働き方改革

第3回 生産性向上につながる残業削減②

平成30年5月15日

政府の「働き方改革実現会議」は、2016年3月に実行計画を決定しました。特に目玉政策とされた「同一労働同一賃金の実現」と「長時間労働の是正」の2項目については、かねてからの懸案にも関わらず実現してこなかったテーマです。その必要性や政府の方針、課題、事業主に求められる心構えなどについて解説します。

 わが国の長時間労働は何が原因か。労働政策研究・研修機構が行ったアンケート調査によれば、所定外労働の発生の理由として、「業務の繁閑が激しい、突発的な業務が生じやすい」を6割以上の企業が指摘している。さらに「仕事の性質や顧客の都合上、所定外でないとできない仕事がある」ことを挙げている企業も半数近くに上る。業務の繁閑を生んでいるのは顧客への対応の必要性が背景にあると考えられ、顧客や取引先の事情が残業を生み出している最大の理由といえよう。
 実は前回に紹介したSCSKのケースでも、顧客を巻き込んだ取り組みが行われている。役員・部長層が顧客企業を訪問し、経営トップからの「お願い状」を持参して説明を行った。その際、残業削減や有給取得の促進は、社員が生産性の高い創造性豊かな仕事を行い、顧客サービスの貢献度を高めるものとして、理解を求めている。
 個々の企業の枠を超えて、業界を挙げた取り組みも重要であろう。長時間労働が常態化し、過重労働が問題化したトラック運送業では、「長期間労働の改善等に向けたパイロット事業」が取り組まれている。業界、荷主、労使団体、関係省庁などが一体となった協議会が設置され、長時間労働の改善に向けた課題の洗い出し、解決手段の検討や実践が進められている。


企業間アライアンスが有効


 下請け型の企業の場合、独自製品の開発などで交渉力を高める努力も必要だ。それにより、残業を助長する採算の悪い取引を縮小できる。その方策として、企業間のアライアンスが有効である。参考になるのが、中小加工業者が集まり組成する「京都試作ネット」である。2001年、「顧客の思いを素早く形に変える」をコンセプトに、京都府南部に所在する機械金属関連の中小企業10社が共同で立ち上げた。「試作に特化したソリューション提供サービス」の専門サイトを運営し、ウェブを通じ顧客からの依頼を受け付ける。依頼内容に応じてメンバー企業から最適な企業が依頼者に連絡し、2時間以内に返答する仕組みだが、試作案件ごとにプロジェクトを組み、共同で受注案件をこなす。2015年度の問い合わせ件数は、06年度の倍以上に成長した(同団体および中小企業基盤整備機構ウェブサイト参照)。
 労働生産性向上には人材育成も重要である。限られた時間でアウトプットを増やすには、働く個々人が能力を高める必要がある。先のアンケート調査でも、残業理由として「能力・技術不足で時間がかかってしまう従業員がいる」との回答は2割を上回る。もっとも、人材育成の重要性は認識していても、人員的にも財務的にも余裕のない中小企業にとって対応は容易ではない。そうした中、興味深い事例が「地域密着型総合ケアセンターきたおおじ」のケースである。
 人材不足と高い離職率で悩む介護業界で、7法人がグループを組むことで、研修および職員のキャリアアップを支援する専任の職員を共同して雇用し、研修やキャリアアップの仕組みを整備した。人材・開発研究センターを共同で立ち上げ、看護師と介護福祉士のスーパーバイザーを雇用し、このスーパーバイザーが各法人を巡回する仕組みと、研修の仕組みをつくった(厚生労働省ウェブサイトより)。
 いずれのケースも、資金面でも人材活用面でも制約のある中小企業にとって、一企業の枠を超えて発想し、互いに連携していくことがブレークスルーにつながることを示唆している。

 
 




執筆者:山田 久(やまだ・ひさし)
日本総合研究所 調査部長。研究・専門分野は、マクロ経済分析・経済政策・労働経済。

掲載:東商新聞 2017年8月10日号




入会のご案内

貸ホール・会議室

ジョブサイト

職員採用のご案内

東商 社長ネット

東商プロモーションムービー

中小企業向けBCPマニュアル

声かけ・サポート運動

ザ・ビジネスモール

「売りたい!」「買いたい!」を無料でPR。商品やサービスを登録して、販路開拓に!

ザ・ビジネスモールへ

福利厚生制度の充実

宿泊・レジャー等50,000以上のメニューを割引!

CLUB CCIへ

共済

医療・がん・労災などスケールメリットを活かした割引料金で大きな保障・ワイドな安心

共済へ

各種証明の発行

原産地証明、インボイス証明、サイン証明など各種証明を発行しています。

各種証明の発行

女性会

青年部

施策・支援情報 都・区など中小企業のお知らせ