東京商工会議所

株式会社弘久社

アンケートで健康分野の
関心事を調査
参加型で社員に直接働きかけたストレッチや栄養指導

  • 栄養・食生活
  • 運動

株式会社弘久社

本社: 東京都立川市上砂町5-1-1

代表者名: 代表取締役社長 米田 隆郎 氏

設立: 1963年

従業員数: 33名

事業内容: 印刷(オンデマンド印刷含む)、販売促進向け展示会サポート等

  製造工場が多く立地する土地柄、工業製品のカタログや付随する取扱説明書の印刷が事業の柱の一つ。小平市内の国土交通大学校内に事業所内印刷所(インプラント)を持ち、セキュリティを保ったサービス提供を行っている。

専門家派遣制度を利用した期間

2019年8月~2020年3月

支援専門家

・社会保険労務士
・保健師

専門家派遣制度を利用したきっかけ

社員が高齢になっても健康で働けるよう、健康経営の体制整備や取り組みの進め方についてアドバイスがほしい。

  従業員満足は顧客満足であるとの考えで、社員の働きやすさや健康にも気を配ってきた。健康診断は全員が受診し、ポスターなどを使い情報提供も行っている。
  ただ、長く勤める社員が順に歳を重ね、若手社員はいるものの会社の平均年齢は高くなりつつある。高齢でも健康で働けるよう、社員の意識づけやさらなるサポートの必要性を感じていた。
  そんな時期に、懇意にしている保険会社から情報提供を受け、健康経営に関する認定制度の存在を知った。同社は、これまでも情報セキュリティに関するISO27001をはじめ、様々な分野での各種認定・認証を取得しており、健康経営の分野でもチャレンジすることに。必要な体制構築に対する助言を受けるため、専門家派遣制度による健康経営エキスパートアドバイザーの派遣を依頼した。
  人事・総務部課長の南谷尚氏は、「認定の提出書類には、これまでの同社の取組を記載すればよいのだろうと想定していましたが、行動変化を示すエビデンスが求められているとわかりました。ではどのようにステップアップしていくか。ここは専門家の方にご意見をいただいたほうがよいと判断したのです」と当時を振り返る。

本社の様子
本社の様子
社内への情報提供掲示
代表取締役社長 米田 隆郎 氏(左)
人事・総務部課長 南谷 尚 氏(右)
専門家派遣による支援と取組
  • ● 社員アンケートによる課題による健康課題の抽出
  • ● 食生活改善のための「食事・栄養管理」セミナーの実施
  • ● 朝礼時のストレッチなど、社員が参加できる健康促進の場づくり

  阿藤通明氏(社会保険労務士)は、これまでの活動についてヒアリングを行った。その上で、まずは会社の姿勢を明確にするため、協会けんぽの「健康企業宣言」を提案した。
  また、同社では、すでに社内掲示による情報発信や自己啓発支援を積極的に行っていたので、セミナーなど社員に直接働きかける参加型の取組を提案した。同社における具体的な取組の検討にあたっては、社員が健康分野で何に興味を持っているか、アンケート調査を実施することにした。
  アンケートの結果、社員は、食事・栄養管理に対する関心が高かったので、久保さやか氏(保健師)を講師に「食事・栄養管理」セミナーを開催。バランスの良い食事について学び、対話形式で自分の食生活を振り返り意見交換を行った。
  「いつもの食事に、野菜や豆腐を1品加えるだけでもバランスのよい食生活になる」といった、専門家による具体的なアドバイスが散りばめられたセミナーは分かりやすいと大変好評であった。
  さらに、「社員が参加できる健康促進の場づくり」として、朝礼の際にストレッチを取り入れた。各人の運動に対する意識の向上のため、朝礼のリーダーを週ごとに代え、リーダーは皆に呼びかけながらストレッチを実施することにした。
  その後、同社が健康企業宣言後も取組を継続できていることを踏まえ、「銀の認定」を申請することとし、改めて阿藤氏から申請や必要な書類等に関する助言を行った。

朝礼におけるストレッチの実施
朝礼におけるストレッチの実施
朝礼におけるストレッチの実施
社内への情報提供
取組による効果、今後の展望
  • ● 会社からの情報提供だけでなく、社員参加型の取組も加わることで、健康経営の推進体制が深化した。
  • ● 「銀の認定」、「健康経営優良法人認定」を通じて、企業の姿勢を対外的にも発信することができた。

  専門家による「食事・栄養管理セミナー」は、社員一人ひとりが自分の食生活を見つめ、どう改善していくかを考えるきっかけになった。コンビニエンスストアで昼食を購入する際も、食事の選び方に気を付けるようになったという社員の声も聞かれており、効果を実感している。
  同社は、2020年に健康優良企業「銀の認定」、2021年に健康経営優良法人にも認定された。これまで進めてきた人事・総務部からの情報提供と、社員自らが気づいて取り組む場が相まって、体制も整いつつある。
  南谷氏は「認定や派遣制度を活用してみると、新しい気づきが得られます。費用をかけずに実施できる取組でも良いと思います。 小さなこと、できることから変えていくのが大切ですね」と笑顔で振り返った。
  なお、同社は、SDGsへの取組を明言しており、米田社長は「SDGsでも働く人の健康が3番目に記載されています」と健康経営との関連が深いことを指摘する。現在ホームページでは、印刷サービスの内容に加え、社会的な活動も積極的に発信し、企業姿勢を伝えている。コロナ禍で紙の印刷需要の減少も懸念されるが、「お客様の経営課題を一緒に考えて解決し、関係を深めていきたい」とのことである。
  ノウハウを持つ社員が健康で長く勤務できれば、その力が顧客サービスとしてますます発揮されるだろう。

健康経営エキスパートアドバイザーより

  •  会社を訪問して最初に感じたのは、情報発信の環境が整っていることでした。それであれば早い段階から、より実践的な取り組みを実施していこうと思い、専門家セミナーの開催を勧めました。講師の先生には参加型のセミナーを組み立てていただき、これにより社内の健康意識が一気に高まっていったと感じています。これからも社員参加型の取り組みを企画・実践して、社員も会社も健康になるよう健康経営を継続していただきたいです。
  • 阿藤 通明 氏(社会保険労務士)
  •  セミナーでは、バランスの良い食事とは何かを知り、改善するための目標が立案できることをゴールとしました。特に、事前のヒアリングで、独身者や自炊をしない社員でも実行できる食生活セミナーを行ってほしいとのリクエストを頂いていたので、コンビニの活用例なども提示しました。お互いにアドバイスしあうなど、参加者同士の会話も多く盛り込み、楽しくセミナーにご参加頂けたのではないかと思っています。
  • 久保 さやか 氏(保健師)
(取材:2021年11月)