東京商工会議所

株式会社コンピュータテクノロジー

既存の定例会議を、健康づくり会議に
離れていても従業員の健康を気遣う取組を推進

  • 組織・体制づくり
  • 健康診断
  • 食生活
  • 運動
  • メンタルヘルス

株式会社コンピュータテクノロジー

本社: 東京都千代田区神田小川町2-1

代表者名: 代表取締役社長 武川 英二 氏

設立: 1984年

従業員数: 65名

事業内容: ソフトウェア開発、電子計算機の運用管理、通信・ネットワークシステムの構築・導入及び保守

 システム企画からソフトウェアの開発・運用・保守まで幅広く行う。基幹業務のプログラム作成や、通信システム(電話やLAN配線)の導入・保守などのサービスを提供している。

専門家派遣制度を利用した期間

2021年1月~2022年3月

支援専門家

中小企業診断士

専門家派遣制度を利用したきっかけ

様々な契約先企業に常駐している従業員の多い自社でも始められる健康経営の取組を知りたい。

システム企画からソフトウェアの開発・運用・保守、さらに電話やLAN配線など通信システムの導入から保守まで幅広く手掛ける株式会社コンピュータテクノロジー。従業員はシステムエンジニア、プログラマー、電気・通信技術者などで構成され、その多くが契約先企業に常駐し業務を行っている。
同社総務部長の前田量穂氏は、保険会社の担当者から健康経営を紹介された。前田氏は、次のように当時を振り返る。
「その時は『健康経営』についても、その認定制度である『健康経営優良法人』についても、全く知識がありませんでしたが、調べたところ、健康経営は従業員の健康に繋がる素晴らしい取組であること、また、様々な企業様が健康経営を進めていることを知りました。そこで、当社においても、健康経営の取組が会社の信頼度や認知度の向上に繋がるのではないかと考え、代表の武川英二に相談したところ、『健康経営を進めて、最終的には健康経営優良法人認定の取得を目指そう』と言われました」(前田氏)
しかし、「具体的に何をどこから取り組んでいいのか分からない状態でした」と前田氏。そんな時、保険会社の担当者からもらった専門家派遣のパンフレットが目にとまり、健康経営の始め方、進め方を教えてもらうため、同制度に申し込むことにした。

総務部長 前田 量穂 氏
総務部長 前田 量穂 氏
専門家派遣による支援と取組
  • ● 社内会議「チームビルディングミーティング」を活用した健康情報の提供
  • ● 健康診断、人間ドックの受診勧奨の徹底
  • ● 健康に関する情報のメール配信
  • ● 従業員の月報(業務報告書)に、健康状態を記入する項目を追加

専門家の山本聡氏(中小企業診断士)は、前田氏と面談し、同社の状況をヒアリングするとともに、まず、健康経営とは何か、丁寧に解説した。
それを踏まえ、同社が健康経営の推進に活用したのが、「チームビルディングミーティング」という社内会議だ。これは全従業員が参加するオンラインミーティングで、2〜3ヶ月に1回、定期的に開催しており、全社で共有すべき内容、特に同社にとって重要な情報セキュリティ関連の最新情報などを報告する場になっているものだ。本ミーティングで、健康経営に関する情報提供を行うことにした。
「当社の場合、従業員の多くが契約先企業に常駐して業務を行っており、全ての従業員が同じオフィスで働いているわけではないため、例えば掲示物などで健康に関する情報を提供するというのは難しい状況でした。また、従業員ごとに、業務スケジュールや忙しさも異なるため、全員参加でセミナーを開催するといった取組も難しいと感じていました。そこで、すでに行っているミーティングに『健康』をテーマの一つとして加え、話し合うことで、従業員の健康意識の向上に繋げることを目指しました」(前田氏)
本ミーティングでは、食事や運動、禁煙、メンタルヘルスといった情報を提供することに加えて、健康診断、人間ドックの受診の重要性の周知も行った。同社の場合、一般健診は会社で枠を取り実施するためほぼ100%に近い受診率だったが、40歳以上に推奨している人間ドックコースは、各自が予約し受診するということもあってか、受診率は60%にとどまっていた。そのため、情報提供とともに前田氏からも個別に声かけを行うなどの取組を行った。
さらに、同様の情報をメールでも配信し、食事や運動、禁煙、メンタルヘルス、感染症対策に関わる情報や、社内でメンタルヘルスの相談窓口を設置していることを改めて知らせるなどした。
また、従業員が日常的に健康を意識するよう、月報(業務報告書)に健康状態の項目を追加し、各自に記入してもらうようにした。

