東京商工会議所

株式会社メトロアドエージェンシー

経営者自らの声かけにより、
社内における健康経営の認知度が向上
HPへの掲載で、企業イメージ向上も実感

  • 食生活
  • 運動

株式会社メトロアドエージェンシー

本社: 東京都港区東新橋2-14-1 NBFコモディオ汐留9F

代表者名: 代表取締役社長 川田博之 氏

設立: 2007年

従業員数: 365名

事業内容: 交通、新聞、雑誌、放送、屋外、映画、ダイレクトメール、インターネットその他各種広告の取扱い及びセールスプロモーション並びにパブリックリレーションズに係る業務。広告、広報に関する企画立案及び制作

専門家派遣制度を利用した期間

2022年12月~2023年9月

支援専門家

健康運動指導士

専門家派遣制度を利用したきっかけ

働き方改革の観点から健康経営を推進すべく、具体的にどのような取組を行えばよいか、アドバイスしてほしい。

東京メトログループの総合広告会社であるメトロアドエージェンシー。東京を網羅するネットワーク上にあるさまざまなメディアの管理・販売をする媒体社事業と、広告の企画制作を行う総合広告代理店事業を主に行っている。社員は365名。本社に勤務する160名のほかに、電車内・駅構内の広告ポスターの取り付けや撤去等を担う200名の社員が、飯田橋、駒込、茅場町の3つの事業所に勤務している。
同社が健康経営に取り組み始めたのは2022年。当時の代表取締役社長が、働き方改革の観点から健康経営に取り組むことを決めたのがきっかけだ。東京メトログループの方針もあり、それまでにも健康経営に該当する取組を行っていた同社。健康診断と有所見者再検査の受診率はともに100%、ストレスチェック受診率も96%、また喫煙セミナーなども実施していた。改めて健康経営を行い、これまで以上に社員の健康を会社が支援することで、生産性の向上や企業イメージの向上、人材の採用・定着化等を目指した。
同年4月には、同社の健康経営の理念を定めた「健康宣言」を制定。経済産業省の「健康経営優良法人」認定の取得を目標に据え、動き出した。しかし、認定取得に向けて、具体的にどのような取組を行えばよいのかわからず、アドバイスを求めて専門家派遣制度に申し込んだと、経営企画本部総務局人事部部長の小磯えり子氏は当時を振り返る。
「経済産業省の『健康経営優良法人』認定の項目を調べたところ、専門的な知識のない私たちだけでは難易度が高いのでは……と感じました。闇雲に取り組むよりも、専門家のアドバイスを受けて取り組んだ方がよいと考え、申し込むことにしました」(小磯氏)
専門家の川村由起子氏(健康運動指導士)との面談を経て、まずは経済産業省の「健康経営優良法人」の申請に必要な、健康優良企業「銀の認定」の取得を目標に設定。小磯氏と経営企画本部経営戦略局経営戦略部部長の江袋歩氏、同部の三輪ひかり氏が、健康経営推進事務局の役割を担った。

経営企画本部 総務局 人事部 部長 小磯 えり子 氏(右) 経営企画本部 経営戦略局 経営戦略部 部長 江袋 歩 氏(左) 経営企画本部 経営戦略局 経営戦略部 三輪 ひかり 氏(中央)
経営企画本部 総務局 人事部 部長 小磯 えり子 氏(右)
経営企画本部 経営戦略局 経営戦略部 部長 江袋 歩 氏(左)
経営企画本部 経営戦略局 経営戦略部 三輪 ひかり 氏(中央)
専門家派遣による支援と取組
  • ● 経営者から社員に向けて、健康経営に関する情報を発信
  • ● 「ヘルシー弁当講座」や「ストレッチセミナー」など、食と運動の観点から社員の健康への意識を高める取組を実施
  • ● 健康経営に関する一連の取組をHPに掲載

川村氏の提言を受けて、社員を対象に健康に関するアンケートを実施。その結果、課題の一つとして挙げたのが社内における「健康宣言」の認知率の低さだ。「健康宣言」の認知度は、会社が健康経営に取り組んでいることの認知度とイコールだといえるが、「健康宣言の内容を知っている」と回答した社員は3割にとどまるという結果に。そこで、まずは会社が健康経営に取り組んでいることを社員に周知することを目指し、経営者から社員に向けた情報発信に取り組んだ。
2023年6月に代表取締役社長に就任した川田博之氏からは、年始など節目の挨拶や朝礼、定期的に発行される社報といった場を活用して、健康経営に関連するコメントを発信した。また、経営層の健康経営に対する意識を高めるべく、経営会議の場で、その時々に留意すべき感染症や健康課題を取り上げるなど、社員に向けた情報発信をコツコツと積み重ねた。
加えて行ったのが、社員の健康への意識を高めるための取組だ。「健康経営に取り組む以前から気になっていたことの一つが、健康診断で異常の所見を指摘される社員が多いことでした」と小磯氏。そうした背景もあって、健康の土台ともいえる「食」と「運動」の観点から、社員の健康への意識を高める取組を行った。
食に関しては、グループ会社であるメトロライフサポートのサービスを活用した、「ヘルシー弁当講座」を開催。本社に勤務する約20名が、保健師による栄養に関する講義を聴講したあと、実際にお弁当を試食した。また、三輪氏が旗振り役となって、当時本社オフィスがあった霞が関、西新橋、虎ノ門エリアでヘルシーなランチができるお店をマップにまとめた資料「ヘルシーランチのすすめ」を制作。健康経営推進事務局のメンバーらが、自ら足を運んで情報収集をした。
「インターネットで『ヘルシー』というキーワードでお店を調べてもなかなか出てこなかったため、実際に足を運んで『野菜だけのメニューがあった』とか、『十六穀米が使われていた』といった情報を集めました」(三輪氏)
運動については、健康運動指導士である川村氏を講師に招いて「ストレッチセミナー」を開催した。デスクで座ったまま肩甲骨を回すストレッチ方法など、日頃の業務の中で簡単に取り組める方法を紹介。四半期に1回全社で行うコンプライアンスセミナーと合わせてオンラインで実施したことで、本社所属の社員全員の参加を実現した。加えて、親会社である東京メトロが開催する、全グループ会社が参加可能なウォーキングイベントにも参加。メールで社員に参加案内を送付し、希望者は専用のアプリを介して、職場対抗で歩数を競った。
さらに行ったのが、健康経営の取組をHPにまとめ、社外へ発信することだ。「健康宣言」に加えて、「推進体制」や「健康経営で解決したい健康課題」「具体的な取り組み」も掲載。川村氏のアドバイスもあって、健康診断受診率といった「関連データ」も掲載した。

