専門家派遣制度を利用した期間
2024年2月~2024年9月
支援専門家(健康経営エキスパートアドバイザー)
健康運動指導士

本社: 東京都江戸川区東松本2-17-9
代表者名: 代表取締役社長 德永 義正 氏
設立: 1923年
従業員数: 53名
事業内容: 電設関係資材の総合卸販売
専門家派遣制度を利用した期間
2024年2月~2024年9月
支援専門家(健康経営エキスパートアドバイザー)
健康運動指導士
どのようにして健康経営に取り組めばよいか、またどのような取組が健康経営にあたるのか、アドバイスがほしい。
照明や空調、配線といった電気設備用工事材料をメーカーから仕入れ、電気工事店等へ卸売販売を行う株式会社タカノスマイル。2025年で創業102年を迎えた老舗企業だ。
同社が健康経営に取り組み始めたのは2023年。以前より東京都電機健康保険組合で委員を務めていた取締役会長の寺田靖子氏が、その活動の中で健康経営を知り、健康経営の有用性を感じたことが、取り組みのきっかけとなった。
「会社が主導して従業員の健康を守る健康経営は、当社の企業理念『人は宝の精神』にも通じます。2023年に100周年を迎えたことを機に、改めて、これからも歴史をつないでいくためには従業員の健康が本当に大事だと考え、健康経営に力を入れていこうと決めました」(寺田氏)
同年12月に健康企業宣言を行い、取組をスタートした。東京都江戸川区の本社に加えて、東京都と千葉県に5つある各営業所で、女性従業員1名を健康づくり推進担当者に任命。月1回、寺田氏と健康づくり推進担当者の計7名で「健康づくり会議」を開催しながら、健康経営を推進することとした。
まずは健康優良企業「銀の認定」取得を目指したが、実施結果レポートを自己採点したところ68点と、申請基準の80点に届かなかった。この状況を改善するべく、東京都電機健康保険組合を通して知った専門家派遣制度に申し込んだ。
「やはり知識のない自分たちだけでは、どのようにして健康経営に取り組めばいいのかわからず、また、どんな取組が健康経営に該当するのかも、判断ができませんでした。そのため専門家の先生のお力をお借りしたいと考えました」(寺田氏)
健康経営エキスパートアドバイザーで健康運動指導士、笹川さゆり氏は、まず従業員向けに健康に関するアンケートを実施。その結果から、「野菜の摂取量(1日あたり)350g以上の割合」「朝食の欠食率」「過去1年以上、週2日30分以上運動する割合」「たばこを毎日、または時々吸う日がある割合」といった、食生活・運動・喫煙に関する項目の結果が思わしくないことを指摘した。
笹川氏のアドバイスを参考にしながら、まず従業員の健康への意識の向上を目指して行ったのが、2週間に1回の「ヘルスマガジン」の発行だ。健康づくり推進担当者7名が持ち回りで作成し、メールで全従業員向けに配信。「1日に必要なエネルギー量ってどのくらい?」「肩こり・腰痛について」「ウォーキングをすることで体に起こる10の変化について」など、健康に関するさまざまなテーマを取り上げた。
食生活に関しては、置き型社食の「オフィスで野菜」を導入。野菜不足や朝食欠食改善を目指した。「オフィスで野菜」は週に1度、サラダやフルーツ、惣菜やヨーグルトなど健康にこだわった商品が届けられ、従業員はそれを1つ100円~購入することができるサービスだ。コスト面から全営業所への設置は見送ったものの、本社以外の従業員も利用できるよう、毎週各営業所からの購入希望を受け付け、該当の商品を社内の移送便を活用して配送することで、全従業員が利用できるように工夫した。
また、野菜不足の解消を促すための掲示物も作成。本社の健康づくり推進担当者で栄養士の資格をもつ女性従業員が、1日に必要とされる「野菜350gの目安」を伝えるポスターを作成し、社内に掲示。実際の野菜を用意して写真に撮ることで、具体的な野菜の量が一目で伝わるものに仕上げた。加えて、朝礼の時間に栄養士の資格をもつ健康づくり推進担当者が講師を務める食生活改善セミナーも実施。健康な体づくりにおける野菜の重要性を解説した。
運動不足解消に向けては、社内に階段利用を促すポスターを掲示するほか、階段自体にも、上った段数に応じた消費エネルギー量を表示。利用者が思わず歩きたくなるような、励ましの一言も添えた。さらには「ラジオ体操などさまざまな体操を参考にしながら、健康づくり推進担当者みんなで意見を出し合いました」(寺田氏)というオリジナル体操「タカノスマイル体操」を考案。江戸川営業所の健康づくり推進担当、宇佐美彩香氏が実演した体操を動画に収めて、全従業員へ配信した。朝礼の時間を活用して各営業所で週に1〜2回(本社は3回)、この動画を見ながら体操を実施している。合わせて、3カ月に1度の棚卸時にはラジオ体操を実施するなど、会社主導で定期的な運動機会を提供した。
