中小企業のM&A

第2回 第三者承継(M&A)の概要

2015年12月15日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2015年5月10日号

M&Aを進める際の留意点や進め方、手続きなどについて紹介します。(全4回)

今回はM&Aを進める際の自社の評価額や進め方、留意点について解説します。

■M&Aにおける企業評価

 企業評価にも着眼点によって①市場相場に着目した手法(類似会社比準法)、②収益性に着目した手法(DCF法等)、③資産に着目した手法(時価純資産法等)という3つの評価手法があります。中小企業の場合には上場企業との比較が難しいことや、将来の精緻な事業計画が描きづらいため、比較的に客観性がありシンプルな・時価純資産法がよく用いられます。
 時価純資産法による評価では、貸借対照表の資産・負債の時価評価を行います。資産の時価修正項目として多いのは回収見込みの低い売掛金、不良在庫、含み損益のある不動産、有価証券、保険積立金などがあります。また退職金制度(ないし過去の給付実績)があり、現時点での引当相当額が簿外となっている場合には時価の負債として認識する必要があります。
 さらにのれん代(営業権)を企業評価に加味することもあります。優良顧客や高い技術力、取得の難しい許認可などがのれんにあたりますが、金額評価においては実質利益(損益計算書上の利益額+譲渡後に不要となる高額な役員報酬や交際費等)の数年分と計算することが多いです。
 そのように算出した〈時価純資産+のれん代=M&Aでの取引価格〉となります。

■M&Aの進め方

 M&Aを行なう際には一般的に以下のような流れで進めていきます。

①秘密保持契約
 M&Aにおいては情報漏えい等のリスクを回避するため情報管理が重要であり、社名や内部情報を開示する際には秘密保持契約を締結します。秘密保持の締結後、譲渡企業の決算書類・営業情報等の資料開示や質疑応答を実施し、譲受企業が分析・検討を進め、お互いの理解を深めます。
②基本合意書
 両当事者で条件面の目線が合ったところで基本合意書(M&Aの取引手法・金額・時期・役職員の処遇など記載)と呼ばれる仮契約を締結します。
③デュー・デリジェンス(DD)
 基本合意書の締結後、譲受企業がM&Aの最終決定を行うにあたり、弁護士・公認会計士等の専門家を用いて譲渡対象会社の実態を把握するために行う調査です。
④最終契約
 DDを経て最終的な取引条件が確定したら最終契約書(株式譲渡契約、事業譲渡契約等)を締結し、代金決済・重要物(株券等)引渡しを契約当日~近日中に行います。

■M&A業者の選び方

 M&Aの相手先探しと交渉にあたっては、当事者自らで探索・交渉する方法とM&A業者を利用する方法があります。
 M&A業者を利用する場合には、M&A業界は不動産業界のような許認可・公的資格が無いので、どのように適切な業者を見極めるかが重要です。主にM&Aの情報量、成約実績、手数料体系、サービス内容などを確認するのがよいでしょう。
 最も気になるM&A業者への手数料ですが、着手金と成功報酬の2段階で設定しているのが一般的です。業者にもよりますが、着手金として数十万円~100万円、成功報酬として最低500~1,000万円と設定している業者が多いです。
 M&Aを進める際の留意点をまとめると・後継者不在による譲渡の場合には、手遅れにならないよう早めに着手する、・情報漏洩に注意する、・M&Aの専門家を適切に選び、活用することが重要と言えます。
 次回以降、実際のM&Aの成功例・失敗例について解説します。


執筆者
東京都事業引継ぎ支援センター

掲載:東商新聞 2015年5月10日号

以上