BCP 中小企業の 事業継続マネジメント

第1回  BCP作成は難しいとお考えの皆様へ

平成27年11月2日

事業継続力の向上の取り組みについてのポイントを紹介します。(全5回)

 災害や事故などによって中断された事業を再開・復旧させるための計画を「事業継続計画」といい、略して「BCP」と呼ばれています(Business Continuity Planの略)。2005年に内閣府が最初の「事業継続ガイドライン」を発表して以来、日本でも大企業を中心にBCPの策定が進んできましたが、中小企業においては、なかなか進んでいないのが現状です。しかしながら、今後また発生するであろう大規模災害から復興していくには、企業の大半を占める中小企業が災害に対する「事業継続力」を備え、事業再開を果たしていけるようにしなければなりません。
 そこで本連載では、「うちの会社にBCPなんてムリ」と思っておられる方々を含めて、少しでも多くの中小企業の皆様に、事業継続力の向上に取り組んでいただけるよう、さまざまな観点からヒントをお伝えしていきたいと思います。

■「事業継続マネジメント」としての取り組みが大事

 お察しの方も多いと思いますが、事業継続力を向上させるためには、BCPを作るだけでは不十分で、BCP作成に取り組む前の現状分析や、作成後の訓練、演習、改善活動などといった包括的な取り組みが必要です。このような方法論は、主に米国や英国において「事業継続マネジメント」として開発されてきました。これは略して「BCM」(BCPのPが「Management」のMに置き換わったもの)と呼ばれ、図のような「BCMライフサイクル」の形でまとめられています。
 まず自社の事業が中断したときに、取引先その他のステークホルダーに対してどのような影響が発生するかを考え、誰のために、どのように事業継続力の向上に取り組んでいくのか方針を決めます。次に自社が置かれている環境や、強み/弱みを踏まえて、事業継続のための現実的な方策を検討し、その検討結果をBCPという形にしていきます。さらに演習などでBCPを検証し、改善すべき点を見出します。このような活動を繰り返しながら、少しずつ能力を高めていきます。
 これに対して日本では、「BCP」という言葉ばかりが注目される傾向があります。しかし誤解を恐れずに申し上げれば、BCPは上述のような活動の成果の一つでしかありません。たとえBCPの内容が貧弱であっても、図のようなBCMライフサイクルに沿って2周、3周と取り組みを重ねた企業の方が、立派なBCPを作っただけの企業よりも、高い事業継続力が期待できます。

■最初からBCMとして取り組む

 したがって読者の皆様には、いきなり立派なBCPを作ろうと考えず、できるだけ数多くBCMライフサイクルを回しながら、事業継続力を少しずつ高めていっていただきたいと思います。BCMに継続的に取り組む前提であれば、最初に作るBCPの完成度が低くても構いません。最初から完成度の高いBCPを目指すあまり、なかなか先に進めず、BCMライフサイクルを1周も出来なくなることの方が、むしろ問題なのです。残念ながら、そういう例を筆者もいくつか見てきました。
 次回から、このような考え方に基づいて、特に中小企業の皆様がBCMに取り組む上で、知っておいていただきたい考え方やノウハウをお伝えしていきたいと思います。

BCMライフサイクル
BCMライフサイクル


執筆者
田代 邦幸(たしろ・くにゆき)

自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年にインターリスク総研に入社し、現在に至る。一貫して事業継続マネジメント(BCM)や、災害対策に関するコンサルティングを担当。国際危機管理学会日本支部理事

掲載:東商新聞 2015年1月20日号




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