東京商工会議所

サイショウ・エクスプレス株式会社

業種特性を言い訳にせず
健康経営を推進
感染症対策の整備で有事の際の迅速な対応が可能に

  • 感染症対策
  • がん検診
  • 女性の健康

サイショウ・エクスプレス株式会社

本社: 東京都江東区辰巳3-13-12

代表者名: 代表取締役社長 齋藤 敦士 氏

設立: 1955年

従業員数: 27名

事業内容: 一般貨物自動車運送業、倉庫業

  イベントで使う機器・備品や建築分野を中心に運送を手掛けている。保有するトラックは28台。乗務の量は社員の希望も聞いてシフトを組んでいる。

専門家派遣制度を利用した期間

2020年6月~2020年9月

支援専門家

中小企業診断士

専門家派遣制度を利用したきっかけ

自社の健康経営の取組をさらにレベルアップさせたい。

勤務時間が不規則なことも多く、休憩時間があるとはいえ長時間座って運転をする運送業は、健康経営を推進したくともしにくい業種といえるのではないだろうか。
同社では毎年のように社員が大きな病気に罹患し、復帰までの期間、本人はもちろん、社員の家族にも負担がかかったこと、会社側も都度人材補強が必要だったことから、齋藤敦士社長は、健康管理の必要性を感じていた。
「悩んでいた頃、母と義母が相次いで亡くなったことに背中を押され、健康経営について勉強を始めました。運送業では話題になっていませんでしたが、これはやるべきことであり、“人を大切にする経営”そのものです」齋藤社長は、健康経営に踏み込んだ当時のことをこのように述懐する。
同社では、喫煙を控え、毎日歩くことを推奨。定期的な健康面談や睡眠や疲労などをテーマとした講習会も行ってきた。健康診断は2次健診も含め受診率100%、結果と「お薬手帳」も提出してもらうなど「親目線」でのケアを行ってきた。
健康企業宣言を行い、健康優良企業「銀の認定」を取得。認定後は、健康経営優良法人「ブライト500」に選ばれるなど、健康経営の推進では同業者をけん引する存在になっている。
その後、健康優良企業「金の認定」を目標に定めたこと、同時期にコロナ禍に見舞われその対応が必要になったことから、より高度なアドバイスを求め、専門家派遣制度を利用することとなった。

健康優良企業「銀の認定」マークを付けたトラック
健康優良企業「銀の認定」マークを付けたトラック
代表取締役 齋藤敦士氏
代表取締役社長 齋藤 敦士 氏
専門家派遣による支援と取組
  • ● がん検診や女性特有の健康管理に関する情報の提供
  • ● 感染症BCP(業務継続計画)の作成、感染症対策に関する従業員のリテラシー向上

専門家の加藤敦子氏(中小企業診断士)は、新しい取組として、がんについて学ぶ機会の提供や研修教材の案内、がん検診等の情報提供を行った。具体的には、同社の女性社員に対して、加藤氏を講師に女性特有の健康管理に関する講習会(ライフキャリア、女性特有のがんや更年期症状など)を実施。資料は男性社員とも共有し、理解を深めた。
新型コロナウイルス感染症の対策においては、専門家の提案により、東京都福祉保健局の「職場で始める!感染症対応力向上プロジェクト」を活用した。これは、感染症対策として必要な知識が学べるプログラムで、3つのコースを提供するものだ。
同社では、コースⅠ「感染症理解のための従業員研修」(従業員の8割以上の受講が達成基準)と、コースⅡ「感染症BCP(業務継続計画)の作成」を選択し、無事修了することができた。
特に、「感染症BCP(業務継続計画)の作成」では、職場における感染症対策の明文化を行い、社員が感染した場合の対応方法、さらに、多くの社員が感染した場合の業務継続策などを整理した。

女性社員向けのセミナー風景
女性社員向けのセミナー風景
「職場で始める!感染症対応力向上プロジェクト」の修了証
「職場で始める!感染症対応力向上プロジェクト」の修了証
取組による効果、今後の展望
  • ● 新型コロナウイルス感染症に対し、早い段階で対策を整備することができた。
  • ● 健康経営の推進が従業員の健康管理に留まらず、業務改善の取組にもつながった。 

同社はすでに数年にわたり健康経営に取り組んでいるが、専門家派遣について、齋藤社長は「自分たちだけではわからなかった課題が見え、次の行動へ気づきが得られる良い機会でした。感染症対策についても早い段階で備えと対策をきちんと整備できてよかったと思います。もちろん日常の対策はしっかり行っていますが、いざというときにも慌てず対応できる安心感にもつながりました」と話す。
今では多くの社員から、健康経営への賛同が得られている。ただ、気になる面も見えてきた。それは、同社の支援が充実しているがゆえ、「健康経営へのサポートは福利厚生、『してもらって当たり前』と受け身になりがちな点」だ。
齋藤社長は「社員教育が十分でなかったことが原因」と捉え、改革に着手した。
毎朝の整備清掃を習慣付けたほか、週2回は運転中のドライバーも車を停め、スマートフォンを使ったオンラインミーティングを実施して経営理念と行動規範を唱和している。最初は不満も出たが、今では、働く場所をきれいに保つ意義や良さが理解されてきた。
荷主に満足してもらい「選ばれる会社」になるには、働く人、一人ひとりが広い視野を持ち自分を磨き、業務の改良を重ねる姿勢が欠かせない。健康管理も清掃も、現場力と人間力を高める社員教育に通じており、同社の経営の柱となっている。

当社ホームページ
同社ホームページ

健康経営エキスパートアドバイザーより

  • 既に銀の認定、健康経営優良法人を取得されていた同社は、齋藤敦士社長を中心に健康経営への意識が高く、金の認定に向けて取り組むべき点もよく把握されていました。そこで今回のご支援では、社員の皆様の健康を守りつつコロナ禍の下でも経営をしっかり安定させられることを目指して、いくつかのご提案をさせていただきました。
    同社の健康経営への取組は他のトラック運送会社から注目されており、追随して取り組まれる同業者も増えています。業界の先駆者として、一層改革を進めていかれることを期待しております。
  • 加藤 敦子 氏(中小企業診断士)
(取材:2021年10月)