第1回 なぜ今「5S」が大切なのか
掲載:東商新聞 2013年5月20日号
現代の職場環境の問題を明確にし、「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」、「習慣」の「5S」をキーワードに職場の片づけ術を紹介します。(全6回)
あなたの職場は、美しく整然としていますか?必要なものがすぐに出てきますか?収納庫に入り切らないものが床に置いてありませんか? いつも社員が書類を探していませんか?
整理、整頓、清掃、清潔、習慣。この5つは「5S」と呼ばれ、従来は労働災害や不良品の発生を防ぐ目的で、主に工場の安全管理面で提唱されていました。5Sが徹底されている現場は、高い生産性を誇りました。きちんと整頓された清潔な職場は、そこで働く人のモラルの高さの象徴でもありました。
経済環境が大きく変化し、仕事の質もますます複雑になる昨今。職場はややもすると乱雑になり、知らない間に無駄を生み、新たなリスクに直面する危険も抱えています。
この連載では現代の職場(オフィス、店舗、工場)環境の問題を明確にし、「5S」をキーワードに解決の方向を探ります。職場環境は、建物(ハード)に頼らなくても、自分たちの手で改善していく(ソフト)ことができるのです。
●乱雑な職場の問題点
職場の整理がなされていないと、足元の箱につまずいたり、上からものが落下したり、思わぬケガをすることもあります。
申込書や顧客名簿を入れたCDなどを紛失すると、大切な個人情報が外部に簡単に流出する危険があります。
名刺や書類などが多過ぎると、探しものに余分な時間がとられ、顧客への対応が遅れて信用を失いかねません。
増え続けるものを移動させながら仕事をしているとイライラが募ってきます。さらに、自分の手持ちのものだけで何とか解決しようとして社員同士のコミュニケーションの機会が減るなど、多くの問題点があります。
●日々の動作を最小限に
時計、植木鉢、写真立て、資格証、決裁箱…。デスクや棚の上にさまざまなものが並んでいませんか? キレイだから。便利だから。
ものは、ひとつ増えるごとに必ず手間がかかります。特に来客カウンターや店舗に置いてあるものは、小さなことでもお客様は見逃しません。観葉植物の葉の上のホコリや傘立ての下の受け皿にたまった土砂、カレンダーの破れなど。バランスや並べ方の美的センスも要求され、仕事をどんどん複雑にします。
思い切って、たくさんのものとかかわるのを止めましょう。
●職場の光景はメディア
雑然とした汚れた状態の職場に来た人は、どんな印象を受けるでしょうか。「本当に大丈夫?信頼できる?」「ルールを守れるか心配」「不愉快」「できればやめておこう」。
どんなに立派なチラシやホームページを作っていても、職場の光景が日々大きな「マイナス」を発信していることに注意を払いましょう。光景とは、静止画像とそこにいる人々の発する空気の総体です。特に「知性」が売り物の士業の事務所、「美」のクリーニングや美容関係、「清潔」の飲食店など。
逆に「職場の光景はメディア」という事実をきちんと認識すれば、お金をかけずに広告宣伝ができるのです。工場見学などは、製造業のイメージを上げる絶好の機会です。
次回からは、「5S」の各項目について、短時間で着実に実行できることを解説します。
響城 れい(日々キレイ)
執筆者
響城 れい(日々キレイ)
Office W-being代表。ワーク&ライフイノベーター。神戸大学教育学部卒業。20年間にわたりハウスクリーニングの運営に携わる。2,000件以上の現場訪問で、職場環境を改善。また、全国各地での講演や、NHK教育テレビなどへの出演など活躍中。
