専門家派遣制度を利用した期間
2024年6月~2024年10月
支援専門家(健康経営エキスパートアドバイザー)
特定社会保険労務士

本社: 東京都文京区小石川1-1-17 日本生命春日駅前ビル4階
代表者名: 代表取締役 小日向 良仁 氏
設立: 1997年
従業員数: 91名
事業内容: 住宅金融支援機構と金融機関を繋ぐ「総合オンラインシステム」を軸に、各種システムの企画・開発・運用保守等のITサービスを提供
専門家派遣制度を利用した期間
2024年6月~2024年10月
支援専門家(健康経営エキスパートアドバイザー)
特定社会保険労務士
自社が行っている健康経営に関する取組の弱い部分、足りない部分はどこか。それを改善するためにどのような取組を行えばよいのか、アドバイスがほしい。
住宅金融分野に特化したシステムインテグレーター(SIer)として、システム基盤の構築、業務アプリケーションの開発、システムの運用・保守等のITサービスを提供しているHS情報システムズ。従業員91名に加えて、多数のシステムエンジニアが在籍しており、オフィス内では200名を超えるメンバーが業務にあたっている。
同社が健康経営に取り組み始めたのは2023年。代表取締役の小日向良仁氏が、同じ健保組合に所属する別の企業から健康経営に取り組むメリットを聞き、自社でも取り入れたいと考えたのがきっかけだと、健康推進委員会のメンバーで経営管理部長の小野展生氏は当時を振り返る。
「健康経営に感じた一番のメリットは、従業員の健康増進です。従業員が健康であることは、従業員の幸せと業務パフォーマンスの向上、ひいては生産性の向上につながると期待しました。また、取組の実施を公表することで、リクルートの面でも良い効果があることを期待しました。経済産業省の『健康経営優良法人』認定取得を目標に、まずは健康優良企業『銀の認定』取得を目指して取り組み始めました」(小野氏)
2023年12月に健康宣言を行い、以前から社内にあった健康推進委員会が、具体的な取組の推進を担うこととなった。
同社は健康経営に取り組む以前から、従業員の健康を守るための取組を積極的に行ってきた。所属する健保組合が提供する人間ドックや婦人科検診、歯科検診、予防接種の費用補助など、従業員の病気の予防・早期発見を目的とした様々な事業の活用や、ストレスチェックの実施、月に1回、健康推進委員会のメンバーが健康に関する課題や、ストレスチェックの結果と改善策について産業医と話し合い、その内容を全従業員に共有する等を行ってきた。
「現状の取組の足りない部分はどこか、専門家の意見がほしかった」と、健康推進委員会のメンバーで経営管理部経営企画課の中村智子氏は言う。
「他社事例と比較して、当社がどのくらいのレベルにあるのか、取組の弱い部分や、足りない部分はどこにあり、今後どのように取り組んでいったらよいのか、アドバイスをいただきたく専門家派遣制度に申し込みました。また、2023年末に取組を始めてしばらく、健康経営が従業員に浸透していないのでは、と感じていました。従業員に取り組む理由や目的が見えにくく、結果がどうなるのかもわかりにくいのではと思ったのです。そのため、健康経営に取り組む理由や目的、その結果得られるメリットなどが従業員に伝わる方法をご相談できたらと考えました」(中村氏)
同社は2023年に実施したストレスチェックの結果から、「PCの長時間使用による目や肩、腰の不調が多いこと」が健康課題の一つだと把握していた。加えて、健康経営エキスパートアドバイザーで特定社会保険労務士の八巻裕香氏から、特定保健指導の実施率が20%と低いこと、また、がん検診など任意検診の具体的内容の周知や、健康に関する相談窓口の存在が従業員にわかりやすい方法で周知できていないことを指摘され、これらの改善に向けて取り組みを行った。
PCの長時間使用による目や肩、腰の不調に関しては、外部講師を招いてストレッチ講習会を実施。講習会は会議室で実施し、参加できない従業員はオンライン配信や録画した動画を視聴した。動画に加えてストレッチの動きを記載した小冊子も配布し、講習会後も従業員が繰り返し実施できるよう工夫した。
特定保健指導の実施率については、20%から50%に改善するという数値目標を据えて取り組んだ。まず行ったのが、健康診断の受診締め切りを年末の12月から9月に前倒しすることだ。併せて全従業員から受診予定日をアンケートで収集し、予定日を過ぎた従業員には個別に声かけをすることで、年内の早い段階で健康診断の受診率100%を達成。その結果、全従業員分の健康診断結果を早期に健保組合に提出することができ、特定保健指導の対象者をより早い段階で把握できるようになった。そのリストをもとに、特定保健指導対象者へ指導を受けるように声かけを徹底。特定保健指導はオンラインによる受診が可能なこと、就業時間内に会議室を利用できることなど、これまでは社内イントラネットに掲示していただけだった情報を、個人宛に直接メッセージで知らせることで、受診率の向上を目指した。
同じく個人宛に直接連絡するよう改善したのが、任意検診の内容や相談窓口の情報だ。これまでは、社内イントラネットの掲示板に掲示をしていたが、八巻氏のアドバイスもあり、従業員個人宛に一斉にメッセージを送ることができる機能を活用した。
