会頭所信

所信表明

中小企業の再生による日本経済の成長力底上げを!~140年から新たな歴史へ、挑戦する東商~

1.はじめに

 3年前、私は東京商工会議所会頭に就任した際、「日本再出発の礎を築く」をスローガンに掲げ、以降、日本経済の再生に欠かせない「中小企業の活力強化」、「東京と地方のバランスのとれた発展」などに全力で取り組んでまいりました。今期もこの2点を活動の柱としたいと考えます。

 私の就任の年に、アベノミクスが本格的にスタートし、大胆な金融政策と機動的な財政政策により、わが国経済は、需給ギャップの縮小によるデフレからの脱却まであと一歩というところまで来ました。20年間のデフレにより、しっかり根付いてしまった日本経済のデフレ体質は、簡単に解決するものではありません。それゆえにデフレマインドは依然として根強く残り、物価上昇率2%は達成されていません。そうした中で、デフレ脱却を第一重要目標として掲げ、ここまで成果をあげたアベノミクスを高く評価するものです。

 日本が次に越えなければならない大きな山は、「成長する経済」への軌道変更です。これこそ、アベノミクスの真の狙いです。

 先月発表されたIMF(国際通貨基金)による日本の2017年の経済成長率見通しは0.6%であり、ヨーロッパ、アメリカその他の先進国と比較しても著しく力強さを欠いています。

 これは、残念ながら、現在の日本経済の実力、すなわち潜在成長率が、0%台前半で低迷していることを反映したものと言わざるを得ません。ちょっとした外部要因でマイナス成長に落ち込んでしまうほど、日本経済の実力は、未だ脆弱で危機的な状態だと言えます。

 わが国は、潜在成長率の底上げのための「サプライサイド政策」に腰を据えて取り組まなければ、成長軌道に乗ることはできません。そのためには、構造改革とイノベーションが必須であり、時間を要することを覚悟し、継続的で粘り強い取り組みと安定した政治が必要です。なお、安定した政権は、現在、日本が世界に誇るかけがえのない財産です。


2.中小企業の再生を日本経済の再生に

 私は、わが国の成長軌道への変更にとって、中小企業の果たす役割は極めて大きいと考えています。従って、中小企業の再生こそ、日本経済を成長軌道に乗せるために欠かせない施策だと思います。

 全国企業382万社の99.7%を占めるのが中小企業であり、わが国の雇用の約70%、給与支払いから発生する所得税の約40%、社会保険料拠出の約40%をそれぞれ担っています。中小企業は、わが国の雇用、財政、社会保障制度の屋台骨を支えていると言えます。地方創生も中小企業の活力強化なしには実現できません。まさに15代会頭の永野会頭がとなえた「石垣の強さ」を支えているのが、中小企業なのです。

 さらに、例えば人手不足のように、日本経済の課題が、大企業に比べて、いち早く経営課題になるのが中小企業です。中小企業の課題を解決することは、日本の課題を予め解決することにつながります。

 また、日本では、直近5年間で、約40万社(420万社→380万社)、約9.5%の中小企業が姿を消しています。この原因をつきとめ、対処することは、そのまま日本の再生につながります。

 こうした中、中小企業が直面している最大の課題は、「人手不足への対応」と「生産性向上」、そして「事業承継」です。

 中小企業には採用力の弱さ、経営資源の脆弱性、事業承継の困難さといった大企業にはない構造的な弱みを持っています。こういった点については、政府などに対し、率直に提言を行い、効果的な支援策を実現する必要があります。

 ただ、大事な点は、経営改革を実行する主体は民間であり、中小企業も含め、その原則は自助努力であるという点です。しかも中小企業には、環境変化に対しすばやく柔軟に対応するという能力が備わっており、この点については、本来、大企業よりはるかにすぐれているはずです。


(1)多様な人材(女性・若者・高齢者など)の活躍推進

 深刻化する人手不足により、企業活動が停滞し、経済規模の縮小を招くことを防ぐためには、「多様な人材の活躍推進」と「生産性向上」の両方に同時に取り組む必要があります。

 こうした状況の下、労働政策を中心に横断的なテーマを議論する「働き方改革実現会議」が政府に設置され、私も構成員として参画しております。ここでは、企業経営に直結する重要なテーマが議論されております。

 働き方改革は、成長戦略の本丸であるとともに、経営者の意識改革や長年の労使慣行の見直しなどを伴う非常に難しい課題であることから、官民ともに、「働き方改革は、ある程度時間がかかっても、丁寧に粘り強く取り組まなければならない。また、変えるべきものは変える『大胆さ』と、残すべきものは残すという『現実性』とのバランスが重要だ」という覚悟を持つことが大切です 。

