専門家派遣制度を利用した期間
2023年12月~2024年11月
支援専門家(健康経営エキスパートアドバイザー)
中小企業診断士

本社: 東京都港区赤坂3-1-2 BIZCORE赤坂見附2F
代表者名: 税理士 中小企業診断士 原田 伸幸 氏
設立: 1980年
従業員数: 18名
事業内容: 税務会計顧問、政治資金監査、租税に関する税務代理や税務書類の作成および税務相談業務等
本社: 東京都港区赤坂3-1-2 BIZCORE赤坂見附2F
代表者名: 社会保険労務士・公認会計士・税理士・行政書士 原田 将充 氏
設立: 1996年
従業員数: 5名
事業内容: 人事・労務手続き代行・相談業務、月次顧問契約、給与計算代行等
専門家派遣制度を利用した期間
2023年12月~2024年11月
支援専門家(健康経営エキスパートアドバイザー)
中小企業診断士
健康経営を推進するにあたり、他社がどのような取組を行っているか、具体的な事例を紹介してほしい。
税務会計部門を担う税理士法人原田税務会計事務所と、人事・労務部門を担う社会保険労務士法人オフィストラスティ。東京・赤坂で開業して45年、「原田会計グループ」としてお客様の税務会計と労務、バックオフィス業務をサポートする、公認会計士、税理士、社労士のプロ集団だ。
職員のほぼ100%が定期健康診断を受診、法律に準拠した適切な労務管理を徹底、2カ月に1度発行される保健組合発行の冊子を全職員へ配布、年に1回保健組合が実施するウォーキングイベントへの参加など、すでに健康経営に準ずる取組を行ってきた同所。健康経営に取り組むきっかけとなったのは、保険会社からの声掛けだったと、原田税務会計事務所所長代理でオフィストラスティ代表社員の原田将充氏は言う。
「それまでも健康経営の存在は知っていましたが、大企業が取り組むもので、当所のような中小企業が取り組むものではないのかな、と考えていました。ただ、保険会社の担当者から、多くの中小企業が認定を取得し経営に活かしていること、さらに東京都の専門家派遣が受けられることも聞き、専門家の先生に無料でサポートしていただけるならと、取り組むことを決めました」(原田氏)
過去に精神的な不調で退職した職員がいたことも、健康経営に取り組む理由の一つとなった。「事務所全体で、メンタルヘルスケアに対する知識を学ぶことで、休職者や退職者がでない環境づくりができればと考えました」と、原田氏。加えて、経済産業省の「健康経営優良法人」を取得することが、公共事業入札時の加点になるなど、ビジネス面でポジティブな影響があることも後押しとなった。
「しかし、いざ健康経営に取り組もうと思っても、具体的に何をどう行えばよいのかわかりませんでした。専門家の先生には、他の企業がどのような取組をしているか、また当所のような規模や業種ではどのように取り組めばいいのか、具体的に指導していただけることを期待して申し込みました」(原田氏)
2023年11月に健康宣言を行い、12月から専門家派遣がスタート。2024年の年始に行われた全職員に向けた会議で原田氏から、2025年3月に経済産業省の「健康経営優良法人」認定を取得することを目標に健康経営に取り組む旨が周知された。
併せて、健康経営を推進する体制づくりを実施。総務部の山田春花氏を健康づくり担当者に任命し、原田税務会計事務所とオフィストラスティ、それぞれ1名ずつの計3名で衛生委員会を立ち上げ、同委員会が健康経営推進の旗振り役を担った。
健康経営エキスパートアドバイザーで中小企業診断士の並木連太郎氏は、まず従業員に向けたアンケートを実施。その結果、「朝食の欠食率」、「睡眠時間が足りている割合」、「直近1週間の運動日数が週2日以上の割合」、「最近2週間の幸福感が高い割合」の値が芳しくないと指摘した。この結果の要因は、「ビジネスの性質上オフィスでのデスクワークが多いこと、また、業務と並行して税理士試験に向けた勉強を行う職員が10名程度おり、勉強や専門学校通学のために睡眠時間が削られてしまっていたためでは」と、原田氏と山田氏は当時を振り返って分析する。
これらの課題を改善するべく、並木氏のアドバイスのもと、職員のヘルスリテラシー向上を目指して健康に関する情報の提供やイベント、セミナーを実施した。
食事や運動に関する情報の提供は、社内にポスターを掲示する方法をとった。ポスターは、肩こり・腰痛予防のストレッチや、喫煙の危険性、ジュースなど飲料水に含まれる糖分の量を知らせるものなど、健康に関連するさまざまな情報を掲示。職員が日々通りかかって、目につく箇所に掲示することでヘルスリテラシーの向上を狙った。
加えて、推定野菜摂取量がわかる「ベジチェック」や、血管年齢の測定会、握力の測定会といったイベントを実施。現状の食生活で野菜の摂取量が不足していないか、血管の状態の悪化や握力の低下など体の不調や衰えが進んでいないか、自身の健康状態を振り返るきっかけを提供した。
