東京商工会議所

株式会社FinCube

全員参加のミーティングで全社的な健康経営の体制を確立
もともと高かった従業員の健康意識がさらに向上

  • 組織・体制づくり
  • PDCA
  • 食生活
  • 睡眠

株式会社FinCube

本社: 東京都渋谷区代々木1-57-2 ドルミ代々木205

代表者名: 代表取締役 長谷部 真奈見 氏

設立: 2017年

従業員数: 10名

事業内容: ファイナンシャルプランニング、保険代理店

  個人・企業向けに財務コンサルティングを行い、保険・証券・不動産など金融商品の提案を行う。

専門家派遣制度を利用した期間

2021年6月~2021年12月

支援専門家

社会保険労務士

専門家派遣制度を利用したきっかけ

創業以来実践してきた健康経営を社内外に発信していきたい。また、コロナによる従業員の健康への影響を把握したい。

個人、法人の双方を対象に財務コンサルティングを行うFinCube(フィンキューブ)。家計や資産形成、相続、企業財務における課題を整理しながら、保険・証券・不動産といった多様な金融アドバイスを提供している。
代表取締役の長谷部真奈見氏は、証券会社勤務からアナウンサーに転身、現在、経済キャスター、ファイナンシャルプランナーとしても活躍する多彩な経歴の持ち主だ。そうした経験の中で、ビジネス・経済関連のメディアに出演する機会も多く、「健康経営」については、以前から知っていたという。
「会社を立ち上げる前から『健康経営』の考え方には共感していました。特に当社のようなコンサルティング会社の場合、製造業などとは違い、大きな設備投資などは必要ありません。とにかく投資すべきは『人』です。ですから、従業員が健康に、かつ働きやすい環境を整える経営を行うということは、当然のことだと考えて実践してきました」(長谷部氏)
その言葉の通り、健康診断の100%実施、ストレスチェックの実施など、これまでも従業員の健康を第一に考えながら経営を行ってきていた。
「ただ、昨今はどこの企業も、ビジョンやミッション、SDGsに関する取組などを、社外に広報していますよね。提供するサービスだけでなく、その企業の社会的意義が重視される時代に変化してきたと思います。そのため、これからは、当社がどんな会社で、どんな思いでサービスを提供しているのか、また、それに付随する自社の取組を社外に向けてしっかりとPRしたいと考えました。PRすることが当たり前の時代なのだなと。ちょうど自社サイトを刷新するタイミングでもあったため、当社が健康経営に取り組んでいることの証という意味合いで、健康優良企業『銀の認定』を取得したいと考えました」(長谷部氏)
そんな時に、専門家派遣制度のチラシを見て、健康経営の専門家からのアドバイスをもらうべく申し込みに至った。
また、コロナ禍でテレワークが増え、従業員と顔を合わせる機会が減ってしまったことも、専門家派遣を利用する理由の一つになった。
「リモートワークにより仕事のやり方が変わったり、コミュニケーションが減ったことが従業員のストレスに繋がっていないか、また食生活が乱れていないか、運動不足になっていないかなど、気になっていました。専門家によるアドバイスを実践する過程で、従業員と健康について話し合えれば、従業員の状態を知る良い機会になると考えました。さらに、これまで従業員に対しても特に宣言することなく行ってきた健康経営ですが、改めて、私がどのような思いで経営をしているのかを社内に向けて伝える良い機会にもなると思いました」(長谷部氏)

代表取締役 長谷部 真奈見 氏
代表取締役 長谷部 真奈見 氏
専門家派遣による支援と取組
  • ● 健康経営推進のための体制づくり
  • ● 全員参加の健康経営ミーティングの開催
  • ● 協会けんぽの実施する睡眠セミナーを全員で受講

専門家の太田広江氏(社会保険労務士)は、同社の今までの取組を高く評価しながら、健康優良企業「銀の認定」に向けては、それをより従業員を巻き込んだ全社的な取組とすることが重要だとアドバイスを行った。
それを受け、まずは長谷部氏から従業員に向けて、健康経営の推進を宣言。健康経営に取り組んでいくための社内体制を整えるべく、東京本社は長谷部氏と社員の有馬氏が健康づくり担当者となり、盛岡にある支店からも2名を選任した。通常、各事業所に1名いれば問題ない健康づくり担当者だが、盛岡支店で働く2名は子育て中の母親ということもあって、通常業務の負担にならないよう、2名で担当する体制をとった。
従業員に対して健康経営の推進を宣言した際の反応は、好意的なものだったと、有馬氏は振り返る。
「当社は業務の一環で、お客様に保険のご案内も行います。もともと、お客様に健康をお薦めする立場なのです。健康の大切さは日頃から十分理解しているため、自分たちの健康を気遣う健康経営は、すんなり馴染みました。また、生命保険や医療保険をご案内するのに際して、取引先の保険会社から健康に関連するセミナーを受ける機会もよくあり、普段から健康への意識は高い会社ですので、それも健康経営が好意的に受け入れられた理由だと思います」(有馬氏)
その上でスタートしたのが、「健康経営ミーティング」だ。これまで、東京の本社と盛岡の支店を繋いで、1週間に2度行っていたオンラインミーティングのうち、1月に1回は「健康経営ミーティング」と題して、健康に関する話し合いに充てることにした。
ミーティングの議長は、健康づくり担当者の4名が毎月持ち回りで担当。どんな健康情報を提供していくかは、あらかじめ年間の企画を決めて取り組んだ。従業員全員が健康に関わる目標、例えば通勤時にエスカレーターを使わない、週に数回ジムに通うなどを各自設定し、その達成度や進捗などを発表し合うことにした。また、従業員の中で料理が得意なメンバーには、『食生活のワンポイント』というコーナーを設け、情報を提供してもらうようにするなど、従業員が積極的に参加しやすいよう工夫した。
その他、協会けんぽが無料で提供している健康づくりオンライン講座を活用し、睡眠に関するセミナーを全員で受講。睡眠の必要性や役割、また快眠のためのエクササイズなどを学んだ。

