東京商工会議所

株式会社ライフィ

社員の幸せ・健康は
経営理念そのもの
自社の取組実績に保健衛生分野の見地が加わり、納得感アップ

  •  PDCA 
  • 睡眠
  • こころの健康
  • 感染症対策

株式会社ライフィ

本社: 東京都港区三田3-1-17 アクシオール三田8階

代表者名: 代表取締役 澤田 努 氏

設立: 2000年

従業員数: 20名

事業内容: 生命保険・損害保険の総合保険代理店

Webサイトの豊富な情報提供を入口に保険の代理販売事業を展開。効率化のための仕組みづくりを進め、対面販売が主流の保険販売をWebを通じた集客に切り替えてきた。

専門家派遣制度を利用した期間

2019年9月~2020年7月

支援専門家

保健師

専門家派遣制度を利用したきっかけ

保健衛生のエビデンスに基づく専門家の指導で、これまでの健康経営の取り組みをより深めたい。

かつては電話の問い合わせや資料請求など顧客対応の業務が増えるにつれ、残業が常態化していたが、営業数字を追う性質上、仕方がない面もあった。しかし、澤田努社長は「数字優先ではなく、お客様のためになることを行えば数字はついてくる」と発想を転換。経営理念として、「係る全ての人の成長・幸せ・未来に寄与する」ことを目指した。
2018年には、部門を横断した「ライフワーク健康経営プロジェクト」を設立。毎年各部門からリーダーとメンバーを選出し、全社一丸となって健康で働きやすい職場づくりを推進中だ。リーダーを務めた佐藤氏は、「残業もただ早く帰るだけでは仕事が残ってストレスが溜まります。月1回の全体会議で部署ごとに効率化の方法を話して共有し、皆が意識して行動することで、生産性が向上してきました」と話す。
専門家派遣制度を利用したきっかけは、従前より顧問コンサルタントとして同社の取組に助言を行ってきた加藤梨里氏(マネーステップオフィス㈱代表取締役)の提案だった。「従業員の健康への配慮は同社では“当たり前”の取組になりつつあるが、そろそろ客観的な指針・エビデンスにもとづいた取組に進むタイミングではないか」「保健衛生の分野に軸足を置く専門家から、自分とは別の立場で深い洞察を得られるのではないか」(加藤氏)
これまでの取組を振り返りつつ、専門的な情報を取り入れてより良い活動にしていこうとの考えだった。

中央・ウェブリレーション部 佐藤亘氏 / 左・理念経営促進室 阿井束裟氏 / 右・  マネーステップオフィス㈱ 代表取締役 加藤梨里氏
(中央) ウェブリレーション部 佐藤 亘 氏
(左)  理念経営促進室 阿井 束裟 氏
(右)  マネーステップオフィス㈱ 代表取締役 加藤 梨里 氏
各自の終業時間を見える化し、柔軟に効率的に勤務
各自の終業時間を見える化し、柔軟に効率的に勤務
専門家派遣による支援と取組
  • ● 従業員の健康課題の洗い出しと迅速な対応
  • ● メンタルヘルス対策
  • ● 健康経営の取組のPDCAを回す体制・仕組みづくり
  • ● 感染症対策

