「中小企業のIT活用状況に関するアンケート調査」

結果概要

平成13年12月13日

東京商工会議所

IT推進委員会

1.調査実施概要

①調査目的:中小企業のIT導入・活用の現状と課題の抽出を目的とする

②実施時期:平成13年10月19日~11月6日

③調査方法:調査対象企業に調査票を郵送し、回答票をFAXにて回収。

      なお、回収にあたっては、電話での回答督促も実施している。

④調査対象:東商会員より、従業員規模が中小企業基本法に該当する企業1,000社の経営者(東商・商業部会所属会員のみ112件、他の8部会所属会員各111社無作為抽出)

⑤回答社数:377件(回答率37.7%)

2.回答企業プロフィール

3.結果概要

 全体的には、ITに対する意識や活用状況について、「頭では分かっていても、行動に移せない」「パソコンを導入してみたものの十分に活用できていない」中小企業像が浮かび上がる結果となった。(具体的内容については以下を参照)

①ITの効果等についての経営者の理解や意識は浸透・定着しつつあるものの、実際の活用状況やIT投資意欲では、まだ積極性に欠ける。

 まず、IT導入で目指すべきものを聞いたところ、「利益の拡大(66.4%)」の回答が「売上の向上(33.6%)」の回答を大きく上回り、IT導入によるコスト削減効果を経営者の多くが意識していることが明らかになった。(表1)

 次にIT導入の効果については、「業務効率化等の直接的効果は分かる(40.3%)」「ネットワークを活用した効果も理解している(48.0%)」との回答合計は約9割に達している。また、8割近くの企業が何らかの形で自社の競争力強化につながると回答しており、ITへの一定の理解が浸透していることが窺える。(表2、表3)

 しかし一方、実際の活用では、パソコンの配備状況について「全く使っていない(6.6%)」との回答は1割未満であるものの、「部門で1台、または数人で1台」といった企業が5割以上を占めている。また、社内パソコンのネットワーク構築について、「単独利用でネットワーク化されていない(27.7%)」「一部がネットワーク化(29.6%)」とする企業が6割近くを占め、ITによる情報共有は、半数近くが「全く行われていない」としているなど、全社的なネットワーク活用以前の段階にある企業がまだ非常に多い状況である。電子商取引についても、BtoC(対消費者取引)では約8割、BtoB(事業者間取引)では約9割が「実施していない」状況である。(表4、5、6、7-1、7-2)

 また、年間IT費用について、今後「増やす」とする企業は約2割にとどまっている。(表8)

 

②ITの導入・活用状況に関して、現状では、「業務処理・業務効率化」を主目的として取り組む段階の企業が多く、それを越えて「インターネットの業務への活用」や「マネジメント改革」への展開など、ネットワークを活 した先進的な取組みをしている企業は2割程度にとどまっている。

 

 IT導入により期待する具体的効果のうち、最も期待するものとしては、「業務のスピードアップ(37.1%)」「コスト削減(35.4%)」など、業務効率化に関する回答が多い。(表9)

 また、電子メール・WEBによる情報収集や伝達については、「一部利用者のみ行っている」「ほとんど活用されていない」との回答が7割にのぼる。(表10)

 IT導入により変化したマネジメント手法としては、「日常の報告・連絡等の電子化(電子メールなど)(33.1%)」、「モバイル環境を整えた(15.6%)」とする企業が目立つ程度で、「特に変わらない」とする企業は5割を超えている。(表11)

 

③経営者自身の認識の度合や活用度と、企業の導入・活用度合には相関性が見られ、経営者が自らメールやインターネットを活用している企業ほど取組みが進んでいることが読み取れる。反面、経営者自身が活用していても、企業としての導入・活用に反映されていないケースも多く見られる。

 「IT導入は必ず自社競争力強化につながる」と考えている経営者は、自分自身が電子メールを業務に活用している経営者のうち約半数であるのに対し、自分自身では活用していない経営者では2割にとどまる。(表12-1、12-2)

 また、経営者自身が電子メールを活用している場合、社内外での情報共有を行っている企業の割合(64.2%)は、経営者は活用しないにもかかわらず社内外の情報共有を行っている企業の割合(37.2%)を大きく超えている。(表13-1、13-2)

 

④ITに関する不安が全般的に強い。特にセキュリティに対しての不安や認識不足は大きく、対策の遅れが目立っている。

 IT導入の際の懸念については、回答企業の約7割が「(懸念することが)ある」としている。(表14) そのうち、最も懸念される項目として、「セキュリティ」を挙げた企業が6割を超えている。(表15)

 しかし、実際には、「特に対策を講じていない」企業が多く、「ウィルス対策」では約4割、「情報漏洩や改ざん対策」では約7割、「災害等によるデータ消失対策」は約3割の企業で対策を講じていない状況である。(表16-1、16-2、16-3)

 対策を講じていない理由としては、「必要性を感じない(43.9%)」「具体的に講じるべき対策が分からない(35.1%)」など、認識不足に由来すると思われるものが約8割にのぼる。(表17)

 その他の懸念要素として挙げられた項目としては、システム導入や維持にあたっての社内の人材不足やコスト負担に対する不安の他、「自分(経営者)自身がITのことをよく分からない」なども比較的多い。(表15)

 

⑤ITコーディネータ制度については、回答企業のほとんどが「利用予定はない」としている。その理由としては、制度自体が始まったばかりでその効果が未知数であることが考えられる。

 回答企業の9割近くは「利用予定はない」としており、その主な理由として、「社内の人材育成を優先したい(29.6%)」、「ITコーディネータの質が未知数である(21.7%)」、「既に社内体制が整っている(13.1%)」などが挙げられる。(表18、19)

 

⑥国・自治体に求める主な支援策としては「税制」、「インフラ整備」「人材育成」などを挙げる企業が多い。

 自社のIT導入を推進するために最も必要と考えている支援策として多かった回答は、IT投資に対する減税・免税などの優遇税制など「税制関連(35.8%)」が最も多く、次いでパソコン無償貸与や通信料金など、「インフラ整備に関する支援策(20.2%)」、経営者・管理職・従業員向け教育プログラムなどの「教育・研修制度(14.3%)」であった。(表20)