東京商工会議所

玉川食品株式会社

運動指導で「現場の元気」を
生みだし売上アップへ
健康経営による社内の好循環を期待

  • 組織・体制づくり
  • 運動

玉川食品株式会社

本社: 東京都北区豊島7-5-12

代表者名: 代表取締役 関根 康弘 氏

設立: 1960年

従業員数: 17名

事業内容: 茹麺/乾麺/生麺の製造、卸及びチェーン店への食材の卸

  東京23区唯一の乾麺製造会社。多品種少量の製造を担うのは現場の社員だが、「麺づくりの仕事」は認知度が高いとはいえず、社内は高齢化が進んできた。麺づくりの様子や楽しさなどを積極的にPRし、ブランド向上に努め、現在は、幅広い世代の社員構成となっている。

専門家派遣制度を利用した期間

2020年9月~2021年2月

支援専門家

・中小企業診断士
・健康運動指導士

専門家派遣制度を利用したきっかけ

健康経営の推進にあたり、健康企業宣言をした後の具体的な取組について専門家に相談したい。

3代目の経営者となる関根康弘氏は、売上を上げるため、プロテイン入り、インバウンド向け、アスリート向けなど新しい発想でコラボ商品・ターゲットを明確にした商品を開発、先陣を切って市場開拓を進めてきた。
精力的な動きの一方で、「売上アップが大事なのは間違いないが、製造現場が働きやすく、従業員が健康で元気でないと、いくら自分が企画しても新しい麺は作れない」との思いもあった。
「従業員の健康を気遣いたい、しかし会社としてどう元気づければいいのか…」 健康診断の受診勧奨は以前から行っており、階段の利用促進やぶら下がり健康器の設置等に取り組んでいるが、社員の自主性に任せる部分が大きかった。健康企業宣言をきっかけに会社からのアクションの起こし方、取り組み方について思案していたところ、東京商工会議所で実施している専門家派遣制度を知り、健康経営を推進する社内体制づくりを行うべく、健康経営エキスパートアドバイザーの派遣を依頼した。

本社にある一般顧客向け店舗
本社にある一般顧客向け店舗
関根 康弘 社長
代表取締役 関根 康弘 氏
専門家派遣による支援と取組
  • ● 健康経営推進の体制づくり
  • ● 腰痛予防のためのストレッチ講習会の開催

派遣された専門家の中村稔氏(中小企業診断士)がヒアリングにより現状を整理した。
まず、健康優良企業「銀の認定」を目指すという目標も見据え、推進者の任命や、社員に直接働きかける機会の創出等、健康経営推進の体制づくりをサポートした。社員の健康づくりのための取組を「健康推進プロジェクト」と称し、実行にあたっては、関根社長の実弟である常務と社長の配偶者の二人を推進者とし、社長が直接携わらなくても、社員からの感想や要望が上がる仕組みづくりに取りかかった。
次に、麺づくりは重い原材料を運ぶことも多く、腰を痛めやすいという傾向を踏まえ、中村氏からは社内の健康リテラシーの向上のため、健康運動指導士による講習会が提案された。小原桂子氏(健康運動指導士)による運動指導では、「腰に効くストレッチ」を実施、社員は交代で参加した。また講義の要点をまとめたプリントを配布するなど、自宅等でも継続的に実践できるようフォローを行った。

業務の合間に交代でストレッチを実施。従業員間のコミュニケーションも活発に
業務の合間に交代でストレッチを実施。従業員間のコミュニケーションも活発に。
取組による効果、今後の展望
  • ● 健康経営を推進するための体制整備が経営体制の強化にもつながった。
  • ● ストレッチを通じてコミュニケーションが増え、従業員の健康に対する意識も向上した。
  • ● 対外的にも労働環境の整備に配慮する企業として発信できるようになった。

関根社長は、「専門家派遣制度を利用してよかった。時間をつくるのは大変だし、社員も最初は嫌がっていましたが、やってみたら面白い動きになりました」と笑顔で語る。
健康経営推進の体制づくりにより、社員の声を取り入れながら取組を進めていく仕組みが生まれつつある。今後はさらに、若い社員が主体的に動ける場も作っていく予定だ。会社の「ナンバー2」が主導するプロジェクトを通じ、経営体制の強化にもつながっている。
運動指導では社員皆が共通体験を持てたことが、効果として大きい。終了後も雑談の話題にのぼったり、自分の体調を見直したり、と健康意識を高めるきっかけとなった。「社外の方から情報提供と指導を受けたことで、心に響いた様子だった」(関根社長)という。
現在は、健康優良企業「銀の認定」取得を目標に健康づくりのための体制整備を進めている。体調が悪いときに利用できる病院一覧の作成、食事と栄養にかかわる情報提供、一人ひとりが継続的に健康維持に取り組めるよう励みになるような仕掛けも工夫していきたいとのことだ。
結果以上に、目標を持つことでアクションを起こしやすく、皆で意欲を持って取り組めるところに価値があるという。関根社長は「健康経営への取組は労働環境の整備に配慮する会社として社外に伝えられますし、人材の採用や定着に効果を発揮します。社員が健康で力を発揮してくれれば売上増につながり、社内に好循環が生まれるでしょう」と手ごたえを語った。

健康経営エキスパートアドバイザーより

  • 社内のモチベーションやワーク・エンゲイジメントの向上は、中小企業にとっても重要な課題です。数年前に事業承継された現経営陣にとって、業績向上には社内体制の強化、ボトムアップ型の会社運営が求められていました。そのようなタイミングで導入を提案したのが「健康経営」です。
    社長が「健康経営」の推進を明確にしたことで、「社員を大切にしながら、その上で業績を向上させたい」といったメッセージが伝わり目標に向けた社内の一体感を醸成することができました。
  • 中村 稔 氏(中小企業診断士)
  • 運動講習会では「ストレッチの効果を実感し習慣化に繋げること」と「経営者と従業員のコミュニケーションの活性化」にポイントをおきました。健康課題のヒアリングや要望を元に、仕事中の姿勢アドバイスと腰痛&ストレス対策ストレッチを行いました。身体を動かしながら徐々に表情が明るくなり、従業員同士の会話も自然に生まれ終始和やかな雰囲気でした。支援にあたり、担当者とアドバイザーの信頼関係も重要だと感じました。
  • 小原 桂子 氏(健康運動指導士)
(取材:2021年10月)