東京商工会議所

吉田建材株式会社

週1回「健康経営ニュース」の配信で、従業員に健康情報を提供
ウォーキングイベントの実施で社内コミュニケーションが向上

  • 運動
  • コミュニケーション向上

吉田建材株式会社

本社: 東京都江東区東陽2-2-4

代表者名: 取締役社長 吉田 博 氏

設立: 1951年

従業員数: 65名

事業内容: 生コンクリート製造・販売業

専門家派遣制度を利用した期間

2024年1月~2024年8月

支援専門家(健康経営エキスパートアドバイザー)

中小企業診断士

健康運動指導士

専門家派遣制度を利用したきっかけ

健康経営を行うにあたり、具体的にどのような取組を行えばよいのか、レクチャーしてほしい。

東京・千葉を拠点に生コンクリートの製造・販売を行う吉田建材。設立は1951(昭和26)年、70年以上の歴史を誇る老舗企業だ。
吉田建材が健康経営に取り組もうと考えたのは2023年頃。同社の専務が、取引先企業の1社が健康経営を行っていることを耳にし、そのメリットに関心をもったことがきっかけだったと、総務経理部係長の外山恵子氏は言う。
「従業員が健康に長く働けることはもちろん、新卒採用にもプラスに働くといった健康経営のメリットに経営層が関心をもち、取り組むことになりました。総務経理部のメンバーが健康経営担当に任命されたのですが、当時は、そもそも健康経営がどんなものか、具体的にどのような取組を行うのか、私たちは全くわかっておらず、とてもぼんやりとしたところからのスタートでした」(外山氏)
経済産業省の「健康経営優良法人」認定取得を最終的な目標に据えたうえで、まずは健康優良企業「銀の認定」の取得を目指して取組を開始。しかし、何もわからない状態で闇雲に取り組んでも期待する成果は得られないだろうと考え、何か取組をサポートしてくれるサービスはないかとインターネットで検索をしていたところ、専門家派遣制度を知り、申し込むに至った。

監査役 吉田 真澄 氏(左) 総務経理部係長 外山 恵子 氏(中央) 総務経理部長 三好 正紀 氏(右)
監査役 吉田 真澄 氏(左)
総務経理部係長 外山 恵子 氏(中央)
総務経理部長 三好 正紀 氏(右)
専門家派遣による支援と取組
  • ● 健康診断の再検査の受診勧奨と、特定保健指導の対象者へ指導を受けるよう促す声かけの実施
  • ● 週1回、医療、食、運動、禁煙の4つのテーマを順番に取り上げる「健康経営ニュース」を配信
  • ● 健康運動指導士による健康セミナーを実施
  • ● ウォーキングイベントの実施で運動機会を提供
  • ● 健康に良い置き型社食の導入

康経営エキスパートアドバイザーで中小企業診断士の屋代勝幸氏が、まず実施すべきだと助言したのが、健康診断の要再検査対象者への受診勧奨と、特定保健指導の対象者への声かけだ。
同社は健康診断の受診率は100%と高かったものの、要再検査と診断された従業員が再検査を受診しているか否かの把握まではしていなかった。そこで、屋代氏のアドバイスをもとに、再検査と診断された従業員に対し受診を促す手紙を送付。手紙には返信欄を設け、どこの病院で、いつ再検査を受診し、その結果がどうだったか、記載して返信してもらうようにした。
同様に、これまでほとんど実施されていなかった特定保健指導に関しても、指導を受けるよう促す声かけを徹底。実際に指導を受けたかどうかについては、メッセージや口頭で報告してもらうようにした。また、対象者本人に通知するだけでなく、対象者が所属する部の部門長からも、特定保健指導を受けるよう促す声かけをしてもらった。
加えて屋代氏が指摘したのが、喫煙率の高さだ。厚生労働省の「国民生活基礎調査」をもとにした東京都の統計資料によると、令和4年度の東京都の喫煙率は男性が20.2%だったのに対し、同社の喫煙率は36%(喫煙は男性のみ)という結果だった。そこで、喫煙率20%を目標に据え、喫煙者に禁煙を促す取組を開始。喫煙が健康に及ぼす影響や、健保組合が実施している禁煙サポート事業の紹介など、禁煙を促す情報を社内のグループウェアで周知した。情報は、健康経営を実施するにあたり、従業員の健康への意識を高めるべく週に1回配信することにした「健康経営ニュース」を活用して、4週間に1回の頻度で配信した。
「健康経営ニュースは週に1回、医療、食、運動、禁煙の4つのテーマを順番に取り上げ、健康に関する情報を従業員に提供するものです。医療では糖尿病など疾病の紹介を、食では栄養バランスや飲みものに含まれる糖分についての解説などを、運動では職場でできるストレッチ動画を配信するなどしました。屋代先生からご指摘のあった喫煙も4週間に1回取り上げ、定期的に情報を発信することで、一人でも多くの方に禁煙してもらうことを目指しました」(外山氏)
その他にも、従業員の健康への意識を高めることを目的に、さまざまな取組を実施した。
健康運動指導士の川村由起子氏による健康セミナーの実施もその一つだ。そもそも健康経営がどのような取組であるかの解説から、メンタルヘルスケアの具体的な対策、ハラスメントに関する講義や相談窓口の紹介等を行った。
また、従業員への運動機会の提供として、ウォーキングイベントも実施した。健康経営担当があらかじめコースを決め、参加希望者を募った。終業後の17時30分頃に会社をスタートし、ウォーキング終了後には懇親会を実施。食事をしながら交流を深めた。2024年11月に第1回を開催して以降、3〜4カ月に1回、定期的に行っている。
さらに、健康的な食事の提供として、従業員が1品100円で購入できる置き型社食を導入した。加えて、2024年末にオフィスをリニューアルした際には、雲梯とリラックスチェア、血圧計を置いた「ヘルシーエリア」を新設した。

