経営に役立つフレームワーク

第3回 PSM分析 

2013年10月8日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年12月10日号

事業の分析や戦略づくりに役立つ代表的なフレームワークを紹介します。(全7回)

 価格決定はマーケティング戦略上、最も難しい問題の1つです。なぜなら商品が良くても、消費者から見た場合にちょっとだけ高かったせいで、みすみすヒットを逃す場合もあるからです。逆に、消費者の予算よりも安めに設定しすぎて、いくら売れても儲からないというケースもあるでしょう。価格決定はいつも頭を悩ませる問題ですが、これをもし論理的に決められれば、大変便利ですよね。
 PSM分析(Price Sensitivity Measurement=価格感度分析)は「できるだけ高く売りたい」企業側のニーズと、「できるだけ納得できる価格で買いたい」消費者のニーズを、両方とも充足させる適正価格を探るためのツールです。

 PSM分析では想定顧客にアンケート調査を行って顧客の「価格に対する感じ方」を統計化します。アンケートはシンプルで、次の4つの質問だけです。

Q1.あなたは、この商品がいくらから「高い」と感じ始めますか?

Q2.あなたは、この商品がいくらから「安い」と感じ始めますか?

Q3.あなたは、この商品がいくらから「高すぎて買えない」と感じ始めますか?

Q4.あなたは、この商品がいくらから「安すぎて品質に問題があるのではないか」と感じ始めますか?

 分析は簡単です。Q1からQ4までの価格について累計のパーセンテージを計算して、右図のようにグラフ化します。ふつうはQ1と3は右上がり、Q2と4は右下がりのグラフになります。そうすると4つの交点ができますが、これがPSM分析で発見できる4種類の価格なのです。以下、この4つの価格の意味を解説しましょう。
 まず、Q2とQ3の交点は、利益は高いが、これ以上高いと誰も買わない「上限価格」。上限価格は利益率が高いので企業としては良いのですが、買い手にとってはギリギリの価格です。この価格設定が成立するケースはブランド力やプレミアム性が高い高級品、プロ用のオンリーワン商品などに限られます。
 次に、Q1とQ2の交点は、このくらいならしょうがない「妥協価格」です。買い手は商品のジャンルごとに、納得できる価格というものを持っています。通常、トップシェアの商品価格は、この妥協価格に近い線になります。
 Q3とQ4の交点は、こうあってほしい買い手にとっての「理想価格」です。本当の意味で生活者が望む理想的な価格が理想価格です。通常は、妥協価格より若干安いところに落ち着きます。本来であれば、最も販売数量が望める価格ですが、企業にとって理想価格で見合うコストで製造できるかどうかが、問題ですね。
 Q1とQ4の交点は、これ以上安いと信頼できない「下限価格」。ディスカウントストアやスーパーの特売で一般に普及している商品につける価格が、この下限価格です。ただし、下限価格だと薄利多売になり、当然ながら企業運営が難しくなります。数量が増えると固定費の比率が急激に下がるような低価格帯商品(いわゆるスケールメリットの大きい商品)に向いていると言えるでしょう。
 上限価格は付加価値が高ければ許容されます。下限価格はそれ以上低いと、信頼性に疑問が生じる価格です。一般的に理想価格と妥協価格付近で決定されることが多いようですが、あくまでPSM分析は、参考指標として使うべきです。実際の価格設定では、自社と競合との価格比較や、需要と供給のバランスなどを考慮する必要があるからです。デフレや暗い景気見通しなどで、消費者心理はかならずしもポジティブではありません。顧客の感じる価値と価格とのバランスを見ながら、プライシングを行うことが何よりも重要です。

(知的生産研究家、株式会社ショーケース・ティービー 取締役COO 永田 豊志)


執筆者
知的生産研究家、株式会社ショーケース・ティービー 取締役COO 永田 豊志

掲載:東商新聞 2012年12月10日号

以上