東京商工会議所

創研情報株式会社

従業員から有志を募り、
健康経営推進委員会を立ち上げ
2カ月に1回の健康イベント開催等で、従業員の生活習慣を改善

  • 運動
  • 睡眠
  • 女性の健康

創研情報株式会社

本社: 東京都港区芝浦4-9-25 芝浦スクエアビル16F

代表者名: 代表取締役 阪本 浩朗 氏

設立: 1981年

従業員数: 78名

事業内容: システムの開発・基盤構築・運用

専門家派遣制度を利用した期間

2023年6月~2023年12月

支援専門家

健康運動指導士

専門家派遣制度を利用したきっかけ

すでに行っている健康経営の取組を、より充実させるためのアドバイスがほしい。

多様な業界の業務システムを中心としたWebシステム開発・基盤構築・運用を行う創研情報株式会社。78名いる従業員の大半がシステムエンジニアで、そのうち約4割は取引先企業にて業務を行っている。
同社が健康経営に取り組み始めたのは2019年、社内の喫煙者を減らそうと考えたことがきっかけだと、代表取締役の阪本浩朗氏は言う。
「従業員から、社内でタバコの匂いが気になるという声が挙がり、それをきっかけに喫煙者を減らす取組を行おうと考えました。いろいろと方法を調べていくうちに、健康経営のことを知り、せっかくなら禁煙だけではなく、従業員の健康を支援する健康経営に取り組もう、と考えました」(阪本氏)
業務推進部の小村明子氏が健康づくり担当者となり、同部の伊藤沙弥香氏と共に具体的な取組を推進。従業員の健康診断の受診率100%など、もともと健康経営に相当する取組を行っていたことに加えて、就業時間中の禁煙など新しい取組を行い、同年に健康優良企業「銀の認定」を取得した。続いて経済産業省の「健康経営優良法人」の認定取得を目指し、取組をより充実させるためにはどうしたらよいかと考え、専門家のアドバイスを求めたと、小村氏は当時を振り返る。
「『銀の認定』から『健康経営優良法人』にステップアップするためには、取組をこれまで以上に充実させる必要があります。ですが、具体的にどのような取組が項目に当てはまるのか、いまの取組で基準を満たしているのか、などがわかりませんでした」(小村氏)
何かサポートしてくれるサービスはないかとインターネットで調べたところ、専門家派遣制度を知り、申し込むに至った。

代表取締役 阪本 浩朗 氏(右) 業務推進部 小村 明子 氏(中央) 同部 伊藤 沙弥香 氏(左)
代表取締役 阪本 浩朗 氏(右)
業務推進部 小村 明子 氏(中央)
同部 伊藤 沙弥香 氏(左)
専門家派遣による支援と取組
  • ● 従業員に向けて定期的に健康に関する情報を提供
  • ● ラジオ体操やウォーキングイベントの実施など、運動機会を提供
  • ● 健康イベントを企画・運営する健康経営推進委員会を立ち上げ

専門家の竹田大介氏(健康運動指導士)は、まず従業員向けに健康に関するアンケートを実施。その結果から、「歩数(1日当たり)が8000歩以上の割合」「睡眠時間が足りている割合」「最近2週間の幸福感が高い割合」といった、運動・睡眠・ウェルビーイングに関連する項目の結果が、参考値よりも低いことを指摘した。
そこで、これらの課題を解消するべくまず行ったのが、運動・睡眠等を含めた健康に関連する情報を従業員に向けて提供することだ。
具体的には月に1回、社内チャットツールを活用して「特定健診と特定保健指導の重要性」「卒煙のためにできること」「日常的な飲み物に潜む糖質について」など、健康に関連する情報を配信。配信する情報は、健康保険組合や産業医から提供される情報を参考にした。また、専門家の竹田氏が制作しYouTube上で配信しているストレッチ動画も共有。従業員が少しでも健康を意識し、健康的な生活を心がけるよう、多様な情報を定期的に提供した。
また、女性従業員だけが参加するチャットグループを作成し、そこで乳がん・子宮頸がん、更年期障害といった女性特有、または女性に多い健康課題に関する情報を提供した。
「もちろん、男性にも知っていただきたい女性特有の健康課題もありますので、それは全従業員向けに提供しつつ、例えば、健康診断時に女性従業員が利用できるオプション検査についての説明など、女性だけに伝えたいことを投稿したり、女性同士で気軽に意見交換ができる場を設けました」(伊藤氏)
次に行ったのが、従業員への運動機会の提供だ。その一つが、毎日13時に行うラジオ体操である。時間になるとラジオ体操の音楽を流し、オフィス内にいる従業員は作業の手を止めラジオ体操を行うようにした。
また、5月と11月の年に2回、ウォーキングイベントを実施。これは、各人が自らのスマートフォンなどを活用して歩数を計測し、その数を社内で競うイベントだ。イベントは、従業員が自分にあったペースで参加しやすいよう、連続7日間の平均歩数を競う1週間コース、1カ月間の平均歩数を競う1カ月コースなど、いくつかのコースを用意した。
さらに、2カ月に1回のペースで健康イベントを実施。上記ウォーキングイベントを含め、野菜摂取量を測定するベジチェックを用いたイベントや、「食事について考えよう」をテーマに各々が食べたものを社内チャットへ投稿するイベントなど、2カ月に1回のペースで開催するようになった。また、このイベントの企画・運営を中心に、健康経営推進を担ってくれるメンバーを有志で募集。「スマイルプロジェクト」として10名ほどが月に1回集まり、どんなイベントを実施するか、最近気になっている健康に良い情報などを持ち寄ってディスカッションするようにした。