従業員向けに配信したメールの一例。加入している東京都情報サービス産業健康保険組合(TJK)の情報を活用
従業員向けに配信したメールの一例。加入している東京都情報サービス産業健康保険組合(TJK)の情報を活用
取組による効果、今後の展望
  • ● 健康優良企業「銀の認定」を取得することができた。
  • ● 適切な情報提供と声かけにより、人間ドックも含む健康診断の受診率が100%になった。
  • ● 月報での健康状態の記録により、健康経営の考え方が従業員に浸透してきた。

一連の取組が奏功して、2022年7月には「銀の認定」を取得。現在は、「健康経営優良法人」認定の取得を目指している。さらに、定期的な情報提供や前田氏による個別の声かけにより、人間ドックも含む健康診断の受診率は100%になった。
今後の課題は、飲酒量の改善、メンタルヘルスへの対応だと言う。飲酒量については、「健康診断の結果から、肝臓の数値がよくない従業員が目立つ」と前田氏。飲酒は個々の生活習慣や意識に関わってくるため、企業側からの声かけだけではなかなか改善が難しいとは思われるが、情報発信を繰り返すことで改善を目指す。メンタルヘルスに関しては、実はIT企業を含む情報通信業はメンタルヘルス不調者が多いと言われており、同社でも1年に1〜2名ほど、中長期で休職する従業員がいる。すでに行っているストレスチェックや、相談窓口を活用しながら、従業員の心の健康をサポートしていく構えだ。
その他にチャレンジしてみたい取組として、前田氏が挙げたのがウォーキングイベントだ。歩数をカウントするアプリを活用して、「従業員個々人の歩数や、またはチームをつくって歩数を競うなど、全社的に取り組むイベントを開催してみたいですね」と前田氏。前述の通り、なかなか従業員が一堂に会することが難しい同社だが、アプリを活用したイベントであれば比較的実施しやすそうだ。座り仕事が多い業務における課題である運動不足の解消に加え、全社的なコミュニケーションの活性化にも繋がるのではと期待している。
同社の健康経営の取組はまだ始まったばかりであり、現時点では、従業員の健康意識が向上した、とは言い切れない様子だ。ただ、「月報に健康状態を記入することが自身の健康を振り返る機会にもなっていますし、会社が健康経営を推進していることは伝わっていると思います」と、前田氏。今回の取組を通じて整えた、健康経営を推進するための社内体制を利用しながら、今後も取組を継続して、従業員一人ひとりの健康意識の向上を目指していく。「最終的には、同社に根付く情報セキュリティの重要性への意識と同じくらい当たり前のものとして、健康への高い意識を根付かせられたら」と熱く語ってくれた。

2022年7月に「銀の認定」を取得。次は「健康経営優良法人」の認定を目指す
2022年7月に「銀の認定」を取得。次は「健康経営優良法人」の認定を目指す

健康経営エキスパートアドバイザーより

  • 同社の社員の多くは契約先企業で働く客先常駐の形態で仕事をしているため、この働き方の特性を踏まえた健康意識の向上が課題の一つであると考えました。
    客先常駐という働き方のもとに構築されている既存の仕組みを活用して、社員が折に触れ健康を意識するような取組をお勧めしました。下記①~②はそういった取組の一例です。
    ①同社が考えたことの一つが、チームビルディングミーティングという部内会議の時間を使って、健康をテーマに話し合うようにしたことです。話し合いの場を新たに設定することは社員の負担や継続性に懸念がありますが、既存の会議をうまく活用することで、その点をクリアできたと思います。
    ②月報(業務報告書)に、健康状態を記入する項目を追加しました。社員が業務として毎月提出している月報に健康に関する項目を組み込むことで、社員が健康について定期的に考える習慣付けになりますし、健康に関する情報が上司と共有され、会話のきっかけにも繋がると思います。
    これらはいずれも既存の仕組みをうまく活用したもので、客先常駐という働き方においても健康意識の向上が期待できる、よく考えられた取組だと思います。
    このように組織や業務の元々ある仕組みの中に取組を組み込むことにより、社員や活動推進者の大きな負担にならないようにしたこと、また社員の抵抗感も最小限に抑えられたことが、うまく導入できたポイントだと思います。これらの取組は、会社としての姿勢を社員に示すことになるだけでなく、日常業務の中で折に触れて接することになりますから、社員の意識向上にも繋がり、また継続性も期待することができると思います。
    今後も工夫と改善を重ね、興味を持っていなかった社員を少しずつ巻き込んで、多くの社員の皆様が健康に関心をもっていただけるような活動を推進されることを期待しております。
  • 山本 聡 氏(中小企業診断士)
(取材:2022年12月)