「健康経営ニュース」で配信した、禁煙を促す情報(令和6年配信)
「健康経営ニュース」で配信した、禁煙を促す情報(令和6年配信)
社内ウォーキングイベントの開催実施報告
社内ウォーキングイベントの開催実施報告
従業員が100円で購入できる置き型社食
従業員が100円で購入できる置き型社食
新設された「ヘルシーエリア」
新設された「ヘルシーエリア」
取組による効果、今後の展望
  • ● 再検査の受診率が把握できるようになり、特定保健指導はほぼ全員が実施した。
  • ● ウォーキングイベントの実施で、社内コミュニケーションが向上した。
  • ● 健康によい食事や飲み物を選ぶようになるなど、従業員の健康に対する意識が向上した。
  • ● 昼休みの時間帯をうまく活用することで、健康経営ミーティングに健康経営推進メンバー以外の従業員も参加できる仕組みを作り、より多くのアイデアが集まる体制ができた。

再検査の対象者へ受診勧奨を行ったことで、これまで把握していなかった再検査の受診率が把握できるようになった。まずこの体制が構築できたことが成果だと、総務経理部長の三好正紀氏は言う。
「経営会議でも、健康経営の推進はテーマの一つとして取り上げており、再検査の受診率も定期的に報告をしています。2024年度の受診率は21%ほどですが、引き続き数値を把握しつつ声かけを行って、受診率を高めていきたいです」(三好氏)
また、2023年度の検診結果をもとに実施された2024年の特定保健指導は、ほぼ全ての対象者が実施した。生活習慣病の予防・改善のために行われる特定保健指導が正しく実施される体制が整ったことは、従業員の健康を守るうえで非常に大きな成果だと言えるだろう。
外山氏とともに健康経営担当を担ってきた監査役の吉田真澄氏は、ウォーキングイベントの実施により「社内コミュニケーションが向上したと感じます」と言う。
「当社は本社と別に千葉、神奈川に営業所、また生コンクリートを製造する工場が2つと、コンクリートのリサイクルを行う工場が1つあるのですが、各所との交流はあまりありません。入社して5年ですが、名前は知っているけれど話をしたことがない従業員が多くいます。ウォーキングイベントには工場勤務の従業員も参加していたので、イベントをきっかけに話をすることができたのは、非常に嬉しかったですね」(吉田氏)
さらに、「社内で誰かがカップ麺を食べていたら『体に悪いよ』と声をかける人がいたり、『糖分が多いから』とジュースではなくお茶を飲む人がいたり、仕事中のちょっとした場面で、従業員の健康への意識の高まりを感じることがあります」と吉田氏。こうした行動変容の積み重ねが、健康診断の要再検査者や特定保健指導の対象者の減少など、全社的な変化につながっていくと期待したいところだ。
加えて、健康経営の推進体制にも良い変化が現れている。これまで健康経営担当者で月1回行われてきた健康経営ミーティングに、本社勤務の女性従業員を中心とした健康経営担当者以外の従業員も参加するようになったのだ。健康経営推進のためにどのような取組を行えばよいか、より多くのメンバーで多様なアイデアを出していけたらと、推進体制の拡充に外山氏は笑顔を見せる。
「健康経営担当だけではアイデアも枯渇してしまいます。他の従業員も巻き込んで、多種多様なアイデアを出してもらうようにしました。最近ですと、次のウォーキングイベントはどんなテーマでどこを歩こうとか、ときにはランチやお茶をしながら、楽しくアイデアを出し合っています」(外山氏)
当面の目標に設定していた健康優良企業「銀の認定」は、2024年10月に無事取得。続く経済産業省の「健康経営優良法人」認定は10月に申請済みで、審査結果を待つばかりだ。
今後の課題は、喫煙率の改善とメンタルヘルスケアの体制強化だという。喫煙については、健康経営への取組開始時に3名が禁煙を実施したが、その後喫煙者が入社するなどもあり、現時点で喫煙率の低下は実現できていない。どの企業も改善が難しいとされる喫煙率ではあるが、今後も改善を目指して取組を継続していきたいところだ。メンタルヘルスケアの体制強化については、従業員の健康をサポートする体制をより強化するために、まずはストレスチェック実施の検討に動き出している。
「ぼんやりとしていた」という2024年スタートから、スピーディに順調にその取組を拡充させてきた吉田建材。取組開始から「銀の認定」取得まで約1年という短期間で、これだけ多様な取組を実施できたのは、まさに好事例といえるだろう。健康経営担当者以外の従業員も巻き込んで、全社的に健康経営を推進していこうという体制も素晴らしく、今後さらに多角的に取組が広がっていくことが期待される。

2024年10月に健康優良企業「銀の認定」を取得
22024年10月に健康優良企業「銀の認定」を取得

健康経営エキスパートアドバイザーより

  • 専門家派遣を開始した当初は健診受診率こそ100%を達成していたものの、再検査対象者へのアプローチが不十分で、特定保健指導の実績も少なく、社内全体としても健康への関心が高いとは言えない状況でした。
    支援の中では、地域産業保健センターの活用や個別の受診勧奨、地道な声掛けを推奨しました。健康経営担当者の皆様の熱意は素晴らしく、毎週「健康経営ニュース」を配信するなど、その取組にも工夫と成長の跡が見られます。
    また、ちょうどオフィス改装の時期と重なり、健康経営の取組を反映した「ヘルシーエリア」が実現したことは大変喜ばしいことです。今後は、健康経営のリーディングカンパニーとして一層の発展を遂げられることを期待しております。
  • 屋代 勝幸 氏(中小企業診断士)
(取材:2025年8月)