 私は、中小企業は、高齢者の積極的な雇用、女性の活躍推進、柔軟な働き方の導入など「働き方改革」をいち早く実践していると考えますが、就業現場の実態を丁寧に調査し、それらを踏まえた議論と分析を行ったうえで、多様な働き手がその意欲と能力に応じて活躍できる仕組みや施策について、積極的に提言してまいります。

 また、東京商工会議所においても、今期、「多様な人材活躍委員会」を設置します。東京商工会議所がリーダーシップを発揮し、現場実態を踏まえた政策提言活動など実施するとともに、会員企業の好事例を共有し、現場の「働き方改革」実現の後押しを行ってまいります。


(2)生産性の向上、イノベーションへの挑戦による中小企業の成長力強化

 次に、生産性の向上についてですが、中小企業の生産性は、大企業の2分の1の水準にとどまっています。中小企業においても、生産性向上の有力な手段はICT等の導入ですが、中小企業の取り組みは、まだほんのわずかに止まっています。

 導入促進のためには、まずは経営者の気づきが必要であり、①導入初期コストの高さ、②導入推進のための人材や知識の不足を理由に、ICT化に二の足を踏む企業が多いことから、経営者の意識改革を図るとともに、ITコーディネータ等の専門家による支援などが必要です。

 東京商工会議所においても、今期から「生産性向上委員会」を設置し、ICT導入による経営課題解決の議論を深め、デジタル技術、ロボット、AIなどの活用を図る企業を強力に後押しします。

 人手不足は大変な課題ですが、労働力不足を解消しなければならないという強い社会的ニーズがあることは、2030年までに50%もの職場がAI、IoT、ロボットに取って代わられるとの予測があるとしても、ICTやロボット化に対する大きなインセンティブになるとも言えます。このことは、失業率の高さに悩んでいる他国にはみられない、デジタル技術導入の大きな強みであり、中小企業には、支援措置を最大活用し、積極的な投資を実施するとともに、デジタル技術と生産技術を融合させ、勇気ある経営を行うことで、新たなイノベーションを創出し、是非とも生産性の向上を実現していただきたいと思います。


(3)円滑な事業承継の推進

 この5年間で40万社もの中小企業が姿を消していますが、いわゆる倒産はほんの少しで、大部分は何らかの原因による廃業です。中には日本の将来に貢献できる素晴らしい企業も、廃業に追い込まれたかもしれません。国内マーケットの縮小、人手不足、競争の激化など、様々な理由が考えられますが、大きな原因のひとつが「事業承継」です。

 60歳以上の中小企業経営者の50%以上が、自分の代で廃業する見通し、そして約20%は後継者が未定という深刻な状況にあります。一方で、経営者が交代した企業は、事業拡大意欲が高く、経常利益率も高いという注目に値するデータもあり、円滑な事業承継は中小企業の活力の鍵であります。

 既に親族以外の承継が40%近くになっているなど、中小企業自身も懸命の努力をしていますが、会議所としても、「事業承継対策委員会」を新たに設置するとともに、意欲のある事業家と後継者不在の事業者のマッチングを推進する「事業引継ぎ支援センター」等を通じて、事業承継の支援を積極的に推進します。

 あわせて、事業承継の大きなハードルとなっている「事業承継税制の見直し」についても、積極的に提言してまいります。

3.東京と地方が共に栄える真の地方創生

 グローバル化の進展に伴い世界の都市間競争は激化し、世界における東京の国際競争力は相対的に低下しています。わが国の経済成長のエンジンである東京が、世界との熾烈な都市間競争を勝ち抜くためには、陸・海・空の交通・物流ネットワークの強化、国際的ビジネス環境の整備、都市防災力の向上を図り、競争力を強化していくことが必要です。

 全国的に人口減少、少子化、高齢化が進行する中で、わが国が持続的な成長を実現していくには、東京が国際競争力を高め世界から資金や人材、情報を呼び込むとともに、例えば、広域観光の推進等を通じて、その効果を全国に波及させることが必要です。

 「東京のさらなる発展」と「地方創生」は車の両輪であるとの考えに立って、東京と地方の人、モノ、情報等の双方向の円滑な流れを創出していくことが必要であり、第一の柱である「中小企業の再生による日本経済の再生」とあわせて、「東京と地方が共に栄える真の地方創生」の実現を東京商工会議所の活動の第二の柱としたいと思います。

 その重要な基盤となるのは、物流・人流の円滑化を促すための社会資本です。ストック効果を重視しながら、社会資本の整備や老朽化対策に関する政策提言・要望活動を積極的に展開してまいります。

