専門家派遣制度を利用した期間
2023年9月~2024年7月
支援専門家(健康経営エキスパートアドバイザー)
社会保険労務士

本社: 東京都港区赤坂1-4-17 広友ビル
代表者名: 代表取締役社長 梅木 健行 氏
設立: 1957年
従業員数: 30名(子会社含む)
事業内容: オフィスプランニング、オフィス移転、リニューアル、内装工事、オフィス家具の選定・販売・レンタル、ICT機器の選定・販売、運動機器・楽器の販売、金銭機器、家電製品などの販売、医療機器のレンタル・販売、防災用品販売、動産管理における不用品の処理、抗菌・抗ウイルスコーティングサービス
専門家派遣制度を利用した期間
2023年9月~2024年7月
支援専門家(健康経営エキスパートアドバイザー)
社会保険労務士
健康経営を推進するにあたり、健康経営に関する知識の提供、効果的な事例や、具体的な改善策など、実践的なアドバイスがほしい。
オフィスプランニングや内装工事、オフィス家具、OA機器、スポーツ・防災用品の仕入れ・販売など、オフィスの環境づくりに関わる幅広いサービスを提供している広友物産株式会社。今年で創業68年目、長年培ってきた経験と実績を活かし、顧客のニーズに合わせた最適なオフィス環境を提案している。
同社が健康経営に取り組み始めたのは、2017年。社員の健康課題がきっかけとなり、今後企業が持続的に成長していくためには健康経営への取り組みが不可欠であるという考えが深まり、さらにメディア等で広く報じられていたことも相まって、健康経営の推進を決意したと、代表取締役社長の梅木健行氏は言う。
「日本全体が高齢化し、当社の従業員も少しずつ高齢化していく中で、会社を維持成長させていくためには、従業員が笑顔で健康に働ける環境を目指すべきだと考えるようになり、健康経営に興味を持ちました。そんな矢先、生活習慣が影響したとみられる疾患で従業員の一人が亡くなるという非常に悲しい出来事が起きました。会社として、従業員の健康管理にもっと主体的に関わるべきだと、より強く考えるようになり、そこから会社主導で従業員の健康管理を積極的に行うようになりました」(梅木氏)
2017年から、年に1回、全従業員が参加して健康について学び考える「健康の日」を実施。健康診断結果の会社全体の傾向を公表したり、保健師や医師を招いて健康に関する講義を行うようになった。その他にも、毎朝のラジオ体操の実施により、従業員に定期的な運動機会を提供。また、自動昇降デスクや健康器具、ウォーターサーバーの導入など、健康的なオフィス環境の整備を行った。メンタルヘルスへのサポートとしては、相談窓口の設置とストレスチェックの実施。ワークライフバランスの推進として、在宅勤務制度や時短勤務制度を整備した。
加えて、各種認定の取得にも積極的に取り組んだ。従業員のスポーツ活動の促進や、スポーツ分野での社会貢献の取組を行う企業が取得できる「東京都スポーツ推進企業」や、従業員の健康増進のためにスポーツ活動の支援や促進に向けた積極的な取組を行っている企業をスポーツ庁が認定する「スポーツエールカンパニー」を取得。さらに、2021年からは、「コロナ禍で減ってしまった社内コミュニケーションを活性化させよう」と、オフィスにモルックを導入。モルックとは、木製の棒を投げて、12本あるピンの倒れ方で採点するゲームだ。比較的簡単で誰でも楽しむことができ、チーム戦略を立てながら点数を競い合うことから、チームビルディングの一助になればと期待して導入。昼休みなど休憩時間に、バルコニーなどで実施できるようにした。
このように、すでにさまざまな健康経営の取組を行っていた同社が専門家派遣制度を知ったのは、「銀の認定」を取得する直前の2023年9月。協会けんぽの担当者から紹介され、銀の認定に続く目標として経済産業省の「健康経営優良法人」の取得を目指していたこともあり、「自分たちの取組で、不足している部分を補ってほしい」と考え、申し込んだ。
「私たちが行っている取組を見ていただき、不十分なところを洗い出して、そこを補う具体的な改善策の提案など、実践的なアドバイスを期待しました」(梅木氏)
健康経営エキスパートアドバイザーで社会保険労務士の齋藤康子氏は支援に際し、次の3点を指摘した。
1つ目は、健康づくりに関する具体的な計画や数値目標が未設定であること。2つ目は、協会けんぽから送られてくる事業所カルテ(健診・保健指導の実施率や、健診結果および生活習慣について事業所単位でまとめ、都内の同業態の平均値などと比較できる表やグラフで見える化した資料)の中で、特に生活習慣病のリスク保持(腹囲・脂質・肝機能)の有所見者の割合が、東京都や全国平均と比較して高いこと。3つ目は、齋藤氏が従業員に向けた健康に関するアンケートの結果から、「歩数(1日あたり)が8000歩以上の割合」が13.8%と低いことだ。
この指摘を受け、同社では2つの具体的な取組目標を設定。1つ目は、「歩数(1日あたり)が8000歩以上の割合」を50%以上にすること。2つ目は、生活習慣病の改善に欠かせない健康的な食事を意識的に行えるよう、健康についての会話をしながら、会社提供の栄養バランスの取れたお弁当を食べるランチ会を実施することだ。
歩数については、全従業員に歩数計を配布し、毎月決められた1週間分の歩数計測を実施。集計結果をもとに、8000歩以上歩いた人数とその割合を社内で共有した。実際に健康経営の推進を担当した総務・人事チーム主任の原田康司氏は、「従業員が歩数を計りやすいよう、自由度を高めることを意識しました」と言う。