「ヘルシー弁当講座」で試食したお弁当
「ヘルシー弁当講座」で試食したお弁当
健康経営推進事務局が制作した「ヘルシーランチのすすめ」
健康経営推進事務局が制作した「ヘルシーランチのすすめ」
川村氏が講師を務めた社員向けのストレッチセミナー
川村氏が講師を務めた社員向けのストレッチセミナー
HPに掲載した「関連データ」。健康診断受診率、有所見者再検査受診率、ストレスチェック受診率の3年分のデータを記載
HPに掲載した「関連データ」。健康診断受診率、有所見者再検査受診率、ストレスチェック受診率の3年分のデータを記載
取組による効果、今後の展望
  • ● 社内における「健康宣言」の認知度が向上した。
  • ● 社外からの企業イメージの向上を実感した。

専門家派遣終了時に行ったアンケートでは、「健康宣言の内容を知っている」と答えた社員が約7割と、事前の3割から大きく変化。小磯氏は「社長、そして経営層がコツコツと情報発信してきたことや、セミナーなどを行ってきたことにより、一定の効果があったと感じています」と振り返る。健康経営推進事務局で制作した「ヘルシーランチのすすめ」も、「何人かの社員から、実際にこれを見て、ランチに行ってみたよという声がありました」と、制作を主導した三輪氏。会社が健康経営に取り組んでいるということが、確かに社内に伝わっているといえそうだ。
一方で、「社内だけでなく、社外からの見られ方が変わってきていると感じる」と、小磯氏は言う。
「『ホームページを見て』と健康経営についてお問い合わせをいただいたり、採用面接の際に健康経営について質問をされたりします。健康経営に取り組むことが、当社を知っていただいたり、当社を選んでいただくきっかけの一つになっているのかな、と感じています」(小磯氏)
目標にしていた健康優良企業「銀の認定」は、2023年10月に取得。現在は経済産業省の「健康経営優良法人」認定に申請中だ。今後については、「セミナーなどの取組を一過性のものにせず、定期的に継続的に開催していきたい」と江袋氏。
「健康経営推進事務局のメンバーは、本来の業務と兼務しながら取り組んでいることもあって、得てしてセミナーなどの取組が1回限りの、場当たり的な実施になりがちです。すると、その空気は他の社員にも伝わってしまいます。今年は『睡眠』をテーマに据えているので、睡眠を軸にして、定期的に継続的に取り組んでいきたいというのが目標の一つですね」(江袋氏)
同じく小磯氏も、「そのためにも、まずは各部署に設置された安全衛生委員を巻き込んで、健康経営推進事務局のメンバーだけでなく、全社で健康経営に取り組む体制にしていきたい」と続けた。
三輪氏は、社員のニーズを把握して、より社員に響く取組を実施していきたいと笑顔を見せる。
「社員が本当に興味を持つ取組でないと、やはり参加してもらえないと思います。例えば以前、SDGs関連の取組で、他企業様からいただいた野菜や牛乳を社員に配布したことがあったのですが、これは社員の反応がとてもよかった。こんなふうに、社員の皆のニーズを把握して、うまく心を掴めるような取組を考えていきたいです」(三輪氏)
熱意ある担当者によって健康経営の取組が軌道に乗り、その効果も実感しつつあるメトロアドエージェンシー。これらの取組をより全社的なものへと発展させて、生産性の向上や企業イメージの向上、人材の採用・定着化といった効果へとつなげていきたいところだ。

健康経営エキスパートアドバイザーより

  • 小磯様をはじめ、ご担当の皆様が、お伝えした健康経営のアドバイスを胸に圧倒的な当事者意識を持って、経営層や他部門の方々に働きかけ、力強く推進される姿に毎回驚きと感銘を受けておりました。なかでも、経営トップが交代するタイミングでの健康宣言における社長名の公開と社員へのコミュニケーションは見事であり、健康経営の基盤を確立されました。
    今後も引き続き事業の成長を目指し、社員の皆様がいきいきと働ける環境づくりに向けて、健康経営の推進に努められることを期待しております。
  • 川村 由起子 氏(健康運動指導士)
(取材:2025年1月)