喫煙に関しては、健康保険組合の保健師による禁煙セミナーを実施。セミナー実施時には寺田氏自ら喫煙者に向けて、メールや電話で受講を促した。
専門家派遣終了時に実施したアンケートでは、当初課題に挙げていた食事・運動の数値が改善した。飲酒量の改善に関しては特別な取組を行ったわけではないが、多角的に行ってきた取組が、従業員の健康に対する意識と行動を変えた結果だといえそうだ。喫煙については残念ながら数値の改善は見られなかった。
なお、取組の効果は数値だけでなく、従業員の反応からも感じられている。体操を実演した宇佐美氏は、従業員がみな積極的に体操を実施してくれていると、笑顔を見せる。
「面倒とか恥ずかしいといった声はなく、皆さん楽しそうに体操を実施してくれています。業務で別の営業所に出向いた際には、『タカノスマイル体操の宇佐美さん!』と声をかけてもらうことも多く、ちゃんと体操をしてくれているのだなと実感します」(宇佐美氏)
栄養士の資格を活かし健康づくり推進担当者として活躍する女性従業員も、従業員からの声が大きなやりがいになっているという。
「以前、繁忙期に発行したヘルスマガジンで『疲れに効果がある料理』を紹介しました。献立を自分で考え、実際に調理した写真も添えて、栄養素も載せました。すると、その献立で夕飯をつくったよ、と言ってくれる人がいて。積極的に実践してくれる従業員がいることが嬉しいですし、やって良かったと思えます」(栄養士資格をもつ健康づくり推進担当者)
こうした取組を通じて、社内のコミュニケーションが活性化し、これまで以上に風通しのよい組織になっていると、寺田氏。
「健康経営の取組をきっかけに、従業員がコミュニケーションをとっている場面が見受けられるようになりましたね。置き型社食で一品食べたり飲んだりする時間に、近くの人と少し雑談をしていたり、ヘルスマガジンで取り上げた内容を、お昼休みや休憩時間に話していたり。また、体調が悪そうな人がいると、『どうしたの?病院に行く?』と声をかけていたり、これまで以上に互いの健康を思いやるようになったと感じます」(寺田氏)
2024年10月には、当初目標の1つとしていた健康優良企業「銀の認定」を取得。認定の取得に際しては、「笹川先生から『この取組はこの項目に該当しますよ』と丁寧に教えていただいたおかげで、スムーズに申請することができました」と寺田氏。さらに専門家派遣終了後の2025年3月には経済産業省の「健康経営優良法人」認定も取得した。
認定取得後も取組はさらに進化しており、2025年4月には「タカノスマイルウォーキングキャンペーン」を実施。東京都電機健康保険組合のアプリを活用し、事業所ごとにチーム対抗戦で日々の歩数を競い合うイベントだ。従業員全員が積極的に参加するよう、各チームの歩数の上位者から順番に、歩数を上げるためにどんな工夫をしているか、歩く楽しみについてなど、取り組むうえでのポイントを全従業員に向けてメールで配信してもらうなど、工夫を行った。
また、効果がでなかった喫煙に関しては、2025年もセミナーを実施。オンデマンド配信に変更することで、業務で都合がつかない人でも参加できるよう工夫した。
今後、特に取り組んでいきたいことの1つが、女性の健康問題だ。従業員53名のうち女性は10名ほどと、割合としては多くないが、「今回、健康経営の推進でも女性従業員が大活躍してくれましたし、これからもっと女性従業員に活躍してもらいたい」と寺田氏。女性が働きやすい環境を整えることが、会社の成長に大きく寄与すると期待を寄せている。また、大きな目標として見据えているのが、健康優良企業「金の認定」の取得だ。
「『金の認定』の取得が、かなり難しいことは理解しています。従業員の健康を支える取組を実施するだけでなく、就業規則など社内の制度を変えていく必要もあるからです。まだ『いつまでに』と言える段階ではありませんが、『金の認定』を目指すことで、より従業員が健康で元気に働ける環境をつくっていけたらと考えています」(寺田氏)
誰よりも従業員の健康を思う寺田氏と、健康経営の推進にやりがいと喜びを見出し積極的に取り組んでいる健康づくり推進担当者たち。そして、健康づくりの取組を受け入れ楽しみながら実行している従業員──各者がポジティブな気持ちで健康経営に取り組み、そのメリットを享受していることが伝わってくる、まさに好事例企業だといえるだろう。
健康経営エキスパートアドバイザーより