始めよう!知的資産経営 自社の強みを“見える化”

第4回 知的資産経営報告書の作成事例(その2)

2014年7月18日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2013年5月10日号

知的資産経営とは、知的資産(=「強み」)を把握し、それを活かして業績(企業価値)向上に結びつける経営です。知的資産経営報告書の作成とその活用事例について紹介します。(全5回)

1. 株式会社ハヤシ配送サービスの報告書作成事例
 今回は、ハヤシ配送サ-ビス(林秀行社長)の事例をご紹介します。
 同社は、墨田区でトラック運送業を営んでおり、従業員は70人です。アパレルセレクトショップの配送を得意とし、配送だけでなく商品検品・流通加工までを請け負っています。
 知的資産経営報告書の作成にあたっては、中小企業診断士の長島孝善氏が支援しました。

2. 荷主とともに成長
 同社は、主要荷主であるA社の好調な業績に支えられ、そのニーズに応えることで成長してきました。これまで、様々な課題を乗り越えながらきましたが、ここで一度立ち止まって自社を見つめ直すことにより、経営ビジョンを再構築するきっかけになればと、知的資産経営報告書の作成に取り組みました。

3. 幹部全員参加で作成
 知的資産の「見える化」には、SWOT分析(外部・内部環境分析)が効果的です。同社ではこれを社長・副社長と管理職の5人によるグループワークで取り組みました。社長1人でなく、幹部全員で会社を見つめ直したいという思いからでした。

4. ビジネスモデルが強み
 同社の最大の知的資産は、セレクトショップの商品荷受けから検品・流通加工、店舗配送に至るまでの、サプライチェーン全体の物流を請け負うビジネスモデルです。
 この強み=知的資産は、さらに次のような知的資産で支えられています。
●流通加工を担う熟練工
●サービスドライバーの高いスキル
●荷物管理ITシステム
●徹底した検品体制
●荷主業務を熟知した業務受託体制
●協力会社ネットワーク
 また、トラック運送業者として、安全運転の徹底、環境貢献の2点を基底に置いており、これも同社の重要な知的資産となっています。
 なお、知的資産はKPI(重要評価指標)を定めて管理することが望ましいとされていますが、同社では設定していません。今回が初めての作成であり、まずは自社を「見える化」することで、今後の戦略の方向性を明らかにすることを目標としたからです。

5. 報告書作成の成果
 知的資産経営報告書を作成した最大の成果は、今後の経営戦略の方向性が次の通り明確になったことです。
●検品・流通加工業務の業務標準の確立(強みの強化)
●ビジネスモデルを活かした業務領域拡大(成長戦略)
●人事制度の抜本的見直し(課題の解決)
 また、「見える化」したことで「見せる」ことができるようになり、パートを含む全従業員、取引先、新卒入社希望者などに積極的に報告書を配布しています。
 林社長は「知的資産は礎(いしずえ)であり、他社と差別化できる付加価値である。戦略的に活用することで業績にも好影響があると確信している。設立30年が経過した今、初心に戻り新たな成長に向けスタートしたい」と語っています。
 なお、東京商工会議所では、同社をはじめとした事例を含め、以下のサイトで知的資産経営をご紹介しています。
http://www.tokyo-cci.or.jp/chitekishisan/

 次回は、ソフトウェア企業の知的資産経営報告書の事例を紹介します。


執筆者
中小企業診断士 土田 健治

掲載:東商新聞 2013年5月10日号

以上