企業健康診断のススメ

第2回 中小企業からの相談事例(その1)

2013年7月31日
東京商工会議所
掲載:東商新聞 2012年3月10日号

中小企業の事業再生に向けた取り組みを具体的な事例を交えて説明します。(全6回)

第1回で、「経営に変調を感じたら早期診断を」、「中小企業が無料で専門的な相談を受けられる公的機関として再生支援協議会がある」と紹介しました。今回は、実際の中小企業経営者からの相談事例をもとに、再生支援協議会の相談の流れや、相談内容・具体的なアドバイス等を紹介します。

1.まずは電話で相談の予約を
 昨年12月、資金繰りにお困りの会社社長から、「年末の決済資金が足りない。至急相談したい」と電話を受けた時の話です。まずは、その電話で事業概要と相談主旨を簡潔に伺い、翌週に相談日時を設定しました。

2.相談当日の対応と流れ
 相談当日は、再生支援協議会の専門家スタッフ2人(金融機関経験者・中小企業診断士)で、約2時間をかけて相談を受けることにしました。まず、社長が持参した会社資料(事業案内や過去3期分の決算書等)を見ながら、会社の状況や相談のポイントである資金繰りについて伺い、同社の課題と対策の方向性を整理していきました。
 限られた時間の中で、状況を的確に把握するため、①会社概要(沿革・事業所・従業員)、②事業内容(商売・製品の特徴)、③財務内容(損益・財産の状況)、④金融機関との関係、⑤資金繰りに困っている状況と背景などについて、順番に確認していきました。

3.同社の状況
 同社は、最近の売り上げ急減により借入金の返済が苦しくなり、さらに、当てにしていた追加融資にメインバンクが難色を示したことで、近い将来に資金ショートの可能性がある、どうしたらいいだろうか、といった状況でした。しかし、資金繰りが厳しいのは分かりましたが、資金繰り表は作成しておらず、簡単な資金繰りメモを作成しているだけでした。

4.同社へのアドバイス
 近々に資金ショートの可能性があるなら、まずは取引銀行に状況を再度説明し、借入金返済の「条件変更」を依頼したらどうか、とアドバイスしました。当面の元金返済ピッチの組み直しや元金返済猶予に応じてもらい、その間に会社の立て直しを図るのです。しかし、資金繰り表がない状況では、取引銀行に現状を説明できませんし、会社としても、いつ、どれだけお金が不足するか正確に把握できません。そこで、資金繰り表の作成方法と金融機関への交渉・説明のポイントをアドバイスしました。
 さらに、今後最も大切なことは、資金繰りに窮した要因である売り上げ減少の根本原因を把握し、それを解消する対策を講じることだと説明しました。

5.金融機関のスタンス
 金融機関は、いずれかの時期に元金返済を再開できる可能性が高いと判断できれば、会社の要請に応じてくれるでしょう。しかし、会社が資金繰りに窮した原因や現状、将来の見通し等を適切に開示・説明できない場合には、なかなか応じ難いかもしれません。わかり易い資料を作成して現状を真摯に説明し、理解・協力を得ること、そして、日頃から定期的に情報開示し、いざという時に応援してもらえる良好な関係を築いておくことが大切です。

 なお、同社は資金繰り表を作成し、金融機関と再度交渉した結果、半年間の返済猶予に応じてもらえました。
 次回は、デリバティブ取引の損失や、いわゆる「粉飾」がある会社からの相談を、同様に具体例を示しながら紹介します。

(東京都中小企業再生支援協議会 マネージャー・公認会計士 相澤 啓太 3283-7425)


執筆者
東京都中小企業再生支援協議会

掲載:東商新聞 2012年3月10日号

以上