「計測期間は1カ月のうちの1週間のみ。計測期間が終わった翌週に、該当の1週間分の歩数を社内ポータルサイトのアンケート機能を使って回収し、集計を行いました。歩数計は、30日間歩数が残るものを配布しましたが、中には歩数計を持ち歩くのが難しいという声や、スマートフォンのアプリで計測したいといった声がありましたので、それは各人に判断を任せ、より取り組みやすい環境づくりを心がけました」(原田氏)
また、「強制だと受け取られないよう心がけました」と梅木氏。
「歩くことのメリットをしっかりと説明して、あくまで従業員の健康のために行っているのであり、会社側が強制しているわけではないことを伝えました。また、8000歩に満たない場合でも否定的なことは言わないようにしました」(梅木氏)
ランチ会は、年に2回開催。栄養バランスの取れたお弁当や、野菜が多く摂れるお弁当を原田氏がセレクトした。全従業員一堂に会するのではなく、交流しやすいよう少人数で、また普段は交流のない他部署のメンバーと話をする機会になるようにと組み分けを工夫した。会話が活発になるよう進行役を配置し、和やかな雰囲気づくりを心がけた。
ランチ会の実施場所は当初会議室であったが、従業員の声を受けて、ランチ会に適した「コミュニケーションルーム」を新設したという。
「ランチ会の後にアンケートを行った結果、会議室では会議のような雰囲気になって、会話が進まなかったという声がありました。そこで、打ち合わせスペースの一つをガラス張りの解放感ある部屋に改装。コミュニケーションルームと名付けて、ランチ会はもちろん、アフターファイブにちょっとした雑談や飲み会が開催可能なスペースにしました」(梅木氏)
ウォーキングイベントを実施した結果、「歩数(1日あたり)が8000歩以上の割合」が、2024年5月〜2025年4月の1年間の平均で54.4 %に向上。当初目標に掲げていた50%以上を達成した。「数値だけではなく、従業員の意識の変化も実感している」と、梅木氏。
「歩数を測定し始める前は、歩くことを全く意識していなかった従業員が、歩くことを意識するようになったと感じます。例えば営業スタッフから、『今日は歩けたな』とか『あまり歩けなかった』といった会話が聞かれるようになりました。ウォーキングイベントを通じて、運動機会は提供できているかなと感じています」(梅木氏)
ランチ会は従業員からも好評で「美味しいお弁当が食べられてよかった、普段会話をする機会のない人と話せて楽しかった、という声が聞かれました」と原田氏。社内コミュニケーションの活性化に一役買っていると言えそうだ。ランチ会開催のきっかけとなった生活習慣病リスク保持者が多い点については、「まだ道半ばで、これから数値として現れていけば」と梅木氏。生活習慣病の予防には、食生活だけでなく運動、睡眠、飲酒や喫煙など、さまざまな要因に対処していかなければならない。「食事だけでなく、それ以外の部分でも従業員の意識を高める取組を継続的に行って、改善を目指していきたい」(梅木氏)と言う。
2025年3月には、目標としてきた経済産業省の「健康経営優良法人」を取得。健康経営に取り組み、認定を取得していることに対しては、社外から非常にポジティブな反応があると梅木氏は笑顔を見せる。特にリクルートに関しては、「求職者から、健康的な働き方ができる会社だと見られる」(梅木氏)と言い、認定取得の効果を実感しているそうだ。
さらに社外に向けて広がりを見せているのが、モルックだ。健康経営の一環で取り組んできたモルックは、社内だけでなく社外へも展開。「出張!モルック体験教室」と題して、地域のイベントやSDGs関連のイベントなどに参加し、CSR活動の一つとして定着している。また、健康経営に積極的に取り組んでいることが取引先とのつながりを通じて社外に広がっていき、2025年1月、静岡県浜松市で開催された健康経営のイベントに優良事例企業として登壇。どのようにして健康経営に取り組んでいるのか、その結果どのような成果が現れたかなど、優良企業として選ばれた10社のうちの1社として参加しディスカッションを行った。〝広友物産といえば健康経営〟というブランディングが定着しつつあるといえるだろう。
今後の目標は、経済産業省の「健康経営優良法人・ブライト500」の取得だ。認定を取得するため、何より従業員がより健康に働ける環境づくりのために、「これから力を入れていきたい課題がメンタルヘルスです」と梅木氏。すでに行っているメンタルヘルスチェックを継続して実施することはもちろん、不調者を出さないようなコミュニケーションの取り方を学び、社内に浸透させていきたいと梅木氏。
「メンタル不調に陥ってしまうのは、その当人だけの問題ではないと思います。従業員同士のコミュニケーションの取り方、例えば上司から部下であれば注意する際の言い方や、周囲への配慮など、そうした気遣いができていないと、その周りにも影響が出てしまって、チーム全体のモチベーションがどんどん下がっていってしまう。では、そうならないためにどうすればいいのか。そこを専門家の先生に学ぶ等しながら、会社全体に浸透させていきたいですね」(梅木氏)
従業員の健康を第一に思い、会社が主導して従業員の健康を管理する取組を積極的に行ってきた広友物産。同社が健康経営の取組をより充実させることが、従業員の健康を守るのはもちろん、その活動が一つのモデルケースとして社外に広まり、健康経営に取り組む企業を増やすという好循環を回していくのではないだろうか。
健康経営エキスパートアドバイザーより