東京商工会議所

株式会社アイメプロ

チャットツールの活用で健康診断の受診率を改善
ウォーキングラリーの実施で運動機会を提供

  • 健康診断
  • 運動

株式会社アイメプロ

本社: 東京都中央区日本橋小伝馬町1-5 PMO日本橋江戸通

代表者名: 代表取締役社長 慶野 晋一 氏

設立: 2011年

従業員数: 90名

事業内容: 医薬品開発業務受託

専門家派遣制度を利用した期間

2024年7月~2025年6月

支援専門家(健康経営エキスパートアドバイザー)

中小企業診断士

専門家派遣制度を利用したきっかけ

どのように健康経営に取り組めばよいのか、一からアドバイスが欲しかった。

医薬品開発業務受託機関 (Contract Research Organization)として、医薬品や医療機器等の製品の臨床開発業務をサポートするアイメプロ。設立は2011年。東京と大阪にオフィスを構え、90名の従業員が在籍している。
同社が健康経営に取り組み始めたのは2024年。2023年に代表取締役社長に就任した慶野晋一氏が、前職で健康経営を推進しており、取り組むことの重要性やメリットを熟知していたことが理由だ。
「健康経営の一番のメリットは、なんといっても従業員の健康維持や改善が見込めることです。そして、従業員が健康になることによって労働生産性が向上します。体調を崩して休む従業員がいると、その人が働けない分はもちろん、その人が抜けた分をフォローするために他の従業員の時間が奪われ、コストがかさみます。生産性が大きく損なわれるのです。この事態を未然に防ぐために、健康経営は非常に有用です。加えて、当社は医薬品の開発を通じて人々の健康に寄与する企業ですから、自社の従業員の健康をサポートする健康経営は、当然行うべき取組だと考えました」(慶野氏)
まずは健康優良企業「銀の認定」取得を目標に、取組をスタート。経営管理部人事労務グループの原夕加里氏を健康経営推進のリーダーに任命した。まず健康企業宣言を行ったものの、具体的に何をすればいいのかわからず、アドバイスを求めて専門家派遣制度に申し込んだ。
「私自身、健康経営のことは何も知らずゼロからのスタートでしたので、そもそも健康経営とは何なのか、いまから自分たちが行おうとしている取組が健康経営と言えるのかどうかなど、わからないことだらけで不安でした。そんなときにインターネット検索で専門家派遣制度のことを知り、基礎から助言をいただけたらと考え、申し込みをしました」(原氏)

代表取締役社長 慶野 晋一 氏(右) 経営管理部 人事労務グループ 原 夕加里 氏(左)
代表取締役社長 慶野 晋一 氏(右)
経営管理部 人事労務グループ 原 夕加里 氏(左)
専門家派遣による支援と取組
  • ● チャットツールや健康管理ポータルサイトを活用して、健康診断の受診勧奨を実施
  • ● 健康診断の要再検査の対象者に向けて、受診を促す案内を送付
  • ● 健康管理ポータルサイトを活用してウォーキングラリーを開催

まず取り組んだのは、健康診断の受診率の改善だ。これは慶野氏が代表就任直後から一番気になっていた課題であり、「健康経営の一丁目一番地」(慶野氏)である。同社の支援を担当した、健康経営エキスパートアドバイザーで中小企業診断士の大口憲一氏からも「2023年度の健康診断の受診率は約60%と低く、従業員の健康課題が十分に把握できない状態」と指摘があり、すぐに2024年度の受診率改善への取組が実施された。
具体的には、チャットツール「Slack」を活用。健診予約専用チャンネル(グループ)を作成し、そこに全従業員を招待。健康診断の予約をした人からグループを抜けていく、という方法をとった。
「それまでも『受診してください』という声掛けはしていましたが、人によっては、『毎年決まった時期に受診しているから』等の理由で、なかなか予約をしてくれず、気づいたときには病院の予約が埋まっていて年度内に受診できなかった、というケースがありました。Slackを活用した受診勧奨は慶野のアイデアですが、『グループの最後の一人になりたくない』という心理が働くようで、皆さん例年よりも早い段階から予約をしてくれました」(原氏)
また、2025年度からは健康管理ポータルサイト「Pep Up(ペップアップ)」のポイントシステムを活用して、年内(2025年4月〜12月)の受診を呼びかけている。Pep Upは、健康診断データや歩数、体重、睡眠、血圧などを一元管理できるサービスで、利用に応じてポイントが貯まる仕組みになっており、ポイントは電子マネーやギフト等に交換可能だ。このポイント制をうまく活用し、年内に受診予約をすればポイントを付与するという仕組みで、早期の受診を促している。
「年明け2月、3月に検診の予約をした場合、例えばインフルエンザ等病気に罹患して受けられず、結果的に年度内に受診できなくなる、といった可能性があります。そうした事態を防ぐため、2025年度からは年内に受診するよう声掛けを行っています」(慶野氏)
さらに、2024年からは健康診断の有所見者に向けて、再検査の受診を促す声掛けを実施。メールで個別に連絡し、再検査を受けた人には、指定の報告書にその旨を記入して提出してもらうようにした。
もう一つ取り組んだのが、従業員に運動機会を提供するウォーキングラリーだ。専門家派遣制度の利用開始時に、健康経営エキスパートアドバイザーの大口氏のアドバイスを受けて、従業員を対象に健康に関する独自アンケートを実施したところ、「1日の平均歩数が8,000歩以上の割合」が9.9%と低いとわかったことが実施のきっかけだ。こちらの運営にもPep Upを活用し、2025年3月に第1回、10月に第2回を開催した。1カ月間の1日の平均歩数を割り出し、6,000歩以上で1,500ポイント、8,000歩以上で2,500ポイントを付与といった具合に、段階に応じてポイントを付与する仕組みを取り入れた。
「毎日の歩数ランキングが表示されることもあって、『今日は誰が1位か』『今日こそ自分が1位を取るぞ』と、皆さん、日々楽しみながら歩数を計測していました」(原氏)

