東京商工会議所

株式会社ツネミ

メンタルヘルス対策を通じて
職場のコミュニケーションを改善
部署間の相互理解で働きやすさが向上

  • こころの健康

株式会社ツネミ

本社: 東京都江東区平野2-2-36

代表者名: 代表取締役社長 常見 英彦 氏

設立: 1953年

従業員数: 94名

事業内容: 釣用品卸売業

  釣用品の卸売業で創業からまもなく80年を迎える同社は、ルアーをいち早く輸入し、ルアーフィッシングのパイオニアと言われている。多岐に亘るお客様の要望でもある多品種少量出荷に対応できる倉庫移転や拡充、システム化を着々と進めてきた。

専門家派遣制度を利用した期間

2019年6月~2019年12月

支援専門家

保健師

専門家派遣制度を利用したきっかけ

健康経営を、従業員一人ひとりの意識や行動に浸透する取組に深化させたい。

会社の成長、取引量の増加とともに業務繁忙となり、社員に少しずつ疲弊が見られるようになってきた。常見英彦社長は、「働く人が心身ともに健康でいてこそ会社を永続させることができる。そう思ったときに健康経営という言葉に出会いました」と振り返る。
社長自ら勉強を進め、健康経営アドバイザーの認定を受け、社内に健康経営推進を宣言し、健康経営推進チームを作った。
年1回の健康診断の実施、40歳以上の従業員への人間ドック推奨、会社負担でのインフルエンザワクチン接種といった制度的な取組に加え、オフィスでのエクササイズやラジオ体操の導入、ストレスチェックや従業員の満足度チェックの実施など幅広い取組を行っている。その結果、健康優良企業「銀の認定」には3年連続で認定されている。
自主的な取組を実施しながらも、常見社長には「まだ従業員一人ひとりすみずみまで浸透していない。やらされている感があるのではないか?」と、もどかしさを覚えていた。例えば、オフィスに添加物、栄養に配慮した総菜を常備するサービスを導入したが、昼食時、毎日のようにカップ麺を食べる社員を目にしたこともあった。
健康経営推進チームのリーダーを務める業務本部課長の佐藤香氏は、その様子を次のように話す。 「推進する私たちと現場の社員との間には、少し温度差がありました。健康づくりは自分のためになる、という意識をどう持ってもらうかが課題でした」
今後の進め方を模索していた時、専門家派遣制度を知り、課題解決のため、専門家の助言を受けることに決めた。

本社内倉庫に保管されている多数の取扱品
本社内倉庫に保管されている多数の取扱品
代表取締役社長 常見 英彦 氏(左)/ 業務本部 業務本部課長 佐藤 香 氏(右)
代表取締役社長 常見 英彦 氏(左)
業務本部課長 佐藤 香 氏(右)
専門家派遣による支援と取組
  • ● メンタルヘルス対策研修、メンタルヘルス対策管理監督者セミナーの実施
  • ● ストレスチェックの職場集団分析

高清水幸美氏(保健師)は、ヒアリングを経て、同社で健康増進への取組が数年にわたり着々と進められてきたことを踏まえ、一歩進んで、「見えていないストレスと潜在的なメンタルヘルス不調」に着目した。同社の業務は、正確で素早い対応が求められるうえ、近年の会社の規模拡大により、人間関係が家族的なものから組織的なものに変わり、お互いの顔が見えない状態で仕事を進める場面も増えてきていたという背景があるからだ。
まず、全社員を対象とした「メンタルヘルス対策研修」を実施し、グループワークでは社員同士が業務中に感じたことを話し合う場を設け、役職や業務内容など立場による考えの違いをお互いに認識し合うきっかけを作った。
加えて、特に管理監督職に対しては、社員、部下のメンタルヘルスケアの重要性、注意点を伝える管理監督者セミナーを実施し、社員のメンタルヘルスを守る意識の醸成を図った。
また、ストレスチェックの職場集団分析も実施した。これまで社員各自で自分自身の結果確認はするように促していたものの、会社全体での傾向を初めて分析、把握することができた。それを社内に周知すると、一般職も管理職も受け止め方には共通点が見られ、会社の現状を知ることができた。
佐藤氏は、「社内だけで話しても深く理解してもらうことは難しい。保健師の先生に専門的見地から結果を分析していただいたので、皆、素直に受け止めてくれました」とその様子を話す。

メンタルヘルス対策管理監督者セミナー
メンタルヘルス対策管理監督者セミナー
メンタルヘルス対策研修
メンタルヘルス対策研修
取組による効果、今後の展望
  • コミュニケーションの取りやすい職場づくりに向けた取組が進展し、業務間の連携もスムーズになった。

メンタルヘルス対策研修での社員同士のグループワークは、同社にとって転機となった。専門家がインストラクションする場で、じっくりと話をし、相手の意見を聞くにつれ、部署間で起きていた小さなトラブルも、ちょっとした勘違いによるものだとわかってきた。「コミュニケーションが不足していた」と皆で気づき、逆に小さな思い込みで溝が深まってしまうことも理解できた。
立ち止まって考えられたこの機会が、業務上のストレスを減らし、コミュニケーションを取りやすい職場づくりへの新たな取組を導いた。2021年は1年かけて組織を改変。9つの部署に細分化して互いが連携をとり協力体制を築けるようにした。また、各部署がどんな仕事をしているかがわかるよう、月1回開催する全社セミナーで順番にプレゼンテーションをしている。業務間の連携はだいぶ定着しており、社内の雰囲気も良くなっているそうだ。“全体としてはまずまずだけど、どこかが詰まっている気がする…”と感じた部分が開通し、社内の循環が良くなっている様子だ。
常見社長は、「専門家の方は、多様なケーススタディをお持ちなので、一般的なケースと、自社の場合の対応の両方をアドバイスいただけます。井の中の蛙にならず、一歩を踏み出すことができました」と感謝の言葉を口にした。
これからは、会社全体の対策から、「一人ひとりが意識的に取り組めるような個のサポート」に力を注いでいくという。
佐藤氏は健康推進委員会の今後の抱負を「健康経営は会社のためでもあり自分のためでもあるとの意識を高めていきたい」と、元気に語った。

健康経営エキスパートアドバイザーより

  • 健康経営の要となる風土づくりが「社員の元気、会社の元気」を推進します。研修は、社員自らが快適職場づくりを考えるきっかけとなり風土づくりに寄与しました。支援ポイントは、①社員が司会進行を行う、社長挨拶を取り入れるなど事業所主体としたこと②管理職をファシリテーターとし、当事者意識を促したこと③意見交換の際は一体感が得られるよう他部署間メンバーによるグループ構成にしたことですが、一番の原動力は事業者の熱い想いのように感じます。
  • 高清水 幸美 氏(保健師)
(取材:2021年11月)