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伝統を知る 長きに渡って代々受け継がれている伝統がある。職人技を受け継ぎ、伝統を守り続けている人物をクローズアップしていく。

140年の歴史を持つ日本で唯一の琵琶専門店

石田琵琶店 ISHIDABIWATEN

Map >> 37

店頭に飾られている色鮮やか琵琶は、正倉院に収蔵されている琵琶と同じもの。夜光貝、琥珀を切って、それを埋め込んで作り上げた。この琵琶を制作したのが、石田琵琶店の4代目で人間国宝の石田不識さんだ。

こちらは正倉院に収蔵されている琵琶と同じもので販売価格はなんと500万円!

石田琵琶店が店を構えたのは明治11年(1878年)のこと。初代は元々、官軍の兵士で西南戦争に出兵していた。この時、敵地で聴いた薩摩琵琶の音色に魅了され、終戦後に官軍を辞めて、職人を雇って石田琵琶店を開店したのだ。以来受け継がれている伝統は、仕入れからスケールが違う。材料となるケヤキやクワは、御蔵島から丸太で仕入れる。収穫は2~3年に1回で1~2月の木が冬眠している時期。島は火山灰があり、春や秋など、木が水を吸う時期だと、木にシミが残って美しさが失われてしまうため、収穫は必ず寒い時期と決まっている。そして収穫した木を乾燥させるのだが、これが気の遠くなるような時間を必要とする。埼玉県坂戸市に木を保管する倉庫があり、そこで表側に使う木は3~4年、厚みが必要な裏側に使う木になると10年は寝かせる。

「石田琵琶店」の看板がお店の目印

用具入れは長きに渡って同じものが使われている。丸い取っ手のほうがより古いもの

店内にはたくさんの賞状が飾られている

一つひとつ石田さんが音を確認しながら作り上げていく。使う人の声に合わせて音を調整するのだ

現在、楽器屋で大量生産されている琵琶の場合は、人工乾燥機を用いて短時間で乾かしていることが多いが、自然乾燥と人工乾燥では木から出る音の響きが違う。伝統の石田琵琶店ではあくまでも本物にこだわっているからこそ、時間をかけることを惜しまない。

先代から店を継ぐ前の石田さんは大工だった。そのため形を作ることはできたが、理想の音を出すことに苦心した。琵琶の先生から音を教えてもらったり、演奏会に足を運ぶなどして、演奏者の声とのバランスが大事だということも知った。使う人が男性なのか、女性なのか、声の質によって最適な音は変わる。また、木目によっても微妙な音の違いが出てしまうため、裏の厚さで調節するのだという。使用している糸も昔から変わらない。良質な生糸の生産地として知られる滋賀県にある、明治41年創業の丸三ハシモトの黄色い絹糸を使用。粒子の細かさが変わると音が変わってしまうため、ハシモトの糸以外は使っていない。糸の太さは4段階あって、これも使う人によって適したものが変わってくる。

こうして時間と手間をかけて作られる琵琶は、安いものでも35万円。すべてクワで作ったものになると、数百万円の値段がつく。決して安いものではないが、演奏がうまくなるためには、本物の音が必要。事実、取材時に聴かせてもらった琵琶の音はズシリと胸に響くものだった。140年続く石田琵琶店の伝統は、自身が演奏者であり、本物の音を知る息子さんに受け継がれていく。

SHOP DATA

【住所】 東京都港区虎ノ門3-8-4
【TEL】 03-3431-6548
【営業時間】 [月~土]9:00~17:00
【定休日】 日曜、祝祭日
【交通】 東京メトロ銀座線「虎ノ門」駅から徒歩5分

尾崎紅葉が名付けた江の嶋最中を味わう!

芝神明 榮太樓 SHIBASHINMEI EITARO

Map >> 38

2017年の新語・流行語大賞に選ばれた言葉は「インスタ映え」。インスタグラムにアップした際に映える、見栄えのいいものという意味だが、芝神明榮太樓の「江の嶋最中」は、まさにインスタ映えする一品。「インスタ映え」するこの商品は、なんと今から100年以上も前に作られたものなのだ。

芝神明榮太樓は明治18年創業で、130年以上の歴史を誇る老舗の和菓子屋。看板商品の江の嶋最中は、明治35年から販売されている。その名付け親は小説家の尾崎紅葉だ。菓子包紙の「江の嶋」の文字も尾崎紅葉が書き、絵は浮世絵師・武内桂舟の木版画。印刷方法こそ時代とともに変化しているものの、デザイン自体は当時のものを継承している。最中の形はカキ、ホタテ、ハマグリなど5種類の貝殻をイメージしたもので、皮は香ばしい焦がし皮。その中には粒あん、こしあん、胡麻あん、柚子あん、白あんの5種類のあんが入り、5つの味を楽しむことができる。

箱の包装も海をイメージした鮮やかなもの。デザイン自体は昔から大きくは変わっていないが、昭和の初期は1枚、1枚版画で印刷していた / 一つずつ包装することで日持ちがする。また、開けた時には香ばしい匂いを感じることができる

お店の入口はこんな感じ。左の垂れ幕はその季節のおすすめ商品を紹介している

ビルの看板の岡本太郎さんの文字。もともとは竣工時のお祝いで配るマッチ箱の図柄として書かれたものだった

4代目の内田吉彦さん。伝統を守りつつ、新しいことにもチャレンジしている

昭和40年過ぎから小粒な最中を一つひとつ個装するようになった。これには、いくつかの狙いがある。一つは日持ちさせること。個別に包装することで通常よりも日持ちするため、お土産にも便利になった。そしてもう一つは、開けた時の匂い。袋を開けた瞬間に焦がし皮の香ばしい香りを味わえる。また、一個100円から販売しているので、好きな味だけ選んで購入することも可能だ。

時代が変われば人々の嗜好も変わる。それに合わせて微妙に味の変化はあるものの、作り方は伝統、基礎を大事にしている。柚子は香りをあんに練り込む方法として、皮を丁寧に洗って外皮だけを細かいおろし金で削る(果肉は入れない)。柚子一つから少量しか取れないこの皮と砂糖を合わせて練り込んで、ジャム状になったところで白あんを加えて柚子あんにする。胡麻あんは、黒胡麻を炒ってからすり鉢ですって、すり胡麻にしてあんに入れる。こうした作り方は明治35年から継承されているものだ。

江の嶋最中は、5種類のあんを味わえるのはもちろん、一つひとつ貝の形が異なる見た目、包装を開けた時の香りと、五感で楽しむことができるのが魅力だ。

明治時代からの伝統を守る一方で、新しい和菓子も制作している。近年の人気商品が大判の最中、「葵玉梓(あおいたまずさ)」。葵は増上寺の紋「三つ葉葵」のことで、最中にはそれが刻まれている。ちなみに玉梓とは、万葉集によれば「たより」「恋文」という意味。大切な人に贈りたくなる菓子であってほしいという思いから、こう名付けられた。

100年を超える伝統を持つ芝神明榮太樓は、次の100年も変わらずに和菓子の美味しさを追求していく。

SHOP DATA

【住所】 東京都港区芝大門1-4-14
【TEL】 03-3431-2211
【営業時間】 [月~金]9:00~19:00、[土]9:00~14:00
【定休日】 日・祝定休、8月は土曜も休み
【HP】 http://www.shiba-eitaro.com/
【交通】 JR・東京モノレール「浜松町」駅から徒歩4分、都営地下鉄大江戸線「大門」駅から徒歩1分