「例えば、35歳未満で人間ドックの対象外となる従業員に向けても、胃の健診や婦人科検診など、任意検診の費用補助があることを知らせて、受診を勧めました。相談窓口に関しても、心の相談窓口だけでなく、治療と仕事の両立相談や、介護や育児と仕事の両立相談、女性の健康相談なども広く受け付けていることを明確にして、周知をするように改善しました」(中村氏)
さらに、従業員の健康への意識をより高めるために行ったのが、「ベジチェック」を用いた野菜摂取量の測定と野菜ジュースの支給だ。ベジチェックとは、手のひらをセンサーにあてるだけで野菜摂取量を測定できる機器で、2024年は3カ月間隔で2回、実施した。
「1回目の実施結果を踏まえて、『2回目の実施までに、ちょっと意識して野菜を食べよう』という従業員もいました。従業員が食生活を意識する、良い機会が提供できたのではと思います」(中村氏)
同様に、従業員の健康への意識をより高めるために行ったのが、禁煙を促すポスターの掲示だ。このポスターは、喫煙している従業員自らが作成したと、健康推進委員会のメンバーで経営管理部経営企画課長の櫻井靖大氏。
「当社の喫煙率は2割弱とそれほど高いわけではありませんが、それでも一定数の喫煙者がいます。非喫煙者が禁煙を勧めるのではなく、喫煙者自らが禁煙に向き合うという意味も込めて、喫煙者が喫煙の健康リスクを解説したポスターを作成し、掲示しました」(櫻井氏)
同社は2024年度末、従業員に対して、2024年に実施してきた健康経営の取組がどうであったかを調査する独自アンケートを実施。その結果、ストレッチ講習会(アンケート結果内では「eリカバリー講習会」)の実施に対して、従業員の8割以上が満足と回答し、また7割以上が「運動、健康への意識が変化した」と回答した。小野氏も「セミナー後もストレッチを繰り返し実施している従業員がいると聞きます」と、従業員の行動の変化を実感しているようだ。
また、実施率50%を目指していた特定保健指導は、見事数値目標をクリア。健康推進委員で、従業員への連絡等を行った経営管理部経営企画課チーフの藤川恵子氏は、「やはり、掲示板に一斉にお知らせではなく、一人ひとりに声かけをすると、応えてもらえました」と、取組の改善が実施率向上に寄与したと振り返る。
野菜摂取量の測定についても、その効果をアンケートで測定。従業員の7割以上が食生活を見直すきっかけになったと回答しており、一定の効果が得られたといえそうだ。
目標としていた「銀の認定」は2024年9月に取得。2025年3月に経済産業省「健康経営優良法人」認定を取得するとともに、2025年度から中小規模法人部門に新設された「ネクストブライト1000」(上位501~1500位法人に付加)にも認定された。
こうした取組の結果と、取組の戦略をまとめた「健康経営戦略マップ(2025)」をHPに掲載することで、外部への発信を強化。特に求職者にはよく見られているようで、実際に採用を担当する中村氏も、その効果を実感しているという。
「面接にいらした学生さんには、当社が健康経営に取り組んでいること、柔軟な働き方が可能で残業も少なく働きやすい職場であることをお伝えするようにしています。すると、学生さんの反応が非常に良く、いかに昨今の学生さんが働きやすさやワークライフバランスを重視しているかがわかります。当社が健康経営に取り組んでいることは、彼らからの評価につながっていると実感しています」(中村氏)
今後については、独自アンケートの実施を継続することで、取組の効果測定を行いながら改善策を検討・実施していきたいという。2025年度の課題は、高年齢従業員(60歳以上)の健康課題に特化した取組を検討し、実施することだ。加えて、アンケートの結果から見えてきた睡眠不足・睡眠の質の低下といった課題を解決する取組も実施していきたいという。そのために、今後は健康意識向上のプログラムを提供するスマートフォン向けのアプリを主軸に活用しつつ、アプリで足りない部分については、補完のための取組をいろいろ行っていきたいと、小野氏。
「会社としては、食事や運動、メンタルヘルスなど、従業員の健康を網羅的に支援したいと考えています。そこで健康アプリを活用していますが、例えば高年齢従業員の健康課題や、介護と仕事の両立、持病の治療と仕事の両立支援のような、健康アプリではサポートしきれない部分もあります。そこを、社内イントラを活用した情報の周知や、ストレッチセミナーのようなイベントの実施、休暇制度や補助制度といった社内の制度改革といった形で補っていけたらと考えています」(小野氏)
健康経営に取り組む以前から、従業員の健康をサポートする取組を積極的に行ってきたHS情報システムズ。健康経営、そして健康経営優良法人の認定取得を通じて、従業員へのサポートが拡充した好事例だ。健康推進委員の中村氏は2024年に健康経営アドバイザー資格を、さらに2025年2月には健康経営エキスパートアドバイザーの認定を取得したという。社内に健康経営の専門家が誕生したことも、同社の取り組みをさらに充実させるエンジンとなるはずだ。
健康経営エキスパートアドバイザーより