また、並木氏が講師となり、全職員に向けた健康経営セミナーを実施。そもそも健康経営とはなにか、また取り組むことでどんな経営上のインセンティブ(公共事業入札時の加点、融資優待や奨励金など)が得られるのか、なども含めて解説した。
さらに、運動についても並木氏が講師となりストレッチセミナーを実施。デスクワークの合間に、オフィスでできる簡単なストレッチやスクワットといったトレーニングを紹介し、実際にその場で体を動かした。
メンタルヘルスケア対策として、厚生労働省が提供する働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「心の耳」の相談窓口を周知。加えて、毎月の全体会議で、衛生委員会から関連情報を発信した。発信内容は主に「心の耳」から引用。サイトにアップされている5分ほどの短い動画を会議で流し、参加者に感想を募るなどした。
「サイトのURLを共有する方法でもよかったのですが、それでは職員が見たかどうかまで把握できませんでした。『心の耳』の動画は5分ほどと短かったため、時間に余裕がある会議の日には動画を流し、視聴した職員にその場で感想を発表してもらいました」(山田氏)
専門家派遣終了時、並木氏が再度職員向けに実施したアンケートでは、「朝食の欠食率」、「直近1週間の運動日数が週2日以上の割合」、「最近2週間の幸福感が高い割合」が改善した。数値としては数パーセントの改善ではあったが、少しずつ職員の行動にも変化が見られるようになっていると山田氏。「仕事の合間にストレッチを行っている職員がいたり、中には、お昼休みに近くの神社で誰が一番早く階段を登れるか競走する職員がいるなど、楽しみながら運動している様子がうかがえます」と笑顔を見せる。
また、ベジチェックや血管年齢測定、握力測定といったイベントに対しては、職員からも「こういうイベントは楽しい」との声が上がるなど、特に好評だったという。互いの測定結果を話題にして、社内のコミュニケーションが活性化するという効果もあった。
さらに、メンタルヘルスの情報提供も一定の効果が得られたと、原田氏。健康経営に取り組み始めて以降、メンタル不調による退職者や休職者は見られず、社内環境が改善されていると実感している。
「とにかく互いに『異変に気づいたら声を掛けよう』、『限界だと思ったら助けを求めよう』という意識は、職員皆に根付いたと思います。職員一人ひとりが安心して長く働ける環境づくりができたことは、非常によかったと思います。また、職員が辞めずに継続してお客様を担当してくれれば、結果的にお客様への理解も深まり付加価値を提供しやすくなります。人が辞めないというのは、経営面からも何より大事だと痛感しています」(原田氏)
2024年9月には「銀の認定」を取得。また2025年3月には、当初目標としていた経済産業省の「健康経営優良法人」を取得した。一連の支援に対して山田氏は、「特に、職員の健康課題を把握できたことがよかった」と振り返る。
「いままでは、職員の健康課題を把握しようにも基準になるものがなく、どこに課題があるのかわからない状態でした。ですが、並木先生にアンケートの実施やその結果を分析していただくことで、当所にどんな健康課題があるのか、それに対してどのような取組を行うべきなのか、具体的な活動指針が見えたのが非常にありがたかったです。また、並木先生が『健康経営とはなにか』を職員に向けて解説してくださったことで、職員の健康経営に対する理解度が上がり、取組が推進しやすくなったことも、専門家派遣をお願いしてよかったと感じている点です」(山田氏)
原田氏は今回の取組を通じて「健康経営エキスパートアドバイザー」の資格を取得。健康経営エキスパートアドバイザーとは、東京商工会議所が認定する健康経営の専門家資格だ。この度派遣された専門家・並木氏のように、健康経営に取り組む上での課題を抽出・整理し、改善提案・計画策定等の実践的な取組支援を担う専門家である。
原田氏は今後、この資格を活かし、健康経営推進のサポートを業務の一つにできればと考えているという。
「当所のお客様の中でも、最近は人手不足もあり、採用で求職者にアピールするポイントが欲しいという企業が増えています。そこで、当所が健康経営に取り組んでいる経験談も含めて、認定取得に向けたアドバイスをサービスの一つにすることも、今後進めていけたらと考えています」(原田氏)
専門家派遣制度の活用によって、健康経営への取組をより幅広いものへと発展させることができた同所。これからも取組を継続しつつ、健康経営の啓蒙活動を進めていくつもりだ。
健康経営エキスパートアドバイザーより