健康経営ミーティングの議事録
健康経営ミーティングの議事録
協会けんぽが提供する無料セミナーを活用して、従業員の健康意識の向上を図った
協会けんぽが提供する無料セミナーを活用して、従業員の健康意識の向上を図った
取組による効果、今後の展望
  • ● 健康優良企業「銀の認定」を取得し、社外へも発信できた。
  • ● 健康経営ミーティングを機会に、社内のコミュニケーションが活性化した。
  • ● 従業員の健康に対する意識がさらに高まった。

従業員が一体となった取組が奏功して、2022年2月に健康優良企業「銀の認定」を取得した。
「無事に認定が取得できて、ほっとしました。認定取得はHPに掲載したり、また当社のお客様にお送りするメールマガジンでも発信させていただきました。メールマガジンを読んで、健康経営に興味を持ったという経営者の方にご連絡をいただいたりもしました。これまでも企業文化的に人を大事にしてきましたが、それを明確に言葉にして社内外に伝えていく、良いきっかけになったと思います」(長谷部氏)
社外からの反応もさることながら、取組を通じて、これまで知らなかった従業員の魅力を知ったことが、専門家派遣による取組をやって良かったと感じた一番のポイントだという。
「それまで行っていたミーティングは、営業報告がメインのため、業務の話ばかりになってしまいますし、特にバックオフィスを担当する従業員は発言の機会が少ないことが気になっていました。それが、全員に共通する『健康』をテーマに話し合うとなると、たくさん発言してくれます。その結果、私が知らなかった従業員の一面が見えて、本当に取り組んで良かったと思います。料理が得意な人もいれば、ヨガが得意な人もいて、健康だけでなく趣味や得意なことなどプライベートなことを話すきっかけにもなりました。とても良いコミュニケーションの場になりました」(長谷部氏)
今後も、従業員の健康への意識を維持していきたいと長谷部氏。
「普段の業務ミーティングの中でも、『グッド&ニュー』と言って、その週の良かったことや新しい出来事を、活動報告とともにシェアする時間があるのですが、その中でも『毎日筋トレができた』とか『栄養バランスを考えた食事ができた』とか、健康に関する一言がよく出てくるようになりました。何か特別な取組をせずとも、そういう形で健康に関する情報をシェアしたり、議論したりすることができたら良いなと。一連の取組で高まった健康への意識をキープしていけたらと思います」(長谷部氏)
あえて健康経営ミーティングと題して時間を取らずとも、普段のミーティングの中でも、健康に関する話題が自然と出てくる。それこそ、同社に健康経営が浸透している証拠だと言えるのではないだろうか。

2022年2月に「銀の認定」を取得
2022年2月に「銀の認定」を取得

健康経営エキスパートアドバイザーより

  • 初回訪問時に長谷部社長とお話をさせていただいた際に、社長の健康への取組に対する意識の高さを感じました。
    また、お仕事柄、健康に関する知識や大切さについては良くわかっていらっしゃることもあり、健康経営に関する基本的なお話がしやすかったです。
    一方で、長谷部社長自ら、健康づくりへの中心的な役割を果たしていくことは重要ですが、従業員を巻き込んで従業員自らが健康づくりに積極的に参加できるような社内体制の確立が必要だと感じました。
    健康づくりの社内体制の確立、食生活改善・運動促進について、具体的な取組事例をご紹介するとともに、社内でどのようにすれば取り組みやすいかを会議の場で、話し合っていただくようにしました。
    目標を決め、取組をした結果、うまくいかない場合は、再度、改善しPDCAがうまく回っていくことで、より良いものになることをお伝えしました。
    認定制度については、社内で実施していることがそのまま認定を満たす要件として繋がっていくので、不足している健康づくりについての取組があれば、アドバイスをするようにしました。
    社内で健康づくり体制を整えたことで、毎月定例の「健康経営ミーティング」が始まり、健康づくりの話し合いが実施される様になりました。
    そのミーティングでは、従業員自らが講師となりストレッチの実施や健康に良い食事についての研修を行い、運動不足解消、食生活改善、それにプラスして、従業員同士のコミュニケーションも図ることができているようで、皆さん積極的に楽しく取り組まれている印象を受けました。
    長谷部社長及びメインとなる健康づくり担当者である有馬さんが従業員へのフォローを細かく実施されていたので、従業員の皆さんが健康づくりへの取組の促進が図れたと感じました。
    少人数ということもあり、社内のコミュニケーションが日頃から良く取れていることや、ヨガインストラクターや料理研究家など、健康づくりを推進するための豊富な人材が社内にいるという素晴らしい環境だったことも良かったところだと思います。
    健康経営は、認定が取得できたら終わりというものではなく、継続していくことで効果が高まっていくものです。今までの取組を続けつつ、さらに良い取組があれば、追加改善していくことで、楽しく働きやすい職場環境を持続していっていただければと思います。
  • 太田 広江 氏(社会保険労務士)
(取材:2022年12月)