中小企業の 企業年金制度 ~変革していく企業年金、自社に適した制度を~

第3回 確定拠出年金の仕組み

2014年9月22日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2013年10月20日号

変革していく企業年金。自社に適した中小企業向け企業年金制度について紹介します。(全6回)

 2000年代に確定拠出年金と共に誕生した確定給付企業年金は厚生年金基金や廃止された適格退職年金と同様に、受給額(または支給額の計算方法)を決めた上で、拠出する掛金を設定する確定給付型(給付建て)の仕組みです。それに対し、確定拠出年金は毎月拠出する掛金額を設定し、受給額は掛金の運用成果が決まるまでわかりませんが、運用成果が悪ければ期待する額が受け取れない可能性もある反面、運用成果が良ければ期待以上の金額を受け取ることも可能な確定拠出型(拠出建て)の制度です。この確定拠出年金にはさらに以下のような特徴があります。

①従業員は受給権を確保できる
 毎月掛金が振り込まれた時点でその掛金は自分のものとなります。将来の給付額が決まっている確定給付型では、企業の経営状況が悪化した場合には給付減額が行われたりする可能性もあるので、確定拠出年金では過去の加入期間に拠出された掛金は必ず確保できるという面があり優れた仕組みといえるでしょう。但し、自らの運用責任により減額した分の補填はありません。

②従業員自らが掛金を運用する
 厚生年金基金や確定給付企業年金では資産全体を基金または事業主が金融機関を介して運用を行いますが、確定拠出年金では事業主から従業員に拠出された掛金を従業員個々人が事前に用意された金融商品の中から選び、自ら運用します。そのため、確定拠出年金を導入する際には事業主は従業員への投資教育を必ず行わなくてはなりません。自ら運用する仕組みは自立型社員を育成するといった面でプラスに捉えられている一方で、投資になじめない従業員もいること、投資教育への時間的、金銭的コストもかかり企業が導入を躊躇する要因にもなっています。

③60歳まで途中引き出しができない
 他の制度では中途退職の場合には一時金などでの支給がありますが、確定拠出年金では加入期間が短い、資産が少額であるなど一定の要件を満たしている場合以外には60歳になるまで途中引き出しをすることはできず、退職後の独立資金や転職までのつなぎ資金などとして利用することができません。しかし、中途引き出しできないということは、老後の資金としてしっかり確保されることを意味します。
 中途退職時に支給がないことに対応するため確定拠出年金を導入する際に前払退職金として給与に確定拠出年金の掛金相当額を上乗せ支給する制度を用意し、確定拠出年金と前払退職金との選択を可能とする企業も少なくありません。また中小企業退職金共済制度などと確定拠出年金を組み合わせて導入する企業もあります。
 なお中途退職時には確定拠出年金の資産は転職先で確定拠出年金を導入していればその制度に、ない場合には国民年金基金連合会に移し替えて資産を運用することになります。退職後、自営業者など国民年金の第1号被保険者になった場合や企業年金のない企業に勤めた場合には、個人型確定拠出年金の加入者となり自ら掛金を拠出することもでき、税制上の掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となります。

④退職給付会計の対象とならない
 確定給付型では年金・一時金を退職時または一定の年齢に達した時に支払うことを約束しているため、支払いを終えるまでは企業にとってそれは債務となります。しかし、確定拠出年金では掛金を支払った時点で債務は消えるため、退職給付会計の対象とはならず、企業の本業以外での財務リスクが軽減されるため企業にとっては望ましい制度といえます。
 今後、多くの厚生年金基金が廃止に向かうなか、その受け皿の一つとなる確定拠出年金ももっと使いやすいものにすべきとの機運が高まっています。例えば、脱退一時金支給要件の緩和、現在確定拠出年金の月掛金額は51,000円、確定給付企業年金、厚生年金基金がある場合には25,500円となっていますが、掛金拠出額の上限撤廃、また一定の支給額を保証するハイブリッド型の制度の創設の検討など企業や従業員が受け入れやすい仕組みとすべく様々な角度から議論がなされており、今後、個人型も含め確定拠出年金がさらに広まっていくことが期待されています。


執筆者
商工会議所年金教育センター 主任研究員 1級年金総合(DC)プランナー 中小企業診断士 大高 直美

掲載:東商新聞 2013年10月20日号

以上