 また、首都直下地震、河川の氾濫や土砂災害への対応など都市防災力の向上は喫緊の課題といえます。今期、「災害対策委員会」を新たに設置し、民間サイドの意識向上など東京の都市防災力の強化に取り組んでまいります。

 震災復興の加速化と福島再生の早期実現も、引き続き重要な課題です。東日本大震災から5年7か月が経過いたしましたが、被災地では基幹産業の売り上げ回復の遅れや風評被害などが足かせになっており、従来以上にきめ細かい支援が必要です。東京商工会議所では、引き続き、会員企業とのネットワークの活用や全国515商工会議所との連携を通じて、震災復興の加速化と福島再生を推進してまいります。


4.2020年 東京オリンピック・パラリンピック大会の成功に向けて

 リオ大会における日本選手団の活躍は国民に大きな感動をもたらし、2020年東京大会への期待を高めることにつながりました。この東京大会は、日本の文化、観光、技術、特産品など各地域の魅力を全世界にアピールする絶好の機会であります。

 2020年東京大会に向けて、そして2020年以降も見据えて、自分たちの地域をいかに活性化させるか、街の魅力をいかに高めていくか、各業界の発展にどのように取り組んでいくか、リオ大会が終わった今、いよいよ具体策をまとめ実行に移す時がきました。そのため、今期、「オリンピック・パラリンピック特別委員会」を設置いたします。

 23支部や各業界はもちろんのこと、全国515商工会議所、さらには経済三団体が中心となって設立した経済界協議会などが一丸となったオールジャパン体制のもとで、大会組織委員会、政府、東京都と連携し、機運盛り上げに努めてまいります。

 加えて、東京は世界で初めて2回目のパラリンピックを開催する都市であり、パラリンピックの成功なくして2020年大会の成功はあり得ません。パラリンピックを一つの契機として、ハード・ソフト両面のバリアフリーやユニバーサル社会を実現する必要があります。その観点で、心のバリアフリーを推進する「声かけ・サポート運動」などをさらに積極的に展開してまいります。


5.東京商工会議所の活動指針(絶えざる進化)

 私は、会頭就任後、各支部を担当する副会頭とともに、支部を訪問し支部役員の皆様や会員企業の方から話を伺いました。創意工夫によって課題解決を図り、力強く成長する中小企業の経営者の方や地域の活性化に真正面から取り組んでいる方々と幾度となく接することができました。いずれの場面においても、支部が地域の期待に応えるべく、積極果敢にリーダーシップを発揮しており、改めて商工会議所が果たす役割の重要性を実感いたしました。

 今期につきましても、会員企業と丹念に対話を重ねる「現場主義」と、東商の活動を丁寧に説明し商工会議所の案をひとつにまとめる「双方向主義」を同時に実践してまいります。また、会員企業との接点の最前線となる23支部と本部の連携強化を徹底していきたいと思います。

 会員企業との接点をさらに強化するとともに、会員目線を徹底した事業運営を行い、満足度向上につながる活動を展開してまいります。また、東商が実施している様々な活動を会員のみならず、国や東京都、他の経済団体などをはじめ、学生や市民に至るまで、より多くの方に知っていただくべく、発信機能の強化を図り、「商工会議所活動の見える化」にも取り組んでまいりたいと存じます。

 2018年に東商は創立140周年と新東商ビル竣工という大きな節目の年を迎えます。東京商工会議所を創設し、我々の精神的な支柱である渋沢栄一翁は、「民の繁栄が国家の繁栄につながる」という信念のもと、民間が自律的に力を発揮すべきと繰り返し述べました。今こそ、渋沢栄一翁の精神に立ち返り、デフレマインドを払しょくするとともに、われわれ企業経営者が将来に自信を持ち、新しい時代にふさわしい行動を積極的にとることで、次の150周年に向けたさらなる飛躍につなげていきたいと存じます。


6.むすびに

 東京商工会議所のミッションは、「会員企業の繁栄」「首都・東京の発展」「日本経済の発展」の3点であり、しかもこの3点は同一方向を向いていることが極めて重要であります。会員企業の繁栄のための諸提案も日本経済の発展につながるものでなければなりません。

 意欲と潜在力を秘め、環境変化に対する柔軟な対応のできる中小・小規模企業への経営を支援する政策提言活動、経営支援活動を強力に展開してまいります。

 そして、商工会議所の強みである、全国515商工会議所、海外の商工会議所、関係団体とのネットワークを最大限活用して、日本経済の持続的な成長に向け、私も先頭に立って全力を尽くしてまいる所存です。

以 上

2016年11月1日
東京商工会議所
会頭 三村 明夫

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