年内受診を促すチラシ
年内受診を促すチラシ
ウォーキングイベントの告知
ウォーキングイベントの告知
健康管理ポータルサイト「Pep Up(ペップアップ)」の画面の一部。開催期間中の歩数などが表示される
健康管理ポータルサイト「Pep Up(ペップアップ)」の画面の一部。開催期間中の歩数などが表示される
取組による効果、今後の展望
  • ● 健康診断の受診率100%を達成した。
  • ● 1日の平均歩数が8,000歩以上の割合が向上した。

チャットツール、健康管理ポータルサイトを活用した受診勧奨が功を奏し、2024年度の健康診断の受診率は100%を達成。2025年度についても、10月の時点で約7割の従業員が年内の受診予約を行っており順調だ。また、2024年から始めた有所見者への再検査の受診勧奨も、スムーズに従業員に受け入れられており、ほとんどの有所見者が再検査を受診しているという。
「再検査の受診を促す声掛けは、当初、対象の従業員から煙たがられるのではないかと心配していました。しかし、ある従業員から『今まで健康診断の結果がよくなくても無視していたけれど、声掛けされたことをきっかけに再受診をしたら、しっかり改善した方がよい点が見つかった。声掛けをしてもらってよかった』という声があり、改めて、自分たちの活動が従業員の健康に直結しているのだと実感するとともに、やってよかったと思いました」(原氏)
ウォーキングラリーの参加者が、第1回が35名、第2回は47名と順調に増えていることから、積極的に運動に取り組む従業員が徐々に増えている様子がうかがえる。また、2025年7月に再度独自アンケートを実施した結果、「1日の平均歩数が8,000歩以上」の割合が12%と、前年7月の9.9%から若干ではあるが上昇していた。
「ウォーキングラリーはとても好評で、従業員から『いい福利厚生だと思う』『目標歩数に達していない日は、もっと歩こうと思いました』『歩くのが嫌いだったのに好きになった』といった嬉しい声が聞かれています。ウォーキングラリーを話題に従業員同士の会話が盛り上がる姿も見られ、社内のコミュニケーションの活性化にもつながったと感じます」(原氏)
また、ウォーキングラリー開催で社内コミュニケーションが活性化した副次的な効果なのか、社内のクラブ活動が活発化。ボードゲームや皇居ランといったクラブ活動が行われるようになり、従業員の運動やコミュニケーションの場が増えている。クラブ活動は会社も推奨しており、活動に対して補助金を出すなど、サポート体制も充実している。
目標としていた健康優良企業「銀の認定」は、2025年9月に取得。現在は経済産業省の「健康経営優良法人」認定に申請中だ。今後は、7月のアンケートで従業員から希望があった睡眠に関するセミナーの実施や、食事管理に関する研修、現在導入している置き菓子サービスをサラダ等健康によい食品に変える、といった取組を検討しているという。特に健康に関連する情報を積極的に提供していきたいと慶野氏。
「食事や睡眠、メンタルヘルスなど、健康に気を遣った生活を送れるかどうかは、健康に関する知識をもっているかどうかが大きいと思います。従業員がより健康的な生活を選べるように、健康に関連するさまざまな知識を提供する機会を増やしたいですね」(慶野氏)
着実に健康経営を推進し成果をあげているその裏側には、経営者自らが発案したアイデアがキラリと光っている。アイメプロは経営者自身が積極的にリーダーシップを発揮し、健康経営の推進を図った好事例だと言えるだろう。

2025年9月に健康優良企業『銀の認定』取得
2025年9月に健康優良企業『銀の認定』取得

健康経営エキスパートアドバイザーより

  • 慶野社長のリーダーシップや従業員の取組に対する姿勢など、健康経営の取組を進める土台ができている中、「何をやったらいいのか」ということを考えるための現状把握が、当社の課題だったように思います。
    今回、定期健康診断の受診率向上やアンケート実施により、「自社の健康課題の数値化・見える化」を図ったことが効果的な取組につながったポイントではないかと思います。
    そして、アイメプロ様のご支援の中で、担当者である原様の、常に前向きに取組を進めていた姿勢が印象的でした。
    今後も継続的に取組を進めていただき、人々の健康に貢献するトップランナー企業としての役割を期待しています。
  • 大口 憲一 氏(中小企業診断士)
(取材:2025年10月)