企業と従業員を守るメンタルヘルス

第2回 メンタルヘルスケアの全体像を知る

2016年8月9日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2015年10月10日号

職場のストレス問題が深刻化するなか、労働安全衛生法の一部を改正する法律が成立しました。2015年12月から、従業員50人以上の全ての事業所に対し「ストレスチェック」が義務化されたのに伴い、中小企業ではどのようなメンタルヘルス対策を構築すべきかについて、その実務を解説していきます。(全6回)

 どんな業務にも共通して言えることであるが、枝葉のことばかりに気を取られ、仕事の全体像が見えていないようでは、うまくいかない。「木を見て森を見ず」という状態になっている企業が、少なからず見受けられる。取り組む前に、ぜひ知ってもらいたいのがメンタルヘルスケアの全体像である。
 まず、土台となるものはCSRである。従業員の心身の健康管理を行うことは、公器としての責務であるという視点に立つ。そしてその上に乗るのが、コンプライアンス、労務リスク管理、生産性の向上である。
 コンプライアンスとしては、労働安全衛生法のみならず、基本的人権や安全配慮義務にも配慮したい。労務リスク管理では、労災はもとより、紛争、訴訟、損害賠償などを限りなくゼロに近づける努力である。そして、生産性の向上は言うまでもないが、健康でなければ稼げない、これはどんな企業にも当てはまる事実である。


法に準拠した社内ルールの策定


 ここまでが大義名分に当たる部分で、メンタルヘルスケアの実務が図だ。
まず、左側には、企業側が定めるルールが記してある。不調者が出るたびにバタバタとなるのは、あらかじめ決められたルールがないからである。どうしよう、どうしようと言ってぐずぐずするから、不調者はイライラし、会社のことを恨んだりするのだ。不調者を発見したら、すぐにベルトコンベアに乗ってもらえば、お互い紛争を起こす暇もない。不調者も企業側もストレスを感じないベルトコンベアをいかに作るかが考えどころである。
 ルールは5種類。産業医パッケージ、健診事後措置、過重労働者対応、休職規程、復職プログラムである。それぞれを使い勝手よく、誰が見てもわかりやすいマニュアルにまとめておくのが、ベルトコンベアづくりである。


 

 

メンタル対策は「業務」


 次に、図の右側は、健康な従業員に対して行うべき予防策だ。健康管理、メンタルヘルスケアの取り組みは、全社で共通の意識・知識を持つことから始まる。そのためには、教育研修やストレスチェックの企画立案及び実行、社内報での配布など、従業員を飽きさせない、多面的なアプローチが必要である。
 意識・知識が浸透してくると、不調を感じた時の相談窓口が必要になる。内部にカウンセラーを置くのか、外部のコールセンターに任せるのか、事情に合わせて検討が必要である。特に、ストレスチェックでリスクの高い従業員が、スムーズに専門家に相談できるよう、何らかの仕組みを用意すべきである。あと少し負荷がかかれば発病しかねない、「予備軍」の発見と手当こそ、コア業務である。
 あとは、時間外労働の削減やハラスメント防止などを実施して職場環境を整備する。図の右側に配置されたこれらの施策は、毎年の定例事項として定期的に行い、少しずつ研修内容などもグレードアップして、企業としてのレベルを向上させていくことができる。



執筆者:根岸 勢津子
プラネット社長。企業防衛の視点に立ったメンタルヘルス対策の専門家として上場企業70社を含む指導先は100社を超える。

掲載:東商新聞 2015年10月10日号

以上