生とほぼ同等の単語リストを思い出すことができたのです。
 老化による記憶力の低下は個人差があり、70代でも大学生に負けない記憶力を保っている人がいる、という事実。その一人にあなたも加わることが可能なのです。
 「毎日10万個の脳細胞が減り続けて、増えることはない」という話を聞いたことがある人も多いでしょうが、最近の脳科学研究では間違いだったとわかっています。脳を鍛えることで、記憶に関して重要な働きをする「海馬」の細胞数を増やし、さらには海馬の体積を増やすこともできるのです。
 複雑な道を運転しているロンドン市内のベテランタクシー運転手の脳は、一般の人と比べて海馬の体積が3%、神経細胞の数でいうと20%も多いという調査結果もあります。


■脳を「上手に」使う


 何もしないと、歳とともに脳細胞は失われ、脳は老化し、記憶力の減退が進みます。しかし、脳を上手に使うことによって、しかるべき脳トレーニングをして、脳の老化を阻止し、記憶力を高め、いつまでも脳をイキイキとした状態で活動させることができます。
 今回からスタートする5回の連載では、「アウトプット」「眠る」「運動」「教える」など、ごく簡単にできる方法で、あなたの記憶力を最大化する記憶術を説明します。結果として、脳の衰えを防ぎ、脳のパフォーマンスを最大化し、年をとってもバリバリ仕事ができる「覚えずに覚える記憶術」についてお伝えしていきます。


執筆者:精神科医、作家 樺沢紫苑

掲載:東商新聞 2016年9月10日号




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