社員、地域、顧客に必要とされる「おもてなし経営」とは

第3回 理念に沿った評価をしていますか?

2014年12月9日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2014年2月10日号

具体的な事例を交えながら「もてなし経営企業」のコツをご紹介します。(全6回)

■前回のおさらい「理念浸透」
 おもてなしとは、「裏表なく、真心を持ってよりよい人間関係を築くこと」であり、この考えを経営に取り入れている企業を「おもてなし経営企業」と呼びます。
 具体的には、①働く人、②顧客、③地域と、三者へのおもてなしを大切にしている企業で、その結果として業績もよく、さらに成長・発展していることが挙げられます。
 今回のキーワードは「評価」です。意外な言葉かもしれませんが、実はおもてなし経営と評価は、強い関係性があります。
 本題の前に、前回のキーワード「理念浸透」について簡単に振り返っておきましょう。
 理念の浸透とは、働く一人ひとりが会社のあるべき姿を理解し、自分たちは何を推進して何をしないのか、何を喜んで何を悲しむのかなど、自らの言葉で語り、行動に落とし込める状態のことです。
 皆が同じ方向を向いていますから、顧客や地域から信頼してもらえ、働く人同士も団結しやすい、まさにおもてなし経営企業に必須のキーワードといえます。

■評価が理念浸透のキー
 さて、ここで肝心になるのが「評価」です。実は、理念の浸透は正しい評価なしにはあり得ないのです。分かりやすい親子の例で考えてみましょう。親は子の幸せを願い、「優しい子になってほしい」、「愛される子になってほしい」と思うものですね。
 ところが、子どもがブランコを他の子に譲ってあげたときには何も言わないで、テストでいい点を取ったときだけ褒める。そんな親だったら子はどう育つでしょう。利己的な点取り虫になっても不思議はありません。要するにこの親は、願いとは真逆の評価をしているのです。

■理念と関係ない評価項目が多い
 お気付きかと思いますが、多くの企業でこれと同じことが行なわれています。
 理念は「お客さま満足度の追求」を挙げているのに、社員評価は売上高、契約数、学歴、性別など、理念とは関係ないことが主な項目になっている例は枚挙に暇がありません。
 頑張って売上を上げた人を評価するのはよいのですが、問題は「売上ばかり評価」することです。
 先の例で言えば、テストの点を褒めるのはいいですが、ブランコを代わってあげた優しさを、より褒めることが大切でしょう。テストの点よりも優しさのほうが、人から愛される要素になるはずです。
 お伝えしたいのは、企業も「人柄・人間力をしっかり評価しよう」ということです。今後、こういう企業がますます評価を高める時代に入るでしょう。

■正しい行動を正しく評価しよう
 あるおもてなし経営企業は、「お客さまの立場で心温かなおもてなしをする」ことを指針にしています。よって、年に2回行なわれる人事評価の項目には、「○○社の一員として、お客さまの立場で心温かなおもてなしをしたかどうか」が、「大変よくできた~全然できなかった」の5段階で問われています。
 ほかの項目では、「組織内で協力し合い、困っている人を助けたか」、「仕事の段取りを考え、無駄な時間の浪費を防いだか」、「チームの和を尊び、笑顔で働いたか」など、おもてなし経営の土台となる要素が盛り込まれています。まさに、理念と評価が2つでワンセットになっており、正しい行動が正しく認められる仕組みができています。だからこそ士気が保てるのです。
 理念と評価は、錠と鍵のようにどちらか一方だけでは意味を成しません。両方そろってこそ、社員の心も開くのです。


執筆者
ジャーナリスト・中小企業診断士・経済産業省おもてなし経営企業選選考委員 瀬戸川 礼子

掲載:東商新聞 2014年2月10日号

以上