月に1回、健康に関する様々な情報を提供
月に1回、健康に関する様々な情報を提供
ラジオ体操の様子
ラジオ体操の様子
従業員に向けたウォーキングイベントの案内(一部)
従業員に向けたウォーキングイベントの案内(一部)
取組による効果、今後の展望
  • ● 「歩数(1日あたり)が8000歩以上の割合」「睡眠時間が足りている割合」「最近2週間の幸福感が高い割合」が改善した。
  • ● 社内のコミュニケーションが活性化した。

専門家の竹田氏が専門家派遣終了時に行ったアンケートの結果で、「歩数(1日あたり)が8000歩以上の割合」「睡眠時間が足りている割合」「最近2週間の幸福感が高い割合」が全て改善。定期的な情報の提供、運動機会の提供、イベントの実施が結果につながったといえるだろう。従業員からも「イベントのおかげで運動ができた」「運動をするとよく眠れた」など、イベントに対する好意的な声や、実際に健康効果を体感したという声が挙がっている。また、女性のみのチャットグループでは「健康以外の、仕事に関する相談や意見交換なども行われるようになっています」(伊藤氏)と、コミュニケーションの活性化にも一役買っているようだ。目標にしていた経済産業省の「健康経営優良法人」認定は、2024年3月に取得した。
今後行いたいことの一つが、健康診断の結果の分析と、それに基づいた取組の実施だという。健康保険組合から提供される「健康スコアリングレポート」などで、従業員の健康診断の結果を全国平均や業態平均と比較しながら把握はしているが、「そこから細かく分析して具体的な健康経営の取組に落とし込むことまではできていない」と小村氏。データ分析を行うことで、より自社の状況に適した取組を行っていきたいところだ。
「健康づくり担当、そしてスマイルプロジェクトが中心となって、様々な取組を行ってくれています。あとは、この取組が従業員一人ひとりの健康意識の向上につながることを期待したい。イベントに積極的に参加したり、健康に良い生活を心がけるようになるなど、意識が変わってくれるとよいと思っています」(阪本氏)
すでに行っている多様な取組に加えて、自社の健康課題により適した取組を行っていくことが、従業員一人ひとりの健康意識の向上、ひいては健康につながっていくことを期待している。

2024年3月に経済産業省の「健康経営優良法人」認定を取得
2024年3月に経済産業省の「健康経営優良法人」認定を取得

健康経営エキスパートアドバイザーより

  • 今回の取組では「高ストレス者の削減」「運動不足の解消」「睡眠不足の解消」の3つを課題として取り組みました。日常生活に運動を取り入れると睡眠の質の向上につながり、快眠により身体の疲れがとれるとメンタルヘルスにも良い影響を及ぼします。従業員への情報提供によるヘルスリテラシーの向上を行い、運動不足だった従業員が自ら運動したいと思っていただくための動画と、効果的な運動方法についての動画を配信し、運動を始めた従業員が増えたことで睡眠不足の改善にもつながり、結果的に高ストレス者も減少することができました。今後も引き続き、従業員の健康促進のため、健康経営を推進していただけると幸いです。
  • 竹田 大介 氏(健康運動指導士)
(取材:2024年10月)