中小企業の 企業年金制度 ~変革していく企業年金、自社に適した制度を~

第4回 確定拠出年金の導入

2014年9月30日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2013年11月10日号

変革していく企業年金。自社に適した中小企業向け企業年金制度について紹介します。(全6回)

 企業が確定拠出年金(Defined Contribution Plan 以下、DC)を導入する場合には、新規に退職金制度として導入するだけでなく、既存の退職金制度(厚生年金基金の加算部分、確定給付企業年金、退職一時金制度)の全部または一部の資産も過去分としてDC制度に移し換えることができる(図)。
 厚生年金基金、確定給付企業年金を移行する場合はその資産を一定の基準で従業員ごとのDCの個人別口座へ按分し一括で移す。退職一時金制度からの場合は自己都合要支給額を基準にした額を、一括ではなくDC移行年度を含め4年以上8年以下で事業主が移行年数を決め、その均等額を毎年移すこととなっている。
 DCを開始するには、事業主はDC規約を作成し、厚生労働大臣に申請し承認を得なければならない。規約には、運営管理機関、資産管理機関、加入資格、掛金額の算定方法、運用方法の提示と運用指図に関する事項、給付額及びその支給方法、事業主への返還額の算定方法、事務費の負担などを記載するが、申請にあたり従業員の過半数代表者の合意が必要となる。そのため、規約記載事項の決定にあたって事業主は従業員側と協議しながら行っていかなければならない。一般的には1年以上、少人数の企業でも半年以上は導入準備期間として想定する必要がある。DC導入の検討当初から経営者、人事関係者、従業員の代表などでプロジェクトチームをつくり、DCの仕組みや投資などについて一緒に勉強し、かつ従業員の退職金に対するニーズもひろいながら自社に相応しい制度を導入していくことが望ましい。

①制度設計
 企業が従業員ごとに拠出できる掛金額には上限(月額5万1千円、厚生年金基金、確定給付企業年金を実施している場合は月額2万5,500円)があるが、従業員ごとの掛金額の決定には一定のルールはあるものの比較的柔軟に設定することができる。そこで事業主側で自社が想定する給付水準の実現をめざし合理的な掛金設定を行うことになる。DC導入が既存制度からの移行であれば、その給付水準をモデルとし、DCの掛金を設定することが一般的である。
 たとえば、当該企業での標準的な社員が22歳から60歳になるまで加入し60歳になった時点での積立見込み額を1600万円としたい場合、1600万円は事業主掛金の累計とその運用益からなるため、事業主は想定される運用益を除いた額を拠出すればよいことになる。そのため将来にわたり、年何%の運用利回りが可能となるかを想定する必要がある。例えば、国債の利回りなど客観的な指標を参考にしながら決定する。なお、想定利回りを大きくすれば事業主の掛金は少なくなり、小さくすれば拠出する掛金は増える。
 2010年に企業年金連合会が行った実態調査では想定利回りを設定した企業の約70%が1.5%から2.5%の間で設定している。

②運営管理機関の選定
 運営管理機関とはDCにおいて、加入者が運用方法を選定する上で必要となる各種情報の提供、加入者の属性・運用実績の管理などを行う機関であり、DCの加入者となる従業員の直接の窓口となり重要な役割を担うことになる。事業主は従業員の利益の観点から、業務の水準やサービス内容、手数料等に関して適切に評価することが求められている。また、DC導入時の投資教育は事業主の責務であるが、運営管理機関にも委託し実施するケースが多い。
 運営管理機関によっては運営管理機関側で用意したDC規約へ追加加入する「総合型DC」も行っている。導入希望企業は単独で実施するよりも費用が安く、導入に要する期間も短いといった特徴があり中小企業にとっては利用しやすい制度となっている。ただし運用商品が限定されるなどの制約条件もあるので、それらの点も理解したうえで選択してもらいたい。


執筆者
商工会議所年金教育センター 主任研究員 1級年金総合(DC)プランナー 中小企業診断士 大高 直美

掲載:東商新聞 2013年11月10日号

以上