採用氷河期の人材獲得戦略

第2回 集めて選ぶ、効率的なセレクション採用

2017年7月4日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2016年12月20日号

成長・充実を目指す企業にとって、必要な人材の確保が経営のボトルネックとなりつつあります。これは単なる好景気での人手不足ではなく、構造的な人材難時代、「採用氷河期」を迎えたことが原因です。企業がそれをどう乗り切っていくか、その方法について解説します。

セレクション採用のプロセス


 前回、逆境下で採るべき2つの戦略として、採用力強化戦略と採用対象拡大戦略があると述べたが、採用力強化戦略にはさらに2つの方向性がある。それは従来から新卒採用などで行われている、集めて選ぶ形式の「セレクション採用」と、近年増えてきた個別接触やつながりで口説きに行く、攻めの活動である「ダイレクト採用」。今回はセレクション採用について説明する。

 セレクション採用は一定のプロセスを経て行われるので、その各段階をレベルアップさせていけば全体の効果が高まり採用力強化につながる。採用のメディアなどで形成した応募母集団から選ぶマスマーケティングでのやり方といえる。特に新卒採用では主流とされてきたやり方で、広告費などのコストは掛かるが効率的であり、インターネットの活用により緻密な設計や対象別の複線型の対応などへ移行されてきた。メディアを出して待ち受けるプル型マーケティングの採用である。
 現在のような採用氷河期と言える環境下で採用を成功させるには、戦略的な活動が求められる。戦略的とは競争に勝つことや目的を達成することに対して、最適な資源配分をしながら実行していくような組織的な取り組みである。そのためには目的を達成するための採用活動のプロセスの設計が重要になる。採用のプロセスは以下のように、大きく5段階に分けることができる。
①採用活動前:採用活動を行う前に、求める人材の質・量の設定や採用予算やスタッフなどの資源配分、活動を成功に導くための準備全般を行わなければならない。自社の条件に合わせた戦略を立案しておくこと。
②アプローチ:求職者へのアプローチにはメディア、求人票、イベント、紹介など多様な方法が考えられる。できるだけ多くの方法を用いた方が、効果が高まってくる。採用プロセスのベースとなる重要な活動であるが、応募者が集まらないという悩みが最も多い。
③理解促進・関係作り:アプローチした求職者に対して、自社理解を促進して次の選考過程に結びつけなければならない。できるだけ関係性を創っていくことが採用成功に結び付く。他社に逃げられないように、説明会やリクルーターの情報提供による相互理解や動機付けなどが必要となる。
④採用選考:選考活動は面接を中心に行われるが、ミスマッチを避けるためにも多様な選考活動を検討すべき。採用選考は企業と応募者がお互いに選び選ばれるものであり、企業としては選考すると同時に、選ばれるために応募者を惹きつけていく必要がある。
⑤内定とフォロー:内定は採用の詰めの段階と言え、ここで逃げられてしまっては、それまでの努力が水泡に帰す。特に新卒の場合は多くが複数企業の内定をもらっているので、学生をめぐる企業間の綱引きが行われることになる。


 

 

各プロセスの強化による採用力アップ


 そのようなプロセスを見直して、各段階での活動をレベルアップさせていけば、採用力全体の強化につながる。強化のポイントは応募者を集めるための採用ルートの拡大、さらにそのルートを利用して自社らしい魅力を発信することである。多くの企業にはその段階での改善の余地があるが、求人票に書く情報や表現方法を見直していくなど、費用を掛けなくてもできることもたくさんある。応募者の獲得が難しい現状では魅力発信を工夫して効果を高めるとともに、各段階での活動の質を上げていくことで応募者の歩留まりを上げ、採用結果に結びつけることを目指そう。





執筆者:原 正紀(はら・まさのり)
クオリティ・オブ・ライフ代表、留学生支援ネットワーク理事、高知大学客員教授、成城大学講師。執筆、講演、公的機関委員会委員等実績多数。産学官にて人的課題を解決。

掲載:東商新聞 2016年12月20日号

以上