専門家として石田佐地子氏(保健師)が派遣され、まず行われたのはヒアリングだ。「もはや当たり前」の企業文化になりつつある健康経営への取組だが、専門家に話すことで記録・整理し、効果の検証ができる。
さらに社員各人が抱える健康課題は多様であることから、健康に関するアンケートの実施提案を受け、全体の傾向や健康課題を洗い出した。健康課題の1つであった「睡眠」について、希望する社員に石田氏による面談を実施するとともに、全体に共通する快眠に向けたアドバイスについても社内で共有した。
また、未対応だったメンタルヘルス対策については、ストレスチェックの導入に向けて石田氏がメンタルヘルス・ガイドラインの勉強会を実施。さらに、外部の事業者に委託し、会社を経由せずに受けられるメンタルヘルス相談の窓口を設置することとした。
体制面では、プロジェクトの取組について、結果や社員の意見を聞きながら、PDCA(計画-実行-評価-改善)を回す仕組みを整えた。例えばウェアラブルデバイスを利用した各自の歩数計測では、①やってみたくなる仕掛けを企画する、②数値を共有し、1日の歩数が目標を超えた社員には景品をプレゼント、③皆の受け止め方や社員の歩数傾向を把握、④結果を受けて次の取組企画を検討、と社員の意見を聞きながら、各ステップを着実に実行し、活動記録を残していくことにした。
2020年の新型コロナ感染症対策においては、様々な情報が錯そうしているなか、保健衛生分野の見地に基づく石田氏のアドバイスが大いに役立った。コロナ禍において社員を守るため、3月から一斉のテレワークを行っていたが、夏からは希望者は出勤可能とした。そこで、社内の環境整備について、保健師の視点からのアドバイスを受け、出勤時の検温記録、手指消毒の頻度、オフィスの仕様に合わせた換気の頻度やサーキュレーターの設置などの対策をした。特にサーキュレーターは窓のない会議室の換気を良くするために、常時開放されている扉へ向かって風を送っており、室外へ気流が流れていることを確認した。

取り組みを行ったら必ず社員の声を聞く。いつでも意見を出せる「気づきボックス」を設置
取り組みを行ったら必ず社員の声を聞く。いつでも意見を出せる「気づきボックス」を設置
社内への情報提供掲示
室外へ気流が流れていることを実験により確認して設置
取組による効果、今後の展望
  • ● 従業員の健康課題についてタイムリーに支援することができた。
  • ● より実効的なメンタルヘルス対策や感染症対策を講じることができた。
  • ● 健康優良企業認定やブライト500に認定されたことで、採用や取引時など、対外的なイメージアップにつながった。

同社の事情に沿いつつ、正確かつ的確な保健衛生分野の情報・アドバイスを受けられたことは大きな安心となり、よりよいプロジェクトの推進を後押しした。
健康に関するアンケートをもとに実施した社員面談では、「しんどそうな社員の様子に気づいていたものの社員同士では具体的な対応に踏み出しにくいところがありました。石田先生との面談を案内したところ、本人も希望し、良いアドバイスが得られたようです」と加藤氏は成果を振り返る。
また、ストレスチェック導入後、新たに設置したメンタルヘルス相談の窓口の利用者もあり、高ストレス者は減少傾向となっている。
感染症対策については、保健衛生分野の見地に基づく専門家のアドバイスを直接受けられたことで、従業員の正しい知識と、感染対策に対する意識が向上している。
なお、専門家派遣による取組と並行して、同社の取組に合う認証制度に応募し、健康優良企業「銀の認定」、健康経営優良法人「ブライト500」などに認定されている。
「健康経営やワークライフバランスの取組は社員による社員のための取組ですが、副次的効果として求人やインターンシップ募集の際に、ここに着目した応募者も増加しています。取引先に対してもクリーンなイメージを持っていただけていると思います」と、理念経営促進室の阿井束裟氏は話す。
現在は、さらなる取組として、専門家からの助言をもとに産業医の制度を導入すべく準備を行っている。 また、在宅勤務では運動不足になりがちなので、チャットシステムを経由して15時からのストレッチを遠隔で全従業員が一緒に行うなど、工夫を重ねている。
健康経営は会社の押し付けではなく、「従業員一人ひとりが納得して取り組み、生産性を高めることが自分のためにも会社のためにもなるという自発的な気持ちが大切」(加藤氏)であり、この風土をいっそう大切にし、一人ひとりの力がより発揮される会社を目指していくとのことだ。

健康経営エキスパートアドバイザーより

  • 同社は各部門の代表が健康経営チームとして主体的に取り組んでいました。社長は、社員の幸福を想い健康投資をされています。また、仲間の大病の時も一丸となり乗り越えてきた連帯感や社内風土も「ブライト500」に繋がったと観ています。
    支援のポイントは、1つに、コロナ発生に伴い優先課題やニーズ変更に対応したこと、2つめに健康課題の対策に社員の方々へヒアリングさせて頂けたことは保健師ならではのサポートと思います。健康経営推進のポイントは、新たなことに挑戦し続けている同社のように、飽きない工夫をして楽しめることだと思います。
  • 石田 佐地子 氏(保健師)
(取材:2021年10月)