変わるメンタルヘルス対策

第2回 メンタルヘルス対策のあり方

2013年3月8日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年8月20日号

臨床心理士の松本桂樹氏が、中小企業におけるメンタルヘルス対策についてを解説します。(全3回)

 企業におけるメンタルヘルス対策は、2000年に旧労働省より公示された指針によって導入が促進されました。本指針は、06年の労働安全衛生法改正に合わせ、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」と改訂され、現在に至っています。
 メンタルヘルス対策は、「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」および「事業場外資源によるケア」の「4つのケア」が、継続的かつ計画的に行われることが重要とされます。このなかでも企業が行うべき対策の中核は、管理監督者によるラインケアで、具体的には「職場環境改善」と「部下への相談対応」が2本柱とされています。
 特にラインケアを推進するための「管理監督者への教育研修・情報提供」は、メンタルヘルス対策として、企業内で最も多く取り組まれています。管理職に職場のストレッサーを把握・改善させる方法、もしくはメンタルヘルス不調が疑われる部下を早期発見・早期対応する方法を習得させる研修は、これまでも一定の効果を上げてきたといえるでしょう。
 しかし、管理職への教育研修は、やり方によっては逆に問題を大きくしてしまう可能性を孕んでいます。「社員が自殺したら賠償問題だぞ!」などと、リスクを強調して不安を煽り、部下の異変を早期発見させようとすると、上司側は部下のちょっとした異変も気になって敏感になっていきます。部下の不調疑いに意識を向け続けるのは、負担のかかることです。ましてや「仕事はやる気がしないが、趣味はできる」といった新型うつの増加は、管理職の負担感に更なる拍車をかけています。負担感の高まりは、部下の人格を問う意識に向かわせ、逆に上司-部下間の対立構造を強めてしまう恐れが生じます。
 メンタルヘルス対策は、「メンタルヘルス・ケアからメンタルヘルス・マネジメントへ」と言われます。ラインケアは特別な対応でなく、今や管理職に必要なマネジメントスキルのひとつとして位置付けられるようになっています。ただし、管理職が抱える負担感は、上記の悪影響に加えて、管理職自身のメンタルヘルスを蝕んでいるといえるでしょう。今、管理職をバックアップする支援体制が求められています。具体的には、管理職に対する「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」の体制充実が課題となります。


著者略歴
松本桂樹(まつもと けいき)[臨床心理士] 株式会社ジャパンEAPシステムズ 副社長
東京学芸大学大学院修了後、精神科医療機関である高田馬場クリニックに入職。しばらくして法人契約により社員と家族に対してサービス提供を行なう部門(EAP)を立ち上げ、クリニックと兼務。兼務のまま精神科に6年勤務の後、株式会社ジャパンEAPシステムズへ転籍。

掲載:東商新聞 2012年8月20日号

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