トップアスリートから学ぶ勝者のメンタリティ

第1回 イチロー選手がメジャーに登り詰めた理由

平成28年5月10日

 私は過去20年以上にわたり、臨床スポーツ心理学者として、チャンピオン・トップアスリートのコメント心理分析に関する研究を行ってきた。今回から6回にわたり、日本を代表する6人のトップアスリートの心理・行動パターンを取り上げ、「なぜ彼らはその分野の頂点に登り詰めることができたのか?」について考察を加えたいと思う。第1回目のアスリートはメジャーリーグ・マイアミ・マーリンズのイチロー選手である。

 2015年8月15日、イチロー選手はセントルイスで行われたカージナルス戦に「2番・右翼」で先発出場。1回に右前打を放ち、日米通算4192安打(日本1278本、米国2914本)とし、「球聖」と呼ばれたメジャー歴代2位のタイ・カッブの記録を超えた。敵地にもかかわらず、ファンは総立ちとなり、イチロー選手は一塁上でヘルメットを掲げて祝福に応えた。
 多くの人々が、イチロー選手に類稀なる野球のセンスがあったから偉大なメジャーリーガーになったと考えている。しかし、それは半分間違っている。確かにイチロー選手に野球のセンスがなければ、メジャーリーガーには到底なれなかったはず。しかし、才能だけでその分野のトップに登り詰められるほどこの世界は甘くない。血の滲むような鍛練があったから彼の才能の花が咲いたのだ。その証拠に、満ち溢れる才能を持ちながら努力を怠ったために私たちの知らないうちにスポーツの表舞台から消えて行ったアスリートは枚挙に暇がない。
 イチロー選手に血の滲むような努力をさせているのは「野球が好き」という感覚であることは間違いない。「結局、好きなことをやっていると、人からそれを努力と言われても、自分ではそう思わないんですよね。そういう人にすごいね、とか言っても『いや、別にたいしたことはない』って言いますよね」と、イチロー選手は語っている。
 もちろんイチロー選手がここで表現する「好き」とは、野球という仕事の内容が好きという意味ではない。事実、彼は「バットを振る作業自体はまったく面白くない」と語っている。
 実際この世の中に内容の面白い仕事なんてほとんど存在しないと考えたほうがよい。たとえ他人がやっている仕事の内容が面白そうにみえても、いざ自分が引き受けてみると面白くない要素がどんどん生まれてくる。
 彼に「野球が好き」という感覚を与えているのは、野球を通して成長できる手応えがあるからである。野球が自分の才能を磨いてくれるという実感があるから辛い練習にも耐えられる。あるいは、一流のピッチャーの投げる難しいボールをヒットにするという快感が彼の努力の源泉になっている。
 心理学で言う「成長欲求」こそ、仕事にのめり込んで成果を上げる強烈な要素である。昨日の自分よりも今日の自分のほうがわずかであるけれど成長している。その手応えがあるから、いまだにイチロー選手は必死になってチームに貢献するために頑張っている。
 これはビジネスでもまったく適用できる。仕事を通して日々自分が着実に成長している感覚に敏感になって仕事でヒットを量産することを快感にする。そう考えることができれば、どんな仕事も好きになってのめり込むことができるようになる。


執筆者
児玉 光雄

1947年兵庫県生まれ。追手門学院大学客員教授。京都大学工学部卒。スポーツ心理学者。アスリートのコメント心理分析のエキスパートとして企業を中心に年間70回のペースで講演活動をしている。著書は『Kのロジック 錦織圭と本田圭佑 世界で勝てる人の共通思考』(PHP研究所)をはじめ180冊以上。

掲載:東商新聞 2015年09月20日号




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