中小企業の 企業年金制度 ~変革していく企業年金、自社に適した制度を~

第5回 選択型確定拠出年金

2014年10月7日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2013年11月20日号

変革していく企業年金。自社に適した中小企業向け企業年金制度について紹介します。(全6回)

 確定拠出年金(Defined Contribution Plan 以下、DC)において昨今注目されている導入方法として「選択型DC」がある。「選択型」といわれるのは事業主から支払われる報酬を給与としてもらうか、企業型DCの掛金としてもらうかを従業員が自ら選択したうえで、DC掛金を選択した従業員のみをDCの加入者とするからである。
 従来でも企業型DCを導入する際に、DCが原則、退職時であっても60歳前では積立資産の引き出しができないため、DC掛金相当額を給与に上乗せする前払退職金の選択を可能とするケースも少なくない。しかし、これは原則全員がDCに加入することを前提としつつ、DCに加入を希望しない者に前払退職金を選択させるものであり、選択型DCとは導入目的が異なっている。

●選択型DC原資の設定
 DCを導入するにあたり、多くの場合は退職金としての原資があてられるが選択型DCでは各従業員の給与(または賞与、諸手当等)から切り出されることになる。
 その設定方法の一つは現在支給している給与を減額し、その減額分を選択型DCの掛金とするものであり、もう一つは昇給分を原資の対象とするものである(図)。特に給与減額による場合は、会社から新たに掛金が拠出されるものではないことを従業員へ十分説明し、理解を得ておかないと後に問題となる可能性もある。

●従業員側の導入メリット
 いずれを原資にする場合でも選択型DCのメリットは、給与を減らしたくない従業員はDCを選ばなくてもよいことであり、DCを選択した従業員は老後の資金を税制上のメリットを享受しながら着実に準備できることである。
 税制上のメリットとは、給与には所得税・住民税が課せられるが、DCの掛金として拠出を受けた場合には非課税となる。また、DCでの運用益も非課税であり、受取時は一時金での場合には退職所得となり、年金の場合には公的年金等控除が適用される雑所得となり給与所得よりも有利となる。
 また、DCに拠出した掛金分は、社会保険料や雇用保険料などの算定基礎に含まれないため、保険料負担が軽くなる。特に、厚生年金保険の報酬月額が60万5千円以上の従業員であれば、標準報酬額は上限の62万円となるため、年金額はそれ以上反映されない。そのため60万5千円を超える額をDCの掛金とすれば課税所得を減らし、老後に受け取る資産を増やすことができる。しかし、保険料負担が減れば、老齢厚生年金や傷病手当金、失業給付等を受給額は減額されるためその点ではデメリットになる。ただし、前述のメリットとの比較を考えれば、メリットの方が大きいと考えられるが、これらの点についても従業員に対し事前に十分説明しておくことが重要である。

●事業主側の導入メリット
 事業主側もDCの掛金分は社会保険料や雇用保険料、労災保険料の算定対象とならないため保険料が軽減されるメリットがある。一方、事業主にはDC導入や運営に関わる手数料の発生を考慮する必要がある。
 このように選択型DCは、従業員にとっては税および社会保険料等の負担の軽減、事業主には社会保険料等の負担軽減となるメリットがある。さらに導入にあたり新たな原資を用意する必要がないため中小企業でも比較的導入しやすい仕組みでもある。
 2012年1月より可能となった従業員も任意で掛金を拠出できるマッチング拠出とならび、選択型DCも従業員の老後の資金準備のための福利厚生として、今後の利用が広まると考えられる。また、来年には事業主掛金の上限をさらに2~3割引き上げられる可能性も有り、そのことも追い風になるであろう。ただし、選択型DCであっても、受給額が変わるリスクを有する制度であること、原則として途中引き出しができないことなどは導入前の投資教育で十分理解してもらわなければならない。


執筆者
商工会議所年金教育センター 主任研究員 1級年金総合(DC)プランナー 中小企業診断士 大高 直美

掲載:東商新聞 2013年11月20日号

以上