社員、地域、顧客に必要とされる「おもてなし経営」とは

第2回 理念が浸透していますか?

2014年12月2日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2014年1月20日号

具体的な事例を交えながら「もてなし経営企業」のコツをご紹介します。(全6回)

 ■理念とは何か?
 「おもてなし経営」とは、裏表のない真心で、①働く人、②地域、③お客さまの三者の幸せを追求する経営であり、結果として業績がついてくるものだということを1回目で書きました。また、そうした経営には共通のキーワードがあることも事例を挙げて紹介しました。
 今回は、共通キーワードの中でも基本中の基本「理念の浸透」を取り上げたいと思います。
 それではまず、「理念とは何か?」から考えていきましょう。言葉にはそれぞれ深い意味があり、分かりやすく説明できれば浸透もしやすくなります。「理念」とは、ご存じの通り「あるべき姿」のことですが、実はもう一つ、大事な意味があります。それは、「あるべき姿に到達するための根本的な考え方」です。

■考え方を具体化して浸透
 多くの会社を見ていると、理念が浸透していない会社は理念を明文化したところで止まっています。一方、理念が働く一人ひとりに浸透している会社は、明文化してさらに「考え方の浸透」に心血を注いでいるという違いがあります。これが、おもてなし経営ができるかどうかの最初の分かれ道です。
 一人の人間で考えてみましょう。人間のあるべき姿は「幸せになる」こと。世界中の人がそう思っています。しかし、考え方は違います。「お金持ちになれば幸せ」、「病気が治れば幸せ」、「結婚」、「昇進」、「平和」など定義はまちまちで、行動も異なってきます。私的な個人レベルならどう考えようと自由ですが、これが公的な組織レベルだとしたら、どうなるでしょう。行動がちぐはぐな会社になることは火を見るよりも明らかです。しかし、この状態に気づかない会社が意外と多いのです。
 理念は壮大で捉えにくいですから、「当社は具体的にこういうことを推奨します」と、手を替え品を替え、日々、考え方を伝えることは重大な仕事でもあるのです。
 そうすることで、間違った道をふさぎ、全員を一つの正しい道に導くのです。力を結集すれば、製品・サービスの向上も可能ですし、顧客や地域から見たときにも、あの会社はまとまりがあると、信頼してもらえます。

■ネイルのできる自動車教習所
 たとえば、ある自動車教習所では、スタッフがアロハシャツを着て出迎え、待ち時間にネイルやハンドマッサージなどを100円で受けることができ、1万人が集まる夏祭りなど大イベントを恒例にしています。
 一見、本業とは無関係に感じますが、この教習所は「共尊共栄」と「一生の思い出づくり」があるべき姿なので、すべて理に叶っているのです。スタッフ同士、スタッフとお客さま、会社と地域など、どの関係にも有益な取り組みといえます。
 ときどき、免許を取る予定のない近所の高齢者がロビーに遊びに来ると、スタッフは優しく対応します。あるべき姿に則っているので誰も咎めませんし、笑顔で交流する様子はスタッフにとっても、顧客である教習生にとっても、思い出に残る温かな場面になっているのです。

■毎朝10分間の朝礼で確認
 この自動車教習所では毎朝、全部署が一カ所に集まって朝礼を行ないます。10分間の中で、理念の唱和をはじめ、どうすればもっと理念を具現化できるか意見を出し合ったり、褒め合ったり、全員が握手する場を設けています。これは「共尊共栄」の一環であり、「考え方」の浸透にもなっています。
 われわれはどこに向かっていくのか、地道に毎日確認し合うことが、理念浸透の一番の近道であり、信頼される会社の土台になるのです。


執筆者
ジャーナリスト・中小企業診断士・経済産業省おもてなし経営企業選選考委員 瀬戸川 礼子

掲載:東商新聞 